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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
一日目
3/223

「お前ぇら、あたしの熱狂的なファンみたいだな。ファンサービスだ、握手してやる」

 拍手している俺たちの存在に気付いたようで、彼女はそう言って近付いてきた。

 どうやら彼女は、予想外にポジティブらしい。それか、メンタルが相当強いのか、メンタルが強いのを装っているのか。

 何にしても、握手と、彼女は手を差し出してきたのである。どうしよう。


 ①握手する ②拒絶する ③堂本さん


 ーここは①ですよねー


 まあ、そちらから握手を求めてくれているのに、それを拒む必要などどこにもないだろう。

 女の子に触れるんだったら、なんだっていいじゃないか。

 またもや下心丸出しだけれど、いろんな女の子に手を出してんじゃねぇ状態だけど、それが男の性ってものよ。

 近くで見れば、彼女も可愛いし。

「あたしは花空祭でい! 宜しくな!」

 握手している手を痛いくらい振り回し、彼女は名乗ってから開放してくれた。

 腕が痛い。女の子に触れるんだったら、なんでもいいと思っていたけれど、それを撤回したいくらいだよ。

 ただ、彼女の無垢な笑顔を見ていたら、それもいいかなって思えてくる。

 短い茶髪。本人によく似て元気いっぱいの髪の毛を、これまた元気に振り乱し、彼女は飛んで回って笑って。

 可愛い少女なんだけど、その元気さにばかり目が行ってしまう。

 小学生でも中々いないくらい、彼女は落ち着きがないのであった。

 堂本さんとはまた違う良さがある、女の子っていいよね。

 みんなちがって、みんないい。

 女の子を見ていると、つくづくそう思うんだよね。

「おぉ! 仲良くしてるな!」

 ほとんどは堂本さんと打ち合わせして、作られたファン設定のもと、俺たちは花空さんに絡んでいった。

 彼女は怒らないし、絡みやすい人でよかった。

 そんなこんなで何気に楽しんでいると、先生が教室に戻ってきて、本当に嬉しそうに笑った。

 その笑顔には、どれほど先生が生徒のことを想っているのか、そんな気持ちがこもっているような気がした。とはいえ、先生のことは嫌いだけどね。

 嫌いなんだけど、頑張っているんだなとは思う。

「そんじゃ、自己紹介と行こうか! もう二年生だし、知っていると思うがな!」

 頑張っているんだな、とは思うんだ。

 でもそういうこと言い出すから、ますます嫌いになっちゃうんだよね。

 知っていると思うんだったら、自己紹介なんてしなくていいじゃん。他人に自分を紹介するとか、地獄以外の何物でもないもん。どうしよう。


 ①自分のときだけ頑張る ②よく聞く ③メモでも取りながら


 ーここは②としますかねー


 よく聞きながらも、自分の自己紹介だって失敗するわけにはいかないよね。

 それに変に自己紹介なんてやっちゃうと、名前を覚えていなかったときに、更に聞きづらくなるじゃないか。

 これは、かなり慎重に聞いておかないと不味そうだ。

「次、アナタの番ですよ」

 前の人の自己紹介が終わったのに、次の人が中々出て来ない。何をしているんだか、とか思っていたら、隣で堂本さんが囁いてくれた。

 気付けば、もう俺の番まで来ていたらしい。

 待たせてしまってからの登場だから、注目が集まってしまって自己紹介をしづらい。

 注意不足だから自業自得とはいえ、ハードルを上げてしまうとはなんてことを。どうしよう。


 ①頑張る ②適当に ③面白く


 ーここは①を選ぶしかないでしょうー


 この状況だったら、頑張るしかあるまい。

 しかしネタなんか披露して、面白くしようと努力したところで、スベるか引かれるかして終わりに決まっている。

 今みたいなときにふざけるのは、一番良くないことだと俺は思っている。

「えっと、気付かずに遅くなってしまい、待たせてしまい申し訳ございません。◯◯と申します。これから一年間、宜しくお願い致します」

 かなりテンパった状態ではあったものの、なんとか頑張った。俺にしては上出来だと、俺を知る人ならば誰もが言うだろう。

 それはどう考えても、褒め言葉ではないんだけどね。

 自分を褒めるつもりでも褒めることが出来ず、凹みながらも自分の席へと逃げ帰る。沈黙とか、非難を浴びるよりもむしろ辛いから、本当にやめてよ。

 逃げ戻った俺を笑う堂本さんの顔に、もう一瞬だけど彼女のことが嫌いになりそうになった。

 これだから、自己紹介は嫌なんだよ。

「コノがお手本のような自己紹介を見せてあげたのに、どうしてああなってしまったのです? 謝罪から始まるなんて、信じられませんよ」

 その後の自己紹介の間も、堂本さんにからかわれ続けた。もう嫌だ。どうしよう。


 ①逃げる ②言い返す ③泣く


 ーこれはもちろん③ですよー


「うぅ、堂本さんがいじめる」

 自己紹介が終わると、授業はもう終わりとのことらしい。

 授業放棄じゃないかと思うくらい適当に、担任教師が解散と言って去っていってしまったのだ。

 他の生徒はさっさと部活動見学へ行ってしまったらしく、残された部屋の中で、俺はただ泣いていた。いや、実際に泣いてはいないけどさ、当然ね。

 あっちなみに、この学校の部活動の制度は特殊なんだ。

 毎年、部活を決めるのである。だから、一年生のときは何部で、二年生では何部で、三年生ではまた別の部活に入る。なんてことも出来るんだ。

 部活動として勝利することよりも、様々なことを経験してもらうことを目的としているんだそうな。

 それでも三年間、同じ部活動で頑張り続ける人もいるみたいだけどね。

 俺は去年、帰宅部を選んだ。

 部活社会にて、一年生はただ痛めつけられるだけ。そんな感じのイメージがあったからさ。

 偏見だってわかってはいるんだよ? わかってはいるんだけど、どうしてもね。

 今年は二年生。まだ上には三年生がいる。そう考えると、気が進まないのであった。

 来年こそ、来年こそ部活に入るから。どうしよう。


 ①運動部へ ②文化部へ ③帰宅部へ


 ーここも③を選ぶとしましょうかー


 礼儀を学ぶには、嫌でも部活に入ったほうがいいんじゃないだろうか。

 それだったら運動部がもってこいだよね。体も動かせるし、先輩への付き合い方だって学ぶことが出来るはず。

 ただ運動部ではあまりにハードルが高すぎるので、文化部に入っておくというのもある。

 いくら文化部とはいえ、先輩と関わる機会が出来れば、礼儀の勉強にはなるんじゃなかろうか。

 体を動かすのが得意ではない俺としては、そっちの方が向いているはず。

 どうしようかといろいろ考えた結果、やはり帰宅部ということにした。

 本当だから、来年こそは本当に入部してみせるから。

「アナタは帰宅部とするのですね。コノは茶道部に入っているのですが、良かったらいらっしゃいますか? でも、部活に入る気さえない方ならば、勧誘するのも少し癪です」

 そこまで言うと、堂本さんはニヤリと笑った。

「絶対運動部系の方を連れて来るくらいじゃないと、面白くありませんもの」

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