表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
テスト勉強
38/223

 すぐに仲良し宣言をするチャラい人よりは、山内さんのように固そうな人の方が良い。

「まだ選んでいません。山内さんは、もうご夕飯を済ませてしまったのですか?」

 友だちもいない俺に、恋人だなんてとんでもないよな。

 目指す順序を間違えていたんだ。山内さん、気付かせてくれてありがとう。どうしよう。


 ①讃える ②崇める ③頑張る


 ー普通に③で結構ですよー


 努力しても簡単に手に入るものじゃなかったからこそ、今まで俺は、友だちたるものを手にしたことがなかったのだ。

 しかしそれは、今までの俺だからだ。

 今の俺ならばいける気がするんだよね。

 努力さえすれば、本当に頑張りさえすれば、友達になって貰えるような気がする。

「えっ? いいえ、まだ、です。ああそうだ、早く帰らないといけないんでした。それじゃあっ! 今日はもう、帰ります。その、また明日、学校で会いましょう」

 会話をなんとか広げられないものかと、次の手を悩ませていたところなのだが、山内さんはわざとらしくそう言って、会計を済ませると出て行ってしまおうとする。

 これは彼からの拒絶なのだろうか。どうしよう。


 ①追い掛ける ②行かせない ③さようなら


 ーここも③になってしまうのですー


 そちらから話し掛けてくれたというのに、逃げるだなんてひどいじゃないか。

 短い間の中で、俺はそこまで嫌われるような行動を取ってしまったのだろうか。

 もしそうなのだとしたら、無理に追い掛けたとしても、更に拒絶されて俺が傷付いて終わりだろう。

 それに喧嘩した彼女とかじゃないんだから、腕を掴んで引き止めるわけにも行かないし。追い掛けても、その後に何をして良いものかわからない。

 山内さんが帰ろうとしているのに、引き止める術なんて持っていなかった。

 俺は山内さんを引き止める理由さえ、持っていないようだった。

「また明日、さようなら」

 聞こえるわけがないが、一応はそう告げ、俺は夕飯の選択に戻ることにする。

 適当に安いパンでも買っていけば良いかな。量は少ないくらいが良いや、食欲もあまりないかもしれない。

 購入して帰宅して食事して、そこまでの流れは、無意識のうちに行っていたようでかなりスムーズだった。

 しかしやるべきことが終わったと思うと、急にドッと疲れが伸し掛かってくる。どうしよう。


 ①だらける ②勉強 ③ゲーム ④眠る


 ーここは④を選んでしまいますー


 何をする気にもならないほどの疲れだったので、俺はそのまま眠ってしまった。

 どうせ敷きっ放しなのだから、せめて布団までは行けば良かったとも思うけれど、その体力も残っていなかった。


 中間テスト、ですか。思い掛けないイベントで、難関鬼山雪乃の攻略を進めたものです。

 そのことには驚きましたし、チャンスをものにしようと、僕なりの努力を重ねました。一つのイベントに与えられるのは、頑張っても精々一日や二日程度が限界だそうです。

 これから、いくつのイベントが、存在しているのかはわかりませんが、慎重に進めている場合でも、なくなってしまいそうですね。くっくっくっく。


 あんな別れ方をしてしまったのだから、一緒に勉強会などしづらいかと思った。

 それでも雪乃さんは全く変わらない様子で、学校にいる間は声も掛けてくれなかったし、学校が見えなくなるまで歩いた頃、決まって声を掛けてくる。

 内容はもちろん、勉強を教えてほしいというもの。

 気にしないでいてくれているのなら、俺としても嬉しい。

 一人で気にしてるのは少し寂しいけれど、雪乃さんが変化なく接してくれるのなら、それに甘えたいと思う。

 だから断るはずもなく、テストの前日まで雪乃さんの家で二人きりの勉強会を開いた。

 山内さんの方も、全く変わらないようだった。

 コンビニで出会った彼は幻だったのかと思うほど、第一印象と同じ冷たい雰囲気を纏って、当然話し掛けてくれるようなこともなく。

 学校ではやはり変わらずに、俺は堂本さんと過ごしているのであった。


 あれだけ一緒に勉強をしたのだから、雪乃さんの成績がどうなったのか少し気になった。

 しかし彼女の方は、テストが終了すれば俺なんて用済みなのか、話し掛けてくれることなんてない。

 だからといって、話し掛けていく勇気もない。

 断言しよう。俺には無理だ! どうしよう。


 ①話し掛ける ②待つ ③諦める


 ーここは③になってしまうようですー


 無理なんだから、諦めるしかないだろう。

 何度も雪乃さんの背中に手を伸ばそうとした結果なのだから、これも仕方がないのだろう。

「テストも終わりましたし、私との約束をお忘れでないならば、ゲームを買いに行きましょうよ。おすすめ、紹介して下さるのでしょう?」

 雪乃さんとの距離が一気に遠ざかった気がして、ガックリしていた俺の元に、これまた美しい声が掛かった。

 天沢さんである。

 彼女は校内屈指の美女として有名なので、他の生徒の前で耳打ちなんてされると、視線が集まってかなり痛かった。体が焼け焦げて、引き裂けるかと思った。

 耳打ちさえせず、普通の声量で言われてしまっても、それはそれで困るかもしれないけどさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ