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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
一日目
4/223

 誘っているのか誘っていないのか。よくわからない言い方でそう言うと、堂本さんは教室から去っていってしまった。

 俺は一人、教室に残される。どうしよう。


 ①帰る ②追い掛ける ③まだここにいる


 ーここは①を選んでいいのだそうですー


 ここで追い掛けても、しつこいと思われてしまうだろう。

 入部するつもりもないのに、無理して着いて行ってもそれは嫌なやつになっちゃうよな。

 それだったら、普通に帰宅するとしようか。

「はぁ」

 家に帰ると、溜め息が溢れてしまっていた。

 ほとんど授業をやらずに帰ってきているのだから、時間としては普通に早い。

 まだ午前中なくらいではあるまいか。

 時計を確認すれば、十一時を指している。どうしよう。


 ①勉強 ②運動 ③読書 ④ゲーム ⑤寝る ⑥裏ワザ


 ーここは⑥を選んじゃいましょうかー


 女の子と仲良くなるために、今日は出歩いちゃおうかな。

 ほら、ゲームとかでよくあるじゃない。出会いを求める、みたいな選択肢がね。

 女の子と仲良くなるには、女の子と出会うしかない。出会えもしないんだったら、そもそも始まらないからね。

 そう思って俺は、女の子がいそうなところをぶらぶらすることにする。

 しかし、女の子ってどこにいるのかがわからない。どうしよう。


 ①商店街 ②駅 ③公園 ④ショッピングモール ⑤その他


 ーとりあえずここは①にしますー


 ただ、あまりオシャレなところへ行ってしまうと、必然的にオシャレな女の子と出会うことになる。

 そしてオシャレな女の子なんて、こんな俺にはハードルが高い。

 いろいろ考慮した結果、俺は商店街へ行くことにする。

 俺としても行きやすいし、商店街の方々はいい人ばかりだ。話し掛けやすいし。

 可愛い子がいると、自信を持って答えることは出来ない。

 もっと都会へ出た方が、可愛い子がいると思うのもわかる。

 だけどさ、商店街だって可愛い子くらいはいるんじゃないかな。

 ついでに昼食を食べるか買うか、してくることも出来るし。

 思い立ったら即行動! それがリア充の定義なのさ。

 そんな偏見を抱えて、俺は家を出た。自転車に跨がり、よく通っている、お馴染みの商店街を目指して漕ぎ始めた。

 商店街って結構ね、安くいいものを買えるんだよ。

「こんな時間にどうしたの? 学校はどうしたの? サボりかえ」

 休みの日とか平日にしても夕方とか。そんな時間にしか現れない俺だから、驚いて話し掛けてくれる人がちょくちょくいた。

 商店街の情報網はすごいらしく、今日から学校が始まることを知っていたらしいからね。

 それなのに昼間っから歩いていたら、そりゃまあどうしたんだって話だよね。

 学校が今日からだと知らないにしても、俺は制服のままきてしまったから、わかっちゃうだろうし。どうしよう。


 ①サボり ②サボってない ③無視


 ーここは②に決まっていましょうー


 このままだと、真面目な俺からサボラーな俺になってしまう。

 ちなみにサボラーはサボりの比較級ね。サボり、サボラー、サボリスト。そう変化していくから。

「サボっていませんよ。今日は学校が早帰りなんです!」

 サボり呼ばわりされては困ると、俺は毎回のごとくちゃんとそう返しておいた。

「早帰りなのか? 同じ学校に通っているはずなのに、娘がまだ帰ってきていないんだが、どうしたんだろうな」

 他はだれも、「そうなのか」くらいで流してくれたんだが、八百屋のおっちゃんだけはそう言ってきた。

 娘、女の子。娘がいるということは知っていたけれど、同じ学校に通っていたんだ。

 美人な娘だとはいつも、おっちゃんが言い続けている。果たしてどれほどの美人なのか、気になるところである。

 でもまあ、美人かどうかはわからなくても、このおっちゃんの娘なんだからいい人に決まっている。どうしよう。


 ①早帰り ②同じ学校 ③娘


 ーここは①くらいにしておいてはいかがでしょうー


 同じ学校に通っている娘さんについて、思い切り食いつきたいところだった。

 しかしおっちゃんに怪しまれてはいけないので、おっちゃんの疑問に答えることにする。

「部活動見学でもなさっているのではないですか? 俺はただ、部活に入るつもりがないので早帰りだった、ってだけですし」

 そう言うと、納得したというように、おっちゃんは頷く。

「お前、部活に入るつもりがないって? そうしたら、放課後はどうするつもりなんだい。まさか、この商店街に入り浸るつもりなんじゃあるまいな。まさかまさか、会いにくるためにわざわざ部活に入らないってのか? そんなことされても、お前の気持ちには応えられないよ」

 ついでに野菜を買っていこうかと思っていたのだが、そんなことを言われてしまうと、俺はどうしていいのかわからない。

 商店街へ入り浸ることはあるかもしれないけど、おっちゃんに会うためになんてことはありえない。帰宅部となったのは、まだ部活に入る勇気がなかっただけ。

 ただそれを言うのも面倒で、おっちゃんはスルーしながら俺は野菜を見始める。

「そいつらは、おらの彼女じゃ! お前にゃやらん!」

 野菜を見ている俺にまで、隣で声を掛けてくるのだから普通にうるさく思う。

 この時間は仕事に行っているとか学校に行っているとかだから、お客さんがあまりいなくて暇なのかな。

 そりゃまあ、いつだって混んでいるって様子はそこまでないんだけどね。何かイベントでもやらない限り、さ。

 だけど暇なのはわかるけど、野菜くらいはゆっくりと選ばせて欲しい。

 八百屋でしょ? 八百屋なんだよね?!

「ねえねえ、どうして無視するんだい。美女の声しか耳に入らないとでも言うのか? 娘の超絶美少女、赤羽琴音の帰宅を待っているわけではなかろうな」

「うるさいわっ!」

 仕方がないからツッコミを入れて、俺は野菜を見つめ続ける。

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