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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
七月のクリスマス
185/223

 嫌悪感を隠そうともしないどころか、神様は舌打ちまでしてくる。

「妙な間ね。仲良くはないんだ~? さすがに相手にされないって感じ? んまあ、天沢先輩と仲良くて、赤羽先輩とも仲が良いなんて、そんなことはないよね~」

 声は明るいようにも聞こえるけれど、彼女が作っているというわけではなくて、本当に神様はこういう声なのだろうともうわかった。

 話し方もわざとじゃなくてこうなのだ。

「そんなにこっち見ないでよ。何? なんか文句あんの~?」

 にこりと笑って首を傾げると、サンタ帽から輝く金髪が束で垂れる。

 どうしたって見惚れてしまいそうなほどに、ファンタスティックなほどに美しい彼女の姿に、息が詰まってしまった。

 異世界からやってきたとしか思えない。現実離れしている。

 その愛らしさに俺が動揺としていることを、自信家な彼女は気付かないのだろう。

 天沢さんといえ、神様といえ、どうしてこう自信家に見えるのに自分の魅力を理解していないのだろうか。

 あ、雪乃さんはまたわけが違うんだけどね。どうしよう。


 ①言葉で伝える ②行動で伝える ③隠す


 -ここで③を選ぶのですー


 本人が気付いていないのなら、バレるまで隠しておこう。

 この段階で俺が何を言ったところで信じてもらえるとは思えないし、きっと彼女から”意外と軽い男”という称号をもらうことになるだけだろう。

 本心だとしても、本心だと思ってはくれまい。

「どうしてそんな恰好をしているの?」

 まず一番手前にあった質問から尋ねてみる。

 俺の疑問はかなり当然のものだと思うのだけれど、何がどうしたというのか、なぜだかひどく驚いた顔をされた。

 サンタコスプレって、クリスマスでもリアルでする人はいないからな?

 ……少なくとも俺の知り合いの中では。

 リア充がどうかは知らないけどさ。そうだよ、どうせ俺は最近奇跡的なモテ期が来ているだけで、それだって運良く美少女と友だちになれたってだけだし、それは俺が……。

 ネガティブな感情に呑み込まれるところだった。危ない危ない。

「どうしてって、可愛いからだよ? それにクリスチャンだからね~」

 想定外なまでの薄っぺらい理由だった。

「可愛くな~い? この服、ファンの子が誕生日にくれたんだ~。お気に入りなんだよね~」

 平気でファンと言えるのもすごいし、誕生日に服をプレゼントするのもすごいし、サンタ服を普段着のように着れるのもすごいし、なんというか、一周回って普通な気がしてくるレベルだ。

 彼女はいったい何を言っているのだろうか。どうしよう。


 ①諦める ②もう少し ③納得する


 -ここは②を選びますー


 もう少し話を聞いてみれば、わかりそうになることもあるかもしれない。

 希望がある気はしなかったが諦めるには謎が深すぎる。

「サンタ服は、せめてクリスマスに着るものじゃないのかな。ましてクリスマスパーティでもなければ、中々着るものでもないと思うのだけれど」

「そっか。そんじゃ、今日クリスマスパーティしようよ」

「はぁ?」

 あまりに意味がわからないものだから、聞き返さないではいられなかった。

 クリスマスにやるからクリスマスパーティなんじゃないのか。

 それをこんな夏の日に、彼女はどうしようというのだろう。

 そもそも何しに俺の家までわざわざ来たというのだろう。

「やっぱり流されないんだね~。こういうわけわかんないこと言っても、ファンたちだったら、はぁ? なんて言わないんだけどな。クリスマスじゃないのに、こんな夏場にクリスマスパーティって馬鹿じゃないの? そう思うような奴いないもん」

 何から言ったら良いのかわからないで戸惑っていたところで、神様からそう言ってくれた。

 彼女は本気で言っているわけではなかったらしい。どうしよう。


 ①安心する ②放心する ③乗る


 -ここは①でしょうかー


 意味不明なことを真面目な顔をして言うものだから、すっかり不安になってしまっていた。

 もしや雪乃さんに染められたのではないかと思ったくらいだ。

「でも安心した。何を言い出したんだって思ったし、何を言ったものかと思ったくらいだからね」

 俺の言葉を聞いて神様は笑った。

「はははっ、ごめんごめん。常識ってのを思い出したくなってね~。だってワタシが言ったら、なん

でも正解になっちゃうんだよ? 違うなって思ってる人がいたってね。本気で間違えてたって、きっと教えてくんないの。天然だなって、可愛いなって、思うだけ。やんなっちゃうよ。可愛いとは思われたいし、その為に必要だからやるけど、ワタシだって同性の友だちもほしいから、ぶりっ子って思われなくて済むなら思われたくないし」

 愚痴を言ってくれるのは俺のことを友だちだと思ってくれているということなのかな。

 常識を思い出したくなった、か。

「でも可愛いなとは思ってるよ? この服。寒くって、冬に着るなんて馬鹿みたいだし、サンタ服だけどサンタ服じゃないんだよ~」

 サンタ服だけどサンタ服じゃないって、どういうことだと思っていると、彼女はカーディガンを羽織った。

 そして帽子を外すと、サンタクロースの雰囲気が消えて、確かにお洒落なものだった。

 こうされるとやはり可愛らしいと思わされてしまう。どうしよう。


 ①見惚れる ②目を逸らす ③喋る


 -ここも①になってしまうのですー


 サンタ服姿も可愛いには決まっていたけれど、こっちの方が見惚れる愛らしさだった。

「だって、外で一人でこの格好は、いくらなんでも恥ずかしいよ~。日焼けだってしたくないし」

 そんなことを言いながら、カーディガンを脱いで帽子を被って、神様はサンタ姿になぜだか戻った。

 恥ずかしいなら尚更どうしてサンタ服なのか。

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