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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
ショッピング
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 もう、神様の何も言わないで笑っているの、どうにかならないのかな。

 何か言ったら言ったで困るんだけど、この人は。

「で? 早くしてよ」

 無言でニコニコしていた神様の口から出てきたのは、そんなものだった。

「服屋なのになんで服を用意してくれないのさ。二人分、早く持って来て」

 早くとは、どういうわけなのか最初俺だってわからなかった。店員さんとしてはひどい災難だろうな。

 俺みたいな奴だったら見るからにキモいから声なんて掛けないのだろうけれど、嫌に神様は心優しい美少女と言った見た目なものだからね。

 だれにでも優しくしてくれる美少女をそのまま描いたような美少女だというのに、こうも態度が悪いとはだれが思うことだろう。

 逆に、っていうのはあるかもしれないが。どうしよう。


 ①謝る ②謝らせる ③頭を下げる


 -ここで③を選ぶのが限界ですよー


 隣の神様に少しどころじゃなく怯えながら、それでも店員さんには申しわけない気持ちがあるものだから、軽く頭だけ下げた。

 ちゃんと謝りなさいって、叱るほど偉そうなことは俺には出来ない。

 店員さん、すいません。

「ねえ、見て見て! これ、可愛くな~い? とりあえず着せ替え人形やるから、どれが最高か決めるんだよ~? でもさすがに早着替えは出来ないから、そこはごめんってことで」

 神様も神様で、本当に楽しそうに笑ってくれるものだから、どうしようもなくなるんじゃないか……。

 この笑顔は作り笑顔じゃなくて、俺と一緒に洋服を買いに来て、友人とのショッピングをちゃんと楽しんでくれているということなんだよね。そこは、信じて良いんだよね。

 あんまりに彼女が可愛く笑うものだから、不安になるくらいだった。

「おやおやおや! 学校中の男子の視線を独り占め、モテモテアイドルちゃんが、こんなとこでデートしてるじゃないか。ウチったら、こんな衝撃スクープシーン目撃しちゃってどうしよう」

 叫びながら駆け寄ってきたのは夢前さんだ。

「あ、星香ちゃん! も~、デートとか止めてよ~。そんなわけないじゃん! モテモテアイドルちゃんって、そういう言い方はしないでって前にも言ったはずだけど~? 星香ちゃんそういうとこイジワルなんだから~」

 恐怖で俺は固まったというのに、さすが神様は余裕だ。

 そもそもリア充オーラにやられて、夢前さんとは業務連絡だって会話するのが苦しいと思う。俺一人でその任務に遣わされたら、絶対に途中で断念することだろうね。

 神様にはリア充に面食らうような理由はないもんな。

 それにしたって、ふりふりワンピースを試着しているのを俺に見せている、だなんてシーンを見られて少しも動揺しないでいられるものかな。

 俺のこと意識していないにもほどがある。

 冗談で交際を申し出て揶揄うようなことなんだから、そもそも神様のような美少女なんだから、当たり前だしわかっていたことだし期待なんてしていないけど……。

 そもそも、二人きりで買い物に出てくれたこと自体、脈なしの証拠じゃないか。どうしよう。


 ①弁明 ②隠れる ③任せる


 -ここも③といきましょうかー


 余計なことを言わないで、夢前さんへの対応は神様に任せるとしよう。

 放っておくと何を言い出すかわかったものじゃないけど、クラスメートが相手ならいつも教室で見ている正統派アイドルらしい姿でいてくれることだろう。

「デートじゃないって、どうやって誤魔化してくれるのさ。さすがに無理があるんじゃないの?」

 近寄ってくる夢前さんに、あくまでも神様は笑顔だ。

「恋愛とかはまだ早いし、ほんとにただ、一緒にお買い物をするってだけなの。星香ちゃんとは違ってそういうの疎いってわかってるくせに、揶揄わないでよ~」

 思わず好きになりそうなほどの可愛さだった。

「でもなんで二人で、そのお買い物をしているっての? ふっふん、ウチの目を誤魔化せると思っちゃ駄目だよ。いつも男子と話してるときと明らかに空気感が違うなって思って、だからこうして突撃してるんだからね」

「マツリちゃんのお誕生日パーティをするの。その準備だから二人きりなの~。いつもだったらマツリちゃんとも一緒、それだったら星香ちゃんも変な勘違いしなくて済むでしょ~? あっこのこと、マツリちゃんには内緒だからね~」

「二人でデートしてたって話のこと? まさかまさか、クリスさんやっちゃいましたね?」

「何をさ! 変なことばっかり言わないでよ。星香ちゃんだって恋人じゃない男の人とお買い物することがないわけじゃないでしょ~。むしろそっちこそ、一人でお買い物なんてどうしたの?」

 二人の論争はどちらが優勢とも俺には判断付かないでいたのだが、ここではっきりと神様の勝利が確定されたらしい。

 胸を抑えて夢前さんは膝から崩れ落ちた。

「痛いところを突いてくれるね。彼氏が途切れるなんて高二としてはありえないよね、本気で萎えるんだけど。最後に彼氏を振ってから早や一週間、新しい彼氏募集中だよもう!」

 夢前さんの感覚がちょっと掴めなくて困る。どうしよう。


 ①ツッコむ ②立候補 ③引き下がる


 -ここでなんと②を選びますー


 この二人の言い合いは、これはこれで明らかに店側に迷惑を掛けている。

 もうこの人たちを止めるにはこれしかないと、なぜか思ってしまった。

「それじゃあ、俺なんてどうですか?」

 手を挙げれば、時間が止まったかのように二人の冷たい視線が注いだ。

「なんてさすがに冗談です。でもこれで、俺たちが恋人じゃないってこともわかってもらえました?」

 沈黙に耐えかねて、震える声で明るいふりをした。

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