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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
天沢美海 後編
219/223

 想像の数十倍は美味しいカレーを驚きながら完食して、まだまだ食べさせてもらいたいくらいだったけれど、それは悪いし、そうしていったらきっとカフェで吐くだろうと思って我慢する。

「美味しいでしょ?」

「はい!!」

「知ってたわ。よしっ! これで大丈夫、行くとしましょうか」

 立ち上がって雪乃さんは俺を置いて家を出ていこうとする。

 先を歩いていくつもりなようだけれど、行先はわかっているのだろうか。どうしよう。


 ①急いで抜かす ②隣に並ぶ ③後ろに着いていく


 -ここは③なのですよねー


 一体、雪乃さんはどこへ行こうとしているというのだろう。

 興味本位で雪乃さんが行きたがっているままに任せて進んでしまって、俺も知らない道へと入って行ってしまったのだけれど、これで天沢さんを待たせてしまうことにはならないだろうか。

 あとで「ここはどこ?」と振り返られても知らんがなとなってしまう。

 しかしそういうようなことはなく、雪乃さんに着いて行っているとやがて見知った道へと出たのだ。

 俺が知っている道よりも早く駅に到着した。

「どの人? もう駅で待っているのかしら? それとも電車で会いに行くの?」

 ちゃんと話を聞いてくれていたらしく、雪乃さんはそう笑顔で尋ねてくれる。

 何もおかしなことを言っていないのに雪乃さんだから戸惑ってしまう。

「そこのカフェです」

 そう指差したところで、ちょうど店に入っていく天沢さんの姿が見えた。

「あ、彼女です」

 一緒に入ってしまった方が楽だと、小走りで天沢さんのところへと駆け寄る。

「会いたいと言っている人って、その方ですか? やはり私のことを好きだなんてどっきりだったんだって、本命の彼女を連れてきたんですか? それとも彼女さんに私とのことがばれて、問い詰められて、会いたいと言われたのですか? もしかして、本命の彼女と遊びの私を会わせて、公認の二股をするようなつもりなのですか? そんな女誑しだったとは、知りませんでしたよ」

 言葉を発してもいないのに俺であるということがどうしてわかったのか、こちらを見もせずに天沢さんは告げる。

 ちゃんと雪乃さんのことを言っているようだから、全くこちらを向いていないように見えるけれど、どういうわけか天沢さんには見えているのだろう。

「ああ、天沢さんとやらね。こんにちは」

 少しも動じない雪乃さんはさすがのものである。可憐に挨拶をして店へと入っていった。

「これが本命の余裕というものなのですか。私と彼女は初対面だというのに、引き合わせた共通の知り合いでありながら一言も話さないとはどういうわけなのです?」

 この状況でどちらかの横に座ることは出来ず、雪乃さんと天沢さんが隣り合って座り、俺が天沢さんの正面という形で席に着いた。

 目の前で天沢さんは威圧的な問いを投げてくる。どうしよう。


 ①彼女じゃない ②謝る ③黙り込む


 ーまずここでは①を選びますー


 とにかく天沢さんが俺と雪乃さんの関係について勘違いしていることが問題だろう。

 この状態で、まして二人きりでもないのに天沢さんがこういう冗談を言うとは思えないから、きっと本心から天沢さんは口にしているようなことを思っている。

 もしかしたら、人気者の中心にいた天沢さんにとってはそう珍しいことでもないのかもしれない。

「雪乃さんはただの友だちです」

「え?」

 天沢さんが聞き返すならまだわかるけれど、なぜか俺に聞き返してきたのは雪乃さんの方だった。

「ただの友だちなの? ねえ、そうだったの?」

 ここで雪乃さんにそんなことを言われたら、これから俺がどれだけ何を言ったとしても天沢さんからの疑いはどうしようもないじゃないか。

 まず雪乃さんがこういう人なのだということを理解してもらわなければならないのだけれど、この段階からでどうにも出来ようがない。

「大切な友だちです」

 雪乃さんが求めている答えがわからないものだから、こういうことだろうかと答えたのだけれど、「は?」と二人から一斉に睨まれてしまった。

 外れだったようで雪乃さんもショックの表情だし、やり取りに天沢さんも苛々しているようである。

「女王様と下僕でしょ? 忘れたの?」

 言われてみれば謎の主従関係の話をしたような気もしないでもないけれど、女王様と呼んだ記憶はない。

 記憶にない関係を持ち出されてしまったわけだから、雪乃さんの問いはやはり絶対に答えられないものだったのだ。

「え、女王様? へえ、そう。それじゃあ、だからつまり私が彼女になれるということなのですか? 変に美人だから、恋人にしてはおかしいと思っていたのですよ。例え私が彼女になるようなことがあったとしても、女王様がプライベートのことまで口出しする理由はないのではありませんか? わざわざ呼び出しまでするとは、どういうつもりですか?」

「何を言っているのかわからないわ」

 雪乃さんが変なことを言うのだから、天沢さんがこう思ってしまうのは仕方がないのだろう。どうしよう。


 ①説明する ②説明を求める ③説明を聞く


 ーここは③としましょうかー


 俺の方から言わなければならないところだったのだろうけれど、雪乃さんが話したがっているようなものだから、とりあえずは彼女の説明を聞くことにした。

 雪乃さんが話せば話すだけ状況が悪くなるのはわかっているのに一旦はと任せてしまうのだ。

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