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「後で花空さんご本人に確認してみましょう。何をもって、彼女は俺なんかと付き合っていると、松尾さんに仰られたのか、この謎はもう怪奇現象の域ですよ」
自分でも何言っていんだろうと思いながら、この話を終わらせようとそう言った。
お気付きだろうか。この俺のテクニシャンっぷりが、伝わってくれたら良いんだけど。
今は気不味いのでこの話をさり気なく終わりにし、後で松尾さんと花空さん、二人の女の子との時間を確保したのだ。
間違ったこと、していないよね? どうしよう。
①新しい話題 ②黙る ③逃げる
ーここは②になってしまうようですー
不安になってしまった。
自信はあるのだけれど、不安になってしまい、黙り込んでしまう。
話を終わらせるんだったら、事前にその後の話題も用意しておくんだったな。
「うん、そっか~。マツリちゃんと付き合ってないんだ~。じゃあ、ワタシと付き合ってと言ったら、付き合ってくれるの~?」
どんな話の飛び方をしたんだろうか?! 驚きを隠し切れないねっ!
俺は花空さんと付き合っていない。だから、松尾さんと付き合う。順接の使い方を間違ってやいませんかね?!
信じられない。なんてことを言っているんだろうか。どうしよう。
①肯定 ②否定 ③戸惑い
ー思わずここで②を選んでしまうのですー
驚きのあまり、俺は即座に答えてしまっていた。
「ごめんなさいっ!」
そういう意味ではなかった。
松尾さんの告白を、断るつもりではなかったのだ。
彼女ほどの美少女なのだから、俺への告白なんて、冗談か遊びか……少なくとも本気ではないのはわかっている。
とはいえ、この答えは、彼女のプライドを傷付けてしまったのではないだろうか。
それか反対に、俺みたいなクズだったら、傷付きすらしないのか。
まあ彼女がどう思っているにしても、ファンの方々は悪く思ったはず。どうしよう。
①訂正 ②謝る ③黙る
ーここは③になってしまいますー
どのようにしたら、ここから取り繕うことが出来るのだろうか。
何をしたとしても、それは不可能なのではないかと思う。
「あっ、わかった~。今は付き合えない、だれと付き合うつもりもないって、そういうのでしょ~?」
幸い彼女に傷付いている様子は、それどころか気にしている様子もない。
傷付けられる程度の心ではなかったのだろう。自信を持って生きているようだから、何を言われても大丈夫なのだろうね。
今の言葉はつまり、ワタシと付き合えないのなら、他のだれとも付き合うつもりがないんだね、ってことでしょ。
自分に優る人などはいないのだと、本気で思っているんだろう。
何気なく、当然のように言うもんだから、キャラでもなんでもなく本音なんだろう。
本当にさすがだよな。カリスマは違う。どうしよう。
①指摘 ②逃亡 ③肯定 ④否定
ーここは④を選んでしまうんですー
彼女に悪く思われたくはない。いじめられっ子になるのは嫌だからね。
そうなのだけれど、自信満々っぷりを見てしまった俺は、彼女の言葉を否定せずにいられなかった。
「それは、……違います。出来ることなら、女の子と交際とかもしてみたいと、思ってはおりますよ。いつでも彼女募集中です」
もちろん、俺は松尾さんを振ったのではない。
だけどどう考えても振られたようなところだったのに、彼女はそれを自覚しないんだもの。
自分が振られるはずがないという、絶対的な自信を見てしまったので、それを否定し崩したくなってしまっただけだ。
そんな性格だから、いつまでも友だちが出来なかったんだ。わかっているのに。
「じゃっ、じゃあなんで? ワタシじゃ不満だって言うの?」
本当に不思議そうに訊いてくるから。
嘘だとしても、適当に頷いておけば良い。そうすれば、一人になることなんてない。
それなのに、振られたという事実が信じられないようで、本当に……本当に……心から不思議そうにするのだから。
別に振ったわけじゃないけれど、少しくらい落ち込んでくれないと反対に傷付く。どうしよう。
①肯定 ②否定 ③理由を ④悔しいから
ーここはきちんと③を選びますよー
ただ彼女は多少、ナルシストなところが見え隠れしているけれど、決して自意識過剰なわけではない。
彼女が可愛いのは事実であり、振ったことは数多くあれど振られたことなどただの一度もなかったのだろう。
それに俺だって、彼女が本気で告白をしてくれたなら、迷うことなく受け入れるだろう。
現実であるかを疑いながらも、大歓迎するに決まっている。
そんな嬉しいこと、妄想世界にしかありえないとは思うけど。
「不満ではありません。そんなはず、ありません。だけどあなたの告白に、心はありませんでした。本気の告白ならば、お断りしようなどとは思いません。が、相手がどんなに可愛い子でも、それがたとえ冗談だとしても、遊びならば了承したくなどございません」
真面目だね、俺。ワンナイトラブ、それくらい出来ないと。セフレを作っちゃうくらいじゃ、ないとだよ。
いっそハーレムだよね! ゲームとかではよくあるじゃない。
チャラい男に、軽い男にならないと。だってリア充だもの。




