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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
天沢美海 前編
45/223

 待ち合わせ時間に遅れさせるため?

 そこまで彼女は俺を恨めしく思っていたのか。

 彼女にとって、俺の態度はプライドを傷付けるものだっただろうからな。どうしよう。


 ①責任を取る ②謝って行く ③逃亡する


 ーここも②を選びましょうかー


 そういった人は、最初からファンの人たちと楽しく過ごしていれば良いものを。

「では、俺はもう行きます。待ち合わせに遅れるといけませんので。お話が途中のようですが、申し訳ございません」

 怖いので彼女がどんな顔をしているのかは見ないようにして、荷物を纏めると、俺は急いで教室を出た。

 急がなくとも、待ち合わせの時間は六時半なので、あと二十分ほどある。ゆっくり歩いていても、間に合う時間の余裕だろう。

 しかし早く教室から離れたかったので、教室を出てから階段までの廊下は、走っているに近しいほどの急ぎ方であった。

 それに天沢さんは、六時半までに行けるようにする、と仰っていた。

 ならばそれよりも早く来て、待っているという可能性だって捨てきれない。

 俺を待たせていると思い、急いで切り上げてくれた天沢さんのことを、俺が待たせるわけにはいかないだろう?

 教室を離れてからは、普通にゆっくり歩いて向かったわけだけど。

 まさか天沢さんだって、六時半までの時間をずっとその場で待ち続けているとは思うまい。今に行ったのなら、もし待っていたとしても、悪く思う時間ではないはずだ。

 校門を出たところ。彼女が指定したのは、そこであった。

 ここがその場所であるならば、彼女はまだ着いていなかったらしい。どうしよう。


 ①ずっと待っていた風を装う ②そわそわと待つ ③気にしていない風を装う


 ーここは①を選ぶんだそうですよー


 本当は今まで、教室でちゃっかり予習をしていた。家でやるべきことを進めていたのだ。

 しかし俺は天沢さんへの誠意を示すため、ずっと待っていたかのような雰囲気で、そこに立っていた。

 待つこと、十分ほどだろうか。

 天沢さんがやってきてくれた。待ち合わせ場所は間違っていなかったらしい。

「私が来るまで、ここでずっと待っていてくれたんですね? なんだか、忠犬みたいです」

 俺の姿を発見すると、彼女は小走りでやってきてくれた。

 そしてそう言ったんだ。とても可憐な笑顔で、心から嬉しそうにしてくれているのが伝わる、素直な笑顔で。

 天沢さんは裏表がない感じがするな。それは俺が、表の彼女を知らないだけなんだろうけれど。どうしよう。


 ①ここで待っていろって、言われたんですもん ②ずっと待っているわけないでしょう?


 ーここは②を選びますー


 それは俺を信じてくれているのだと取るか。

 俺なんかになら、嫌われても構わないからと取る、行動なのか。

 そんなことは考えないようにして、彼女の笑顔に微笑みを返す。

「ずっと待っているわけないでしょう?」

 ここでずっと待っていた風を装うと思っていたのだが、そんな嘘を吐くことは出来なかった。

 予想外なほどに、天沢さんが素直な笑顔を浮かべてくれたから。

 少なくとも浮気症ではないと思っているけれど、忠犬だなんて言ってもらえたのは、俺だって嬉しいからさ。

 俺から天沢さんへの気持ち。天沢さんから俺への気持ち。

 それはお互いに、恋愛感情とはとても呼べないものだろう。

 しかし、そうだとしても、信じてもらえているということがただ嬉しかった。

「でも本当に待っていてくれるなんて、思わなかった……。我ながら、めちゃくちゃだって思いました。相手の都合を全く考えない、自分勝手なものだと思いました。だから、待っていてくれなくても、当然だろうって……」

「ひどいですね。俺は約束を破りません。都合が悪いならば、しっかりと断らせて頂きますもの」

 待ち合わせをしていたのに、待っていたことを天沢さんは喜んだ。

 それは今までの天沢さんが、どれほど苦しんでいたかを、痛いくらいに感じさせる。

 彼女本人と演じているキャラと、その二人が全くの別人であるということを、改めて感じさせる。

 だから俺は考える前に、そんな答えを返していた。

 少しでも俺が、彼女を癒やしてあげたかったから。キャラじゃない、封じ込められた本当の彼女を、俺だけのものにしたかったから。どうしよう。


 ①抱き締める ②歩き出す ③微笑みを向ける


 ーここは③しか選べないのだそうですー


 それでも大きな勇気は持ち合わせていないから、大胆な行動を取ることも出来ず、彼女に微笑みを向けることくらいしか出来なかった。

「今から買いに行くのは大変ですか? それでしたら、予定を確認して、いつ買いに行くか決めておきましょう」

 彼女も微笑みで返し、本題を切り出してくれた。

 あくまでも彼女にとっての俺というのは、素晴らしいゲームを教えてくれるゲームの師匠のようなものだ。

 本当の彼女を知っている俺は、リアルでの関わりを持てない存在でもあるのだ。

 それが彼女の特別なのだから、残念と思うことはないのだけれど、少し寂しいかな……なんて。

「どちらになさいますか?」

 良いんだ。彼女の特別なんだから。

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