表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
天沢美海 中編
182/223

 天沢さん自身も言っているように、この家の壁は薄く、頑丈だとは言えそうにもない。音だって丸聞こえなのだろう。

 トイレから部屋がそうなのだから、隣の家との境界もそうなのではないだろうか。

 だとしたら、こんなに叫んだら迷惑レベルなのではないのだろうか。

「あまり出掛ける先がないのでしたら、同じ部屋にいるともバレないでしょう。この部屋に天沢美海がいるとも思われないことが幸いして、こんなに美女なのに見張りもストーカーも家を突き止められていないのです。その、ですから、それに同じ部屋に住んでるってほざいたところで、だれも信じはしないでしょうし」

 戻ってきた天沢さんは提案をしてくれる。

 冗談ではなくて、彼女の動揺が本気で言っているのだと伝えてくれる。どうしよう。


 ①賛成 ②反対 ③不安


 -ここで迷わず①を選んでしまうのですー


 そんな顔で、そんなことを言われて、反対なんて出来ないだろ。

「……それもそうですね。天沢さんが良いなら、大賛成です」

 答えてしまって、多少の後悔はあった。

 もう引き返せないということになってしまう。

「明日は、友人たちと食事をしたり買い物をしたりする予定です。朝から晩まで家を空けることになると思いますから、その間に家に帰って、ゲームを全て持ってくると良いでしょう。それと、お金は持ってきておくと良いと思います。それとそれと、食材を献上してくれるように。家にある限り、全部!」

「了解です」

 同居というよりも合宿だと思わないでいられない。お泊り会という可愛らしい感じじゃない。

 ときめきもどきどきもあったものじゃないが、元々一緒にゲームをやるためにそうしようと言っているのだから、合宿のようなものかもしれない。

 それにどんなシチュエーションを用意したところで、どうして天沢さんが俺にときめくことがあるものか。

 ただのゲーム仲間、ゲームについて話せる人。

 その関係ほど素晴らしいものはない、今はそう思う。どうしよう。

「今日はとりあえずゲームをプレイするにあたって、そしてゲームを購入するにあたっての極意を伝授しては貰えないでしょうか。おねしやす!」

 武道系の熱血漢感を出して叫んでくれた。どうしよう。


 ①了承する ②快諾する ③却下する


 -ここは②としましょうかー


 俺が天沢さんと一緒にいられる理由なんて、それしかないんだ。

 それに俺は天沢さんに靡かずファンだなんだと騒がなかったから、彼女はこうして俺を信じてくれているんだ。

 下心を払い去って、ゲームに向き直る。

 真剣に彼女はゲームを愛しているんだ。

 リアルが残念だからゲームを逃げの場所として用いていた俺とは違う。

 それでも俺をゲームの師匠のように思ってくれているのだ。

「自己流ですが、俺の意見で良ければ、いくらでもお話ししますよ」

 彼女はにっこりと笑った。

 興味部深そうに聞いて、相槌まで打ってくれるものだから、好い気になってしまっていたのだろう。

 受信も着信も時間も気付かず、話し込んでしまっていた。

 これではすっかり天沢さんの虜である。

「さすがにお腹空きましたね」

 疲れてそう言うと、立ち上がって天沢さんはどこかに消えた。

 暫くするとパンが飛んできた。

「食え。お礼だ泥棒!」

 お礼なら泥棒じゃないだろうよ、天沢さん。

 しかしパンというのは中々にありがたいアイテムだ。どうしよう。


 ①食べる ②返す ③買う


 -ここは③を選ぼうとしますー


 経済的に天沢さんだって苦しいのだろうから、俺に奢ってくれる余裕はないだろう。

 彼女のことを金持ちだと思っている人に、それらしい姿を見せなければならないし、それなりのものは持っていなければならない。

 そういったことにお金は使いたいに決まっている。

 あとはゲームを買うのにもか。

 少なくとも、俺のために払うパンはない。

「代金は明日払いますね。生憎、今は持っていませんので」

「いりませんよ。それくらい差し上げます。金持ちではありませんけれど、心まで貧乏になってしまいたくはありませんので、そこのところお願いします。この強がりをありがたく受け取ってください」

 俺にはそれが出来ないから、彼女はすごい人だと思う。

 努力して努力して努力して、努力を重ねて人望と人気を築き上げているのだから。

 けれど言ってしまえばそれは見栄なのだ。

 見栄を張るために、彼女の現実は窮屈しているのだ。

 見方によっては賢いと呼べるものではないのかもしれない。

「わかりましたか?」

 惨めな俺の方が、身の程を弁えている点では……。美しさをひけらかさないで、自分の好きなようにしている雪乃さんの方が、主観的な充実さとしては……。

 それでも尋ねてくれる彼女の笑顔は輝きに満ちていた。どうしよう。


 ①わかりました ②わかりませんよ


 -ここは①を選ぶというものですー


 彼女がそうありたい姿が、理想がそこにはあるのだ。

 その邪魔をするほどの意志を俺は持っていなかった。

「わかりました」

 要望通り、強がりをありがたく受け取るのが精一杯だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ