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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
ショッピング
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 夢前さんのことが苦手だという神様の言葉は、本当に本当だったらしい。

 げっそりと疲れた感じで、それからは彼女が絡んでくることはなかった。俺にも、店員さんにも。

 最初からそう普通に買い物を出来なかったのかなというところだ。

「ほんとはキミがワタシなんてお呼びじゃないって知ってるんだよ~? だから今日は解散。ゴメンね、付き合ってもらっちゃって。ワタシ、優しいキミのこと好きだよ。今は星香ちゃんと付き合ってるって言っても、諦めないから~。それにね、星香ちゃんが関係続かせらんないの、ワタシ知ってるもん。キミが星香ちゃんのこと、別に好きじゃないってこともね」

 食事までご馳走になった午後二時、唐突にそう言って神様は迎えを呼んだ。

「今日はありがとね。なんかわかんないけど、連れてっちゃえば楽しませられる変な自信って言うか、自惚れみたいなのがあったんだ。だけど今のところキミがワタシに流されないってことは、よくわかったよ。よく、わかったよ……」

 有無を言わさず、俺の反論も許さず、一人で決め付けて神様は俺の家の前までしっかり送り届けてくれた。どうしよう。


 ①引き留める ②否定する ③俯く


 -ここは②となりますー


 いつも戸惑うくらい自己中心的で自信家なのに、こういうところでいきなりネガティブを見せられちゃうと、……困る。

 雪乃さんとはまた違うからな、神様の場合は。

「ありがとね。ゴメン、無理強いして、嫌だったでしょ~。そういうとこがワタシの悪いとこだよね。わかってる。嘘吐きで、自分勝手で、だから嫌われるんだって、わかってるの~。もうしないから」

 俯いて彼女はそう言って、そのまま車に戻ってしまおうとするものだから、俺は手を伸ばすようなことは出来なかった。

「そんなことないと思う! 神様は、とっても優しくて、ちょっと自分勝手なところは否定出来ないけど悪意はないのはわかるし他人想いだから、だからだれも神様のことを嫌ってなんかいない。少なくとも、俺はそう思ってるから!」

 絶対に彼女に聞こえるように、精一杯に叫ぶことが俺の限界だった。

 振り向いてくれることもなく神様は去っていく。その後ろ姿はなんだか、かっこよかった。


 家を出た本来の目的を果たさなければならない。

 すっかり神様と「デートのようなもの」で楽しんでしまったけれど、俺は今学校一の美女だと言っても過言ではない天沢さんと同居中なのだ。

 そのために、少ないけれど服と食糧、そうして大量のゲームを持っていかなければならない。

 どれを持っていこうとかではなくて、全部、持って行っておこうか。

 彼女の家にテレビゲームの本体はどれほどあっただろうか。せっかくソフトを持って行ったのに、本体がないのでは困るだろう。

 携帯型のゲームは本体ごと持って行くことが出来るから、とりあえず全部を持って行くのは確定だな。

 そんなこんなで、すごい荷物の量だ。どうしよう。


 ①気合 ②応援 ③減量


 -ここは①ですよー


 学校用で使っているバッグには勉強道具類とゲーム本体を入れて、ほとんど使わないリュックサックに他のものを片っ端から詰め込む。

 物が少ない俺としては、これだけで引っ越しが出来そうな勢いだ。

 結構な重さだったが、持って行けない重さではない。

「ただいま」

 同居というのを意識させまいと、極めて自然なものとして自分に納得させようと、わざとそう言って俺は天沢さんの部屋に帰った。

 彼女はまだ帰って来ていなかった。

 朝から晩まで家を空けると言っていたのだから、わかっていたことではあるのだけれど、天沢さんの人気や外面を見せ付けられたような気分だった。

 だからこそ、俺にこんな汚い部屋を見せてくれるのは嬉しい。八方美人で完璧な姿でいないでいてくれるのは嬉しい。

 生意気で気持ちの悪いことに、俺はそんなことを考えてしまっていた。

 でもだからといって、許容範囲内ではないような気もするけどね。

 理想を押し付けて女子とは綺麗で甘い香りの部屋で暮らしているんだと言うつもりはないけれど、男女とかそういう問題ではなくて、整理整頓が出来ないにも限度があるレベルだから。

 一人暮らしで忙しいから、そう片付けられるレベルではないから。

 最初はあんなに驚いたのに、ちょっとずつ慣れている気がするのは怖いものだけどね。

「ただいまです。そんなぎっしり荷物を持って来てくれていたのですね」

 僅かなスペースに荷物を置いて、伸びをしていた俺に声が掛かった。思ったよりも早く帰って来たらしい。

「おかえりなさい。と、こう言っていると愈々同居ですね」

 冗談交じりにそう返して振り向いた俺に、天沢さんは美しい顔を少し歪ませた。

「正真正銘、同居です。いつ我慢が出来なくなって、過ちを犯してしまって、結局そういう意味でも同居が必要な状態になってしまって、最終的に家庭を持つことになるのか。楽しみにしていますよ」

「そういう意味でも同居が必要な状態って、どういう意味ですか」

 軽く受け流して、俺は荷物を片付けに入ろうとする。どうしよう。


 ①おーい、手伝ってくれんか ②ちょっと退かして


 -ここも①を選んじゃいましょうー


 辛うじてバッグを立てたまま置くのが限界で、リュックサックを下ろすスペースすらない。

「おーい、手伝ってくれんか」

「はいはい、わかりましたよ。ちょっと待ってくださいな。って、ベテラン夫婦かい!」

「いやベテランってなんですか」

 しっかりツッコミを入れてくれるけれど、ツッコミにツッコミどころを残すところはさすがの天沢さんだ。

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