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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
天沢美海 中編
176/223

 もしかしたら、神様と同じものを天沢さんからも求められているのかもしれない。

 これくらいの美女になると、誘惑されない男の方が珍しいくらいだろうし、だから俺のことを面白がっているのかも。

 なんか、誘惑させてみようかな、なんて。

 天沢さんとは同じ趣味を持っていることもあってのことだろうけれど。

「へぇ、それは申しわけないことをしましたね。切腹したら許してくださいますか?」

 彼女と会える理由だって、俺と彼女を繋いでくれているものだって、それは趣味のゲームそのものだけなのだろう。

 悪戯っぽく笑う彼女が、いつだって彼女は変わらずに美しいはずなのに、今日は妙に際立って見えるものだから困る。どうしよう。


 ①美しい ②魅力的だ ③変わらない


 -ここも③を選びますー


 そうだ。変わらない。別にいつもと変わらない天沢さんだ。

 久しぶりに見たから、その美しさを思い出せないでいて、新鮮な美しさからそう感じてしまっているだけなのだろう。

 いつも天沢さんは美しくて、それを俺は以前から知っていたはずだ。

「って、こんな安い命一つで許されるはずがありませんよね。ですがこの身を捧げるくらいのことしか出来ないのです」

 暴走を仕掛け始めている。

 あ、間違えなく彼女はちっとも変わらない。特別今日は誘惑しているとかじゃなくて、いつもの悪ふざけが過剰な天沢さんだ。

 だったら俺もそうじゃなくちゃ。

「本当にその身を捧げると天沢さんが言うのでしたら、どんなことだって叶うのではありませんか? 一人一人の親愛の情などは得られないでしょうが、信仰なら得られるかもしれませんよ?」

「それは確かに素敵ですね。ですが残念、詐欺師としての私の能力は思った以上に高いものでして、この身を捧げるなどしなくても、その程度ならば十分に得られています」

 本人が言い切るところはすごいものだが、事実には違いないし、天沢さんらしいことだとも思う。

 作られた彼女と本当の彼女とを、あまりに別物として認識し過ぎている。どうしよう。


 ①責める ②笑う ③茶化す


 -ここは②でありましょうー


 これだけ美人だけれども、それは彼女の努力あってのものでもあるのだろうと思わされる。

 もちろん、元だって美しかったのだろうに決まっているけれども、それにも勝るほどの努力が天沢さんからは見えるのだ。

 本人は隠しているようだから、努力を見られるのが嫌なのだろう。

 立派なところだと思うし、俺には出来ないから、憧れるところでもある。

 だが天沢さんはきっと元よりの天才でありながら、重ねて努力までをすることが出来る秀才としての素質までを持った人だったのだ。

 全くの、別の世界の人間だとも思える、そんな人物なのだ。

「何をじろじろと見ているんですか。ドン引きしているのはわかりますけど、無言ほど辛いものはありませんから、本気で止めてください」

 感心していたのだというのに、ただ笑っている俺がよっぽど奇妙だったと見える。

 中々見られない、照れたようであり軽蔑しているようでもある天沢さんの表情に、更なる笑みが零れた。

 天沢さんから見たら気持ち悪かろうが、微笑ましいという意識の中で零れた笑みだった。

「お怒りになる気持ちもわかるつもりではありますが、ガチトーンはさすがにショックですってば」

 冷静で一歩上を行く天沢さんが、俺の肩を揺らして泣きそうな声を出す。

 まさかここまで黙られるのに弱いだとは知らなかった。

 意図的な無視にはそう感じているようでもなかったのだけれど、こちらとしては無視をしているわけではないのだから、当然無視とも感じられなくて、それが彼女は不安というわけだろう。

 一緒にするのは申しわけなくもあるが、本質として彼女は俺と同じだから、存在を認識されないと途端に不安になってしまうのだろう。

 その気持ち、わかる……! どうしよう。


 ①返事 ②口説く ③無視


 -ここは①を選びますー


 あえて無視をしていたい気持ちもあったが、どうせ無視なら天沢さんは喜ぶだけだと思い留まる。

 彼女が喜ぶのが嫌なわけではなくて、そういう彼女だから望むままになるのが嫌なのだ。

「ショックですか。そうですか。詐欺師が、よくそんなことを言えましたね」

 共感が出来てしまうだけに、これ以上はぼーっともしていられなかった。

 俺としては天沢さんのことを考えていたくらいなのだけれど、それが本人に伝わっていなければ、それはどうしようもなく不安な時間でしかないのだ。

 いくらなんでも苦しいってわかるから、意地悪気分にもなれなかった。

 性格の悪さを存分に発揮して鬱憤晴らしに八つ当たりし放題、俺がそこまで言われていたとしても、さすがにここまでひどいことは出来ないと言うほど、許されないことなんじゃないかと思えた。

 語り掛けられなければ、自分が存在していないような不安になるのだ。

 ポジティブで努力家でネガティブな人だから。

「それもそうですね。でも、そんな詐欺師を相手にしてさえも、そうしてそういうのは、卑怯さでも強さでも狡賢さでも勝っているという意味じゃあないですか?」

 俺の所業を訴えるように、彼女は即答した。どうしよう。


 ①即答 ②答えない ③迷う


 -ここは③になってしまいますー


 やり返して、俺もすぐに答えるべきなのかとも思ったが、そう思った時点でもう既に迷ってしまっていた。

 迷いを隠せていないだろうから、天沢さんは勝ち誇った笑顔だ。


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