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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 苛立ち編
167/223

 コノちゃんは、俺が思っていたよりも、早く到着してくれた。

 時間稼ぎだけを目的に持っていれば、それは簡単だったというわけだ。

 まさかいるとは思わなかったようで、神様を視界に捉えたコノちゃんは大きく動揺していた。どうしよう。


 ①説明する ②察してもらう ③整理する


 ーここは①を選びますー


 何も言わずに来てくれたコノちゃんだけれど、来てくれたからには、そろそろ説明くらいしなければ不味かろう。

 彼女ならば察してくれそうなところだが、もし誤解したまま話が進んじゃったとして、最終的にどんな目に遭うかわかったものじゃない。

 常識の通じる相手とは言えない雪乃さんや、独特の解釈をする神様、その全く反対の方向で独特の解釈をするコノちゃんがここにはいるのだ。

 思いも寄らない事態にだって発展しかねない。

 それなら、最も話のわかる人、話せばわかってくれる人、コノちゃんにしっかり説明をしておいた方が良いだろう。

 神様は興味なさそうにしているし、勝手に部屋に戻るようなことだって、いくらなんでもさすがにしないだろう。

 たぶん、雪乃さんはもう葉月くんを寝かしつけたことだろうから、いつ戻っても大丈夫だろう。

 それなのに呼びに来ないということは、わざわざ呼びに来るようなことはしないということだろう。

「今日は俺と松尾さんと雪乃さん、それと彼女の弟の葉月くんの四人で遊ぶ予定だったの」

「なんとなくわかった。一人じゃ手に負えないから、コノを呼んだと」

「話が早くて助かる。ありがとう」

 説明をしようとしたところで、一瞬でコノちゃんには伝わってくれた。

 これほどありがたいことがあるだろうか。神様と雪乃さんと話していたから、コノちゃんのありがたさが増して感じられる。

 説明すべきことに気が付いたら、その都度なんとなく言えば良いだろう。

 少しの言葉でコノちゃんは汲み取ってくれる。どうしよう。


 ①二人で ②三人で ③皆で


 -ここで③を選んでいきますー


 だったら部屋に戻っても大丈夫だよね。

 よくわからないけれど、コノちゃんが来てくれた瞬間に、変な自信が湧いてきたような気がする。

 俺らしくもなく、強がってしまいたくでもなったのかな?

「ん、あんたが呼んだって言ってたのはその子? 初めまして、見覚えあるかも、初めましてではなさそうね。どこかで会ったかしら」

 部屋に入ったコノちゃんを見て、ふっと雪乃さんは視線を落とす。

 葉月くんの寝顔をなぜだか睨むほどに見つめて、やがて諦めたように首を傾げた。

「どこかで会ったことは覚えているのよ。ごめんなさい、いつの、だれだったかしら?」

 名前を言ってきょとんとはしていたけれど、本人が現れても、どこかで会った程度にしか思い出してくれないとは思わなかった。

 さすがにピンと来てほしかったな。

 全く陰口とかがなく、正直なのは彼女の良いところだけれど、これに限っては本人に言うべきことじゃなかったね。

 その区別もないところが、彼女の馬鹿さなのだろう。どうしよう。


 ①教える ②考えさせる ③待つ


 -ここは①を選びましょうー


 何度かコノちゃんとは会っているはずだけれど、中でも雪乃さんの記憶の中に残っていそうなことを、彼女に教えようとした。

 が、そっとコノちゃんはそれを制した。

 俺を止めたその手の理由がわからないでいると、彼女は何も気にしていない風で笑った。

「他人に言われるくらいなら自分で言うよ。憐れまれたり、気を遣われたりするのが、コノは何より嫌なんだ」

 どうやら、雪乃さんに忘れられていたということに、傷付くようなことはないらしかった。

 傷付いてほしくはないけれど、彼女が傷付きもしないのは、反対に痛々しさと卑屈さを訴えるようだった。

 しかし彼女の言うことは彼女にとっての紛いなき本心。

 それであるから、出しゃばるべきでないというのもわかった。

 言葉が本心だとして、本心の彼女が否定と肯定のどちらを望んでいるのか、俺には察せられなかった。

 彼女ほど、察する力の強い俺ではなかった。どうしよう。


 ①教える ②教えない ③任せる


 -ここは③に決まっていましょうー


 彼女がそう言ったのだからと、彼女のせいにするつもりはない。

 けれど俺が俺的に、彼女がそう判断したんだろうと思ったから、任せることにした。

「わかったわかった。思い出したわ。私とあんたって、たくさん会っていたのね。だからどっかで会った気がしてたんだ。次はちゃんと覚えているようにするから、今日は私に印象を残していって頂戴。私はあんたのことが好きみたいだからね」

 一通り話を聞いてから、雪乃さんはコノちゃんに抱き着いた。

 葉月くんを抱えたままであるから、突進のようになってしまっていたが、戸惑いながらも嬉しそうにコノちゃんは受け止めていた。

 ひらりと髪を揺らしてコノちゃんから離れると、雪乃さんは複雑な表情をしていた。

 寂しそうな笑顔は、イメージ通りの彼女の姿であって、俺の知っている彼女とは全く違っていた。

「優しくて面白くて優しい子だから、何度だって遊びに来てもらいたいわ。下僕の一派にしては、この下僕とは違って、可愛い子だって思うの。ねぇ、好きなのよ」

 驚くほどに、雪乃さんはコノちゃんに愛の告白をしたものだから、予想外でならなかった。

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