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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
テスト勉強
28/223

 うう、どうしたら良いんだろうな。

 頭を悩ませていた俺のところに、女神が舞い降りてくれた。

「ごめんなさいね。春香ったら、相当あんたのことが気に入ってしまったみたいなのよ」

 美しく微笑んだその姿は、春香ちゃんの対応に困っていた俺を助けてくれたその行動は、女神としか言いようがないだろう。どうしよう。


 ①任せる ②チャンス ③世間話


 ーここも②を選んでしまいしょうかー


 春香ちゃんを任せてしまっても良いのだろうか。

 しかし、これはこれで、チャンスとも取れるだろう。

 もしかしたら、ここで再会を果たしたのは運命なのではないか。そう考えたら、二人ともう別れてしまうのは、もったいないとすら思えた。

 忙しいわけでもないのだから、あと少しくらいは一緒にいたい。一緒にいても、良いんだろう。

 テスト勉強はどうした?

 自分の中にそう問う声がないわけでもないが、そんなのは後回しだ!

 だっていつでもできるんだからね。

「気に入ってもらえたようで、俺もとても嬉しいです。今はテスト期間中なので遊べませんが、それ以外なら、一緒に遊んだりとか……やはりいけませんかね」

 素直な子供好きを装いながら、彼女に恐る恐る問い掛けてみる。

 ただのロリコンだと思われなければいいんだけど、数少ないチャンスに努力しなくてどうするのだ。

「テ、テスト?! あっそうだ、テスト期間中、だったわね。今、どうしても時間がないの? 春香も喜ぶと思うし、家まで来てくれないかしら。勉強を教えてもらいたいのよ」

 予想外のところに食い付かれたが、なぜか家まで着いて行けることになってしまった。

 思っていたよりも警戒心は高くなかったらしい。どうしよう。


 ①行く ②行かない ③遠慮する


 ーここで①を選ばなければ男が廃りますー


 あちらから誘ってくれているのに、行かない理由がないだろう。

 そこで問題となるのは、彼女がなぜ俺を誘ってくれているのか、ということなのである。

 勉強を教えてあげるなんて、俺が言えるはずがない。

 彼女の反応からして、テスト期間中であるということすら認識していなかったようだから、それよりはまだ俺の方が意識が高いのかもしれない。

 しかし学力だったら、勝てるかどうか。

 ヤル気は出したところだけれど、ヤル気があるからといって急にできるようになったわけじゃない。

「同級生でしょ? いいじゃない。私さ、成績が相当大変なことになっているのよ。さすがに最下位ではないんだけど、って感じ」

 普段は下の中から下の上くらいの俺だから、最下位を免れたレベルということは、俺の方がまだマシってことになる。

 それだったら、一緒に勉強するしかないか。

「俺もあまり高くはありませんが、教えられるかどうかはわかりませんが、一人で勉強するよりも、きっと二人で勉強した方が捗るに違いありません。喜んで、着いて行きたいと思います」

 だよねだよね。一緒に勉強するしか、ないよね。

「えっ? おじさんがはるちゃんの家まで来てくれるの? わーい、はるちゃんが連れてってあげる」

 楽しそうに春香ちゃんはジャンプして、俺の手を取った。

 こんな幼女に恋愛感情を抱くわけではないが、女の子と手を繋いでいるのである。どうしよう。


 ①喜ぶ ②ニヤける ③振り払う ④平然を


 ーここで④を選べなくてどうしますー


 ただ春香ちゃんはこんなに楽しそうなのである。

 平然を装い、俺は春香ちゃんの手を握り返した。

「この子、人見知りが激しいのよ? こんなに懐くなんて珍しいわ、あんた何をしたのよ」

 そんなことを言いながらも、彼女は微笑ましいといった表情をしている。

 本当に春香ちゃんのことを想っているんであろう。優しいお姉ちゃん、なんだろうな。

「そうだわ。まだ自己紹介もしていないわよね。同じ学校の同級生みたいだけど、私はあんたの名前すら知らない。申し訳ないけど、教えてもらえないかしら」

 元気に話し掛けてくる春香ちゃんの対応をしていると、隣からそんな声。

 やっと名前を知るときがきた。名前を聞こうにも聞けず、二年一組だということがわかっているから、教室に忍び込もうかと思っていたところだ。

 まあ、やらないけど。

 彼女の方から聞いてきてくれたので、とても助かるし嬉しいと思っている。

 顔には出さずに心の中で喜んでいた。どうしよう。


 ①教える ②教えない ③お互い自己紹介を


 ーここは当然③でしょうー


 こんなチャンスが訪れることなんて、もう二度とないかもしれない。

 彼女のことを知らないと! 男を見せて、彼女の情報を得なければならない!

「俺は◯◯と申します。二年八組です。その、あなたは?」

 失礼は承知しているが、こちらが名乗ったのだから、名乗らせるのも許されるのだろう。

 俺がそう問い掛けると、彼女はふわりと微笑んだ。その微笑みには、周りに花が咲いたような錯覚に陥る。

 そして遂に、彼女の名前を知る許可が下りたのだ。

「私は鬼山雪乃、二年一組よ」

 名前とクラスしか教えてくれないのか。もっと頑張らないと、彼女の個人情報が手に入らないんだな。

 とは思ったけれど、俺だって名前とクラスしか言っていないのだから、同じだったみたいだ。

 彼女はこれから家を教えてくれる。そして俺も、さっき家の場所がバレてしまった。

 お互いに持っている情報は変わらない。つまり、俺が自分の情報を明かせば、彼女も情報を明かしてくれるということなのではないだろうか。

 そんなはずがないのに、俺は一人でその公式を作っていた。

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