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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
一日目
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 しかしこの様子じゃ、堂本さんはチラと表紙を見せてくれるとか、そういうことはないんだろう。

 どうすれば良いのか頭を悩ませながら、とりあえず俺は、立ったままだったので席に座る。

 万が一に違っていたことを考えたら、俺の方から言うわけにはいかないよな。どうしよう。


 ①話し掛ける ②彼女の本を見る ③気にせずゲームを


 ー初めと同じ選択肢ですね。しかしここでは③を選びますー


 諦めるしかなかったんだ。

 とか、そういうわけじゃないんだな実は。話が合いそうな女の子を見つけたのに、そう簡単に諦められるはずがない。

 俺は彼女を作ると、決意したんだから。

 どうしてそこまで彼女を作ることに拘るか、その理由については、自分でも今は考えたくないところだけどね。

 何にしても、俺は変わってみせる。

 恐れるものなど何もない、強い男になるんだ。いい意味でも悪い意味でも、だろうけど。

 そんなことを思いながらも、俺は持ってきたゲームをやり始めた。

 堂本さんが読んでいる本を考えれば、俺が持っているゲームを知っていても、なんらおかしくはないだろう。

 もしかしたら、俺と趣味が完全一致しているのかもしれない。

 この流れでゲームを始めたら、彼女だって何をプレイしているのか気になるはず。

 そして、さりげなくこのゲームを見せるんだ。

「のぞちゃん、ですよね」

 全てが俺の計画通りに進んだ。かっこ良く言えばそうなるけど、そこまで考えてなかったんだよね。

 俺が思っていた以上に上手く言っているみたいだ。これは、運命の女神様でも俺に微笑んでくれたのかな。

 そんなことを思いながらも、あえてゆっくりと堂本さんの方に顔を向ける。

「その……、そういうゲームとか、本とか、お好きなんですか?」

 躊躇いがちにではあるが、目を輝かせて彼女は問い掛けてくる。どうしよう。


 ①好き ②嫌い ③聞き返す


 ー少し意地悪ですがここも③ですー


 最初は少しチャラいくらいじゃないと、仲良くなんかなれないよね。

 自分をそう説得してみせて、明らかに自分が嫌うような行動をとった。

「そういうって、どういうゲームとか本のことですか? よくわからない、かな」

 本当はもちろんわかっているよ、ごめんね堂本さん。

 二次元情報しかない俺だから、どうしたら恋愛の達人にまで昇格することが出来るのかはわからないんだ。

 でも二次元では、ちょっと意地悪なキャラとか普通に人気だし。

 ドSだけど憧れの人。鬱陶しくて意地悪だけど、いざというときに守ってくれる幼馴染。

 いろいろある。優しいだけが全てじゃないのだ。

 相手を気遣うことだけが、全てじゃないのだ。

 そりゃまあ、優しいのは最低条件でもあるけどね。

 ってか、本当に二次元情報は三次元でも通用するのか、不安でしかたがないよ。

「そういうはそういうですよ。だから、つまり、……えっちなやつ、です」

 女の子は怒るとかして抵抗してくれるとよかったんだけど、どうやら、堂本さんはそのタイプではないらしい。

 アニメとかのメインヒロインによくある、ツンデレ暴力女と堂本さんとじゃ、あまりに違い過ぎているからかな。

 あそこまでの巨乳じゃないし。

 しかしまあ、エッチな、ってはっきり言われちゃうとは思わなかったな。どうしよう。


 ①好き ②嫌い ③聞き返す


 ー二度目ではもう①にしましょうー


 あまりしつこくからかうと、嫌われてしまうだろう。

「はい、好きです。エッチなのに限りませんが、ゲームも本も基本的に大好きです。二次元が俺の居場所だと、そう思っています」

 今度は正直に愛を伝えようとしたのだけれど、やり過ぎてしまったかもしれない。

 ここまで言うつもりはなかったんだ……。

 見た感じ、堂本さんに引いている気配はない。それどころか、目を輝かせている。

「それでは、アナタとコノは同じ場所に生きているのかもしれませんね」

 そんなことを言って、優しく美しい微笑みを俺に向けてまでくれたんだから。

 これってもしかして、このまま付き合えちゃうんじゃね? だって、同じ場所に生きているんだもんね。

 調子に乗ってそう思ってしまうけれど、顔だけはニヤけないよう努力する。

「ヨッシャ! アタシが担任の撫川海だゼ!」

 いい感じに堂本さんと会話を出来ていたというのに、そのタイミングで、先生が教室へ入ってきた。

 ドアを開けて入ってきたと思えば、いきなり叫び出すんだ。

 正直な感想を言っていいかな。五月蝿い。そのまま声量的な意味で、五月蝿いとしか思えない先生である。

 でも先生なんて、どうせ最初から話が合わない生き物だ。

 予想外なまでの五月蝿さだったけれど、先生は期待するだけ無駄だもん。

「一時間目! 仲良くしろ! ってことでじゃあな!」

 こうして授業放棄して去っていってくれたことは、俺としてはありがたいことだけどね。

 ただここまでの雑な先生が担任で、これから大丈夫なのだろうか。甚だ心配だが、担任を嘆いたところで変更なんて夢はない。

 一つ一つ細かく指摘してくる丁寧さなら、別にいらないよね。

「皆~!! 前向け!! あたしの歌を聞け~!!」

 先生の声で痛いくらいだった耳が、やっと治り始めてきていた頃、前に出て叫ぶ女子がいた。また耳が痛くなるから、やめてほしい。

 単純にやめてほしい。どうしよう。


 ①お願いしに行く ②放っておく ③いっそ乗る


 ー驚くべきことにここで③を選ぶんだそうですよー


 放っておいても彼女の一人舞台は、きっと終わらないだろう。一人で、だれが聞いているわけでもないとしても、彼女は前で話し続けるだろう。

 それならば、いっそのことライブ感覚で楽しんでしまうのもいいかもしれない。

 だって今年の俺は、明るくなるんだから。

「どうします? 応援でもしましょうか」

「そうですね。一人で頑張っている様子ですし、彼女の遊びに付き合ってあげるのも、楽しそうです」

 堂本さんの同意も得られたので、二人で一緒に彼女のファンとして活動を始めることにする。今日限定、だと思うけどね。

 頑張っている彼女を愚弄する行為かも知れないが、前で騒ぐくらいなんだから、それくらいは別にいいんだろうきっと。

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