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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
天沢美海 前編
46/223

 友だちでもファンでも、まして恋人なんかじゃ、……全然ない。

 リアルでは少しの接点さえもない、ゲーム師匠でしかないのだから。どうしよう。


 ①今から ②後日 ③行かない


 ーここは②を選ぶでしょうよー


 でも恋人気分を少しでも味わいたいから、デートに誘いたいと思うんだ。

 相手がなんとも思っていないことを、わかっているからこそ、さ。

「後で会えないでしょうか。もし天沢さんに暇な日がおありでしたら、少し遠くまでショッピングへ行きたいかな、なんて。どうせなら、俺もゲームを買い足したいですから」

 二人きりでショッピング。そんな言い方をすれば、完全にデートとしか考えられないだろう。

 しかし天沢さんはきっと、思いもしないんだろうな、俺とデートだなんてね。なのに。

「それじゃあ、まるでデートじゃないですか。遠足のときもそうですが、どうして君はそう、なんでもないように言うんですか? 男の人と二人きりで買い物だなんて、私は結構ドキドキしているんですよ」

 彼女はあろうことか、頬を赤らめて、微妙に視線を逸らして、本当に意識しているかのようにそう言うんだ。

 遠足のとき? そういえばあのとき、最後に何かを言おうとしていた。

 そのときもまさか、彼女はこう言おうとしていたのだろうか。

 つまりはその時点からデートではないかと、彼女はドキドキしていてくれていたと? どうしよう。


 ①恥じらう ②平然を装う ③平然


 ーここは①になるそうですー


 そう思えば思うほど、顔が赤くなっていくのを感じた。

 俺と二人きりでゲームを買いに行くということを、天沢さんがデートではないかと考えてくれた。彼女は俺のことを、男としても認識してくれているということである。

 そんなことを言われてしまえば、こっちだって更に意識してしまうに決まっている。

 天沢さんは俺のことをなんとも思っていないと、そう思ったから、そう思うことで、俺は意識しないようにしていたんだから。

 それなのに、なんてことをしてくれるんだろうか。

「今更、顔を赤くさせないで下さい。こんなところで顔を赤くさせていたら、完全に愛の告白をしているみたいじゃないですか。とりあえず、学校からは離れましょう。知り合いに会わない場所へ、早く移動しましょうか」

 顔を赤くさせている男女が、放課後校門の前で会話をしていたら、愛の告白に思えるかもしれない。

 デートのことで頭がいっぱいだったから、そのことまで頭が回らなかった。

 天沢さんほどの美女と俺とでは、勘違いする人も少ないだろう。

 しかし、見られている前で、天沢さんは俺の耳に口を近付けて、優しい囁きを残してくれた。不穏な噂が流れかねないだろう、あんなの。

 耳元で囁いた本当の理由は、変態ゲーマーであることを隠すためなんだけどね。どうしよう。


 ①更に赤くなる ②逃げ出す ③同意する


 ーここは③を選びますー


 そんなことを知らない人たちから見れば、俺と天沢さんはそういった関係に見えてしまう。

「そ、そうですね。でもどこへ行きましょうか? 知り合いに会わない場所だなんて」

 首を傾げた俺に、天沢さんは怪しい笑みを向けてくる。

「絶対に知り合いに会わないで済む、最高の場所があるでしょう? 行くまでの間に発見されると、かなり痛いかもしれませんが」

 どこだろうか。絶対に? そこまで言えるような場所。

 元から俺は知り合いと偶然出会すことは少ないけれど、絶対とは言い切れないだろう。じゃあ、どこだ?

 行くまでの間に発見されてはいけない、どんな場所なのだろうか。

「決まっていましょう。ホテルですよ」

「んぶっ」

 わざと色っぽく言うものだから、想像してしまい、吹き出してしまった。

 って、想像なんてしてないっ! なんも想像していないから!

 ただホテルというのは、ラブなあれだろう? それなら会うことはないだろうね! 入っている姿を見られたら、もう確固たる証拠となってしまうが。

 入っていくところを写真に撮られれば、よく浮気の証拠として提出されるあれになるわけだ。

 言い逃れることなんて出来なくなってしまう、確実な証拠なのだろう。

「何を仰っているのですか! そんなところ、行くわけがないでしょう」

 抑えられない動揺のままで、まずは本気っぽい天沢さんの笑みを止めさせる。

 いくら美女とはいえども、顔を両手で挟んでやれば、口を突き出す形になり色っぽさは消えるからね。

 変顔にはならず、それでもなお可愛いところはズルいと思うが。どうしよう。


 ①抱き締める ②恥じらう ③弄ぶ


 ーここは②を選びますー


 ……ちょっと待って?

 俺のこの行動だって、十分なバカップルではないか。

「あっ、あぁ、ごめんなさい。俺、調子に乗って」

 慌てて手を離すと俺は謝る。

 すると、天沢さんは子どものように唇を尖らせて、こんなことを言ったんだ。

「行くわけがないなんて、あんまりです。これでも私は本気なんですけど?」

 期待してはいけないと頭では思いながらも、高鳴る胸の鼓動は止めることが出来なかった。

 でも本当に怒っているような傷付いているような、そんな表情で、天沢さんが俺のことを見つめてきているから。

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