表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 苛立ち編
169/223

 結局俺も松尾クリスという偶像を好いていただけなのか?

 だから今はそれを必死で守ろうとしてしまっているのではないかと、冷静な俺が指摘した。

 前面に出るのは、こう感情的になっては俺の感情というものだが、それでも尚訴え掛けるのだから冷静でいようとする俺の気持ち、または見栄は随分と大きいようである。

 そうだとは思っていても、そんな自己分析が隣にいても、今の俺は神様を見ていたかった。

 そうでないと、雪乃さんは冷たくあってしまうような気がした。

 コノちゃんを傷付けてしまわないためにも、必要なことだと思った。

 理由がどれも神様のことではないことが、俺にとっては何より痛ましいことに感じられた。どうしよう。


 ①叱る ②恨む ③睨む


 -ここは①に決まっていましょうー


 人のためを想うふりをして、偽善者にもなれないくせに……。

 卑怯で最低な俺はだれにも叱られないことを良いことに封じ込め、隠しきれないくせに隠して、わざと自分から目を逸らして俺は神様を見ているようだった。

 バレなければ、それで良いのだと。

 神様のような方を、巻き込んでしまっても良いのだと。

「ワタシにばっかり意地悪言って、嫌われる理由もあるし嫌われてることも知ってるけど、だけどそんなあからさまに、どうしてそんなことばっかり言うの! いつもワタシは敵で、ワタシのことを庇ってくれることはないなんて、そんなのってあんまり!」

「えぇぇええええええん!! うぇええん! ああーーーーっ!!」

 突然、神様は叫んだものだから、俺だって確かに驚いた。

 どうやら葉月くんは驚いて起きてしまったようで、耳を塞がなくとも耳に塞がれてしまいそうな、想定していたよりも数十倍は大きな声で泣き出した。

 初めて見るというくらい、雪乃さんは困った顔をしていた。

 どんな状況でも謎の自信に満ちているがために、素っ頓狂な推理でも閃いてどうにかしてくれるというのに、珍しく動揺というものが見えた。

 場は混乱の一途を辿るばかりである。どうしよう。


 ①コノちゃん ②神様 ③葉月くん


 -ここでは②を選択するようにしましょうー


 今この状況で、まず最初に宥めるべき人はだれか。それは、神様であるに違いなかった。

 本当に最初にまずはというのは、当然に葉月くんであるべきなのだろうが、そこに関しては雪乃さんに任せてしまって大丈夫だろうから、それよりも俺は神様だった。

 それに、こうなってしまった責任は俺にあると言える。

「違う、違うから、違いますから。全然ちっともそういうわけじゃなくて、意地悪なんて言っていないし、嫌っているようなわけもないし」

 ジッと葉月くんの方を、神様は怖い顔で見ていた。

「とりあえず落ち着こう。神様が心を乱すと、だれもが心を乱してしまって、それで葉月くんはこれほど泣き出してしまったのに違いない。だからとりあえず落ち着こう」

 そんな簡単な言葉で、落ち着けるなら乱してなどいないというものだろう。

 この中で自然な笑顔を見事に浮かべてみせる神様は、常人のそれとはまるで違っているようだった。

「そっか。なら良いんだ。どうしてワタシにだけ意地悪するのって思ってたけど、勝手にワタシがそう思い込んでいただけだって、そうやって言うんでしょ? そういうつもりならワタシだってそういくから良いよ」

 ずっとそうだとは思ったけれど、増々神様は不機嫌になっているようであった。

 今日、そんなにも、彼女が腹を立てるような理由があっただろうか?

 どうしたって、それを考えずにはいられない。どうしよう。


 ①考える ②責める ③考えない


 -ここは③を選びますー


 そうしたらそうするほどに、俺だって気分が良くなるものじゃない。

 だったら考えないように心掛けていて、そのうち、本当に考えないでいられるようになるだろう。

 神様は決して悪くない、それだけが事実だ。

「顔が可愛いから、今までは憧れてたんですけど、さっきから話を聞いていれば、いくらなんでも……滅茶苦茶にも限度があるんじゃないですか!」

 意外なことにも、ここで声を上げたのはコノちゃんだった。

 助けのために呼ばれたのだということを思い出し、頑張ろうとしてくれているのかもしれない。俺のためだなんてことは自意識過剰かもしれないけれど、そう思えるからそれだけで嬉しかった。

 立ち上がったコノちゃんは、やはり俺なんかとは似ても似つかないほどに強かった。

 彼女と俺が似ているだなんて調子に乗ったこと、もう二度とは言えなそうだった。

 近いのだと考えることも愚かしく思えた。

 それくらい、コノちゃんの背中は俺にとって大きく見え、かっこ良くて、彼女の強さを示していた。

 それが彼女の優しさからなるものだと俺は知っていた。

「なんか、二人同じようね~。言ってることも態度も表情も、あぁ、その仕草もね」

 何がそうもまで同じであるのかわからなくて、俺が首を傾げていれば、隣でコノちゃんも首を傾げているようであった。

 しかしこれは同じと言うほどのことでもなく、理解に厳しかったものだから、ただ首を傾げたのだというだけで変わった仕草でもない。

 俺とコノちゃんは似ているなどとは言えないなと、そこで同じようなどと言われたものだから、俺の心には戸惑いが広がっていた。

 視線を交わらせては逸らし、またも逸らす。

 俺とコノちゃんの目が合うことはなかった。どうしよう。


 ①見つめる ②目を逸らす ③俯く


 -ここでは①を選ぶ必要がありますー


 あえてコノちゃんの視線を探した。

 目を合わせて、見つめ合えば、自然と力が出ることを感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ