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だってなんだかんだ言っても、天沢さんはこんなにも美しいのだから。
彼女の変態さがあるから、緊張しないでいられるけれど、俺は今、夢のような場所にいるのだ。
天沢さんのことを、俺はどう思えるのだろうか。迷うばかりだった。どうしよう。
①先輩 ②弟子 ③友だち ④彼女 ⑤他人
ーここは②を選んでしまうのだそうですー
弟子、やはりそれで良いのだろうか。
本当に俺はそのままで耐えられるのだろうか。
ゲームについて語り合うだけ、ゲームの情報を交換し合うだけ、ゲーム仲間でしかないのだ。ただ、それだけなのだ。
天沢さんと俺との関係は、師弟関係のようなもの。
勘違いはしちゃいけない。恋人とかでは、全然ないのだ。
「私と天沢美海は知っての通り別人のようなものですが、心は違えど体は同じです。恋人がいるなんて知れたら、さすがに、キャラクターを守りきれなくなってしまうでしょう?」
これは、俺の告白の答えなのだろうか。
そもそも彼女の方から、好きと言ってきたのではないか。友だち以上恋人未満として、好きなのだと彼女が言ったのではないか。そして俺は、その言葉に同意した。
だとしたら彼女は、なぜ俺の言葉を愛の告白と勘違いしたのだろうか。
それはつまり、彼女からの言葉にもそういった意味が籠もっていたということ。
彼女のような美人が、そんなはずない! そう思うのに、彼女もデートのようなシチュエーションであることを、感じてくれていたのだ。だから彼女にも、俺を意識している節はあるということ。
恋人とか愛の告白とか、わざとではあるまい。
天沢さんに遊ばれているのか、彼女が意識してくれているのか……。どうしよう。
①愛の告白 ②勘違い乙 ③話題を戻す
ーここでも②を選んでしまうそうですー
でもそうだとしたら、屈したくない、なんて思ったりして?
「何を勘違いなさっているのですか。俺だってもちろん、友だち以上恋人未満の女として、好きというだけです」
遊ばれているばかりなんて、気に入らないじゃないか。そうしたら、言い返すしかないだろう。
天沢さんは怒らないでくれるから、いくらでも言い返せて嬉しいんだよね。
それに友だち以上であることは認めてくれているのだから、少しくらいは失礼な言葉を吐いても良いのだろう。
暴言ではないのだし、傷付ける言葉ではないのだから、戯れだと思える程度でもあるだろうし。
だって天沢さんに言われたことを、俺は返しただけなんだからね!
「あぁ? そんなこと、わかっているに決まっているではありませんか。勘違いなんて、勘違いなんてするわけがないでしょう」
しかしこれだけ取り乱していると、本当に彼女が勘違いをして、俺に愛の告白をされたのだと思ったかのようだ。
天沢さんは、どこまでが本気でどこまでが嘘なのか、全くの見分けを付けられない。
どうしても迷ってしまう。俺は天沢さんをどう思っているのだろうか。どうしよう。
①先輩 ②弟子 ③友だち ④彼女 ⑤他人
ー今度は④を選んでも良いのでしょうかー
ここまで迷ってしまうのは、彼女だと思いたいからなのだろうか。
恋人になりたいと、どこかで俺は思ってしまっている。そういうことなのだろうか。
「でも……、高校を卒業したら、恋愛対象としても、考えてあげないこともありませんよ」
自分の気持がわからなくなってきたところなのに、天沢さんは更に惑わせるようなことを言うんだ。
高校卒業後は、恋愛対象として……。俺と天沢さんが、恋人同士?
駄目だ! 天沢さんの言葉に惑わされちゃいけない!
だけど遊びだと断定しきれないのは、俺が期待している証拠だと思った。
「それか、天沢美海という存在を破る力を持っていれば、私は君を愛してしまうでしょう。永遠を誓えるほど、そう、きっと即結婚でしょうね」
け、けっ、結婚?!
動揺してはいけない。動揺したら俺の負けだ。
そうはわかっているのだけれど、結婚だなんて言われてしまったら、動揺するに決まっているではないか。どうしよう。
①卒業を待つ ②力を手にする ③いらない
ーここで②を選べるのだそうですー
結婚か。永遠を誓う、か。
この美女を嫁に出来たなら、どれほど幸せなことだろう。
そりゃまあ、外見で選ぶつもりなどない。天沢さんレベルの美貌を持っていたとしても、性格ブスならばご免である。
しかし天沢さんはそうでない。
人間というのは強欲で、完璧を求めるくせに、完璧な存在は恐れ消し去ろうとする。そして満足することなく、求め続けるのだろう。
それは、向上心といえばよく聞こえるが、かなり醜い感情である。
どんなに恵まれようとも、上を求めてしまうのだろう。
それでも天沢さんは、外見も内面も完璧で成績なども良いのだろう。が、全てが良く出来ているわけではない。
今見てもわかるように、裏表だってあるし、人を馬鹿にすることもある。
そして現実逃避気味なところがあり、かなりの変態である。
ただし、それくらいのことは、俺にとって優にも劣にも傾くこと。
そう。俺からしてみれば、魅力とも取れることなのである。
つまり、要するに簡単に言ってしまえば、俺から見て天沢さんは理想以外の何物でもないということだ。




