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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
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 そんなときでさえ可愛いのだからズルい。どうしよう。


 ①笑う ②微笑む ③苦笑い


 -ここが②になるのですよー


 微笑みを見せれば、腑に落ちない様子で神様は俺を見ている。

「既に可愛いから困っちゃうだろうけど、他の服も試してみようか。今この状況で最高って思っちゃっても、この最高を越える最高がまだこの先にあるかもしれないからね~」

 中々な発言だったが、神様ならば違和感さえないのだから恐ろしい。

「いつだって可愛くあられちゃって、その瞬間瞬間が可愛く見えちゃうものだから、どうしたものか困っちゃうでしょ~。選べないってなっちゃうよね~?」

「ああうん、そうだね……」

「だ~か~ら~、もうちょっとくらいは気持ちを込めてくれたって良いじゃん!」

 俺たちがこんなやり取りをしている中で、店員さんからとんでもない言葉があった。

「その、パーティ服は彼氏さんもでしょうか?」

 神様に何を言われるか緊張があるのか、店員さんの言葉は冷静さを欠いているように思えた。

 それでも売りつけるために必死らしい。

 いや、こんな言い方をしてしまっては悪いことだ。この人たちは本当に好きで、好きでやっているのだとしたら、俺や神様みたいな厄介な客は深堀しない気もするが。

 この問いは仕返しでもしているつもりなのか?

「彼氏、彼氏だって。ステキね~。キミはワタシの彼氏に見えるみたいだよ~。このワタシの彼氏が、こんな冴えない男だと思ったんだ。そういうことか。へ~」

 これは店員さんに文句を言っているようだけれど、明らかにまっすぐ俺への悪口を言っているとしか思えない。

 彼女の彼氏になんてなるはずのない冴えない男であることは事実だろうけれど、こんな言い方はしなくても良いじゃないか。

 あんまりであるように思う。どうしよう。


 ①文句 ②謝罪 ③宥める


 -ここは③となりますー


 文句を言いたかった。この態度の悪さは、店員さんに謝らなければいけないだろう。

 その中でまず言うべきなのは、なぜか不機嫌な神様を宥めるような言葉だろうと俺は思った。

 所詮、ぼっち生活を続けてきた俺の考えだから、到底正解とは遠いものなのだろう。

 だけど自分が思う最善のことはしたかった。

「男女で買い物をしていたら、恋人だって勘違いされても仕方ないよ。神様みたいな美少女と俺みたいなそれこそ冴えない男とじゃ釣り合いは取れていないだろうけど、釣り合わないカップルはいくらだっているからね」

 俺の言葉を聞いて、暫くは無言で鋭い視線を向けて来ていた。

 神様、それはどういう感情なの?

「それにしたって、釣り合わないにも限度が」

「そんなものに限度はないの。どれだけ釣り合わないカップルだっているから」

 これ以上言わせないとばかりに、ばっちり神様の言葉を否定する。

「なるほどね~、じゃあ、ワタシと付き合ってみる~?」

 明らかに冗談ながら、彼女はこんなことを言う。

「ぶっ」

 思わず動揺してしまった。

 悪ふざけにしたって、本当にこの人は性質の悪いものばかりだな。どうしよう。


 ①注意する ②苛々する ③我慢する


 -ここでは①なのでしょうー


 今日はいつもの彼女よりも更に悪ふざけが過ぎるように思えた。

 友人だというのだから、俺の考える友人と彼女の考える友人と本当の友人が合っているかはともかくとして、くだらない冗談を言うこと自体は笑って流せるものなのかもしれない。

 そうなのだけれど、距離感を確立させてからでないと中々に難しいところがあるだろう。

 最短距離で友人は目指したけれど、まだ友人となりきれているはずがないのだ。

 それでは俺が動揺しているということは、こう言いながら彼女自身も心の中では動揺を持っているということなのではないだろうか。

 彼女が俺と同じだと思うのはやはり都合の良い理想か。

「あんまり、冗談でそういうことは言うものじゃないよ。悪戯に言ったつもりのことを、本気になられて勘違いされて、大変なことになっても知らないからね?」

「キミなら勘違いしても良いけどね」

 言っている傍から、彼女はこんなことを言う。

 そういう冗談は止めてくれと言っているのに、どうして彼女はわからないのだろうな。

 その冗談が冗談として受け止められ続けると思っているのなら、俺を信頼しすぎだ。

 モテない男ってのは、時にありえない夢を見るものだよ?

「冗談は程々にしてくださいな。冗談じゃなくなるから」

 彼女が冗談を言っているように、俺もまた冗談を言っていると思っているようで、愉快そうに彼女はただ笑っている。

 そればかりじゃないのだということを、どうしたら彼女に認識して貰えることだか。

「失礼致しました。それで、その……」

 俺のことをなんと呼んで良いか迷ったようで、また間違えたらこれはもう一大事だといったように、店員さんはそこから口を閉じてしまった。

 何か言ってあげたいけど、俺は俺で神様の正解をいまいちわかっていないしな。どうしよう。


 ①聞く ②答える ③目を逸らす


 -ここは②としましょうかー


 俺のことなのだし、俺なりの答えを返しても大丈夫だよな。

「えっと、呼びづらいなら呼ばなければ良いと思う。ジェスチャーとか、ニュアンスとか文脈とかでわかるだろうし……」

 最終的に俺が導き出した結論は、それだった。

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