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でもそれって、コノちゃんは神様が苦手だってことではないだろうか……?
テンションが高い人だとか、リア充だとかを、俺以上に嫌っているイメージがあるコノちゃんを呼んだことが、本当に正しい選択だったか?
最善の人選のようにも、最悪の人選のようにも思える。どうしよう。
①後悔 ②大丈夫 ③頑張る
-ここで③を選んでおく必要がありますー
どっちにしても、コノちゃんがいてくれたら随分と助かることだろうから、俺も頼るつもりじゃなくて頑張ろう。
彼女に迷惑掛けてるってわかるけど、コノちゃんと一緒にいるだけで、頑張れる俺はまだ俺の中に残っている。
初めて恋人が出来たから、そんな俺を引き摺りたいだけなのかもしれないけれど、初恋が続いているような綺麗な見方も出来ることであった。
気持ち悪がられることだろうし、友だちとして呼んだことに嘘はない。
隣に友だちがいてくれたら、一人で説得を試みるよりも、出来る気がするのだって確かだ。
コノちゃんが来てくれたら改めて頑張るとして、コノちゃんが来るまでを今は頑張らないと!
「もしかして、変なことを言ってたけど、結局は二人きりになりたかったとか~? ちっとも靡かなかったから、試してみたんだけど、ワタシのこと可愛いって言ってくれるし、照れ屋なだけだとか~? それにしては、積極的に美女に近寄りすぎだけどね~」
本気なのか冗談なのか、神様の言葉は判断しかねた。
雪乃さんであれば間違えなく本気であろうし、コノちゃんであれば間違えなく冗談だ。祭ちゃんだったら、半々、今ならもう冗談で笑えるだろうか。
しかし神様は何を求めているのか、どうしてほしいのか、どういうつもりなのか、判断をするのが難しい。
何を求めての言葉なのだろう。
揺れる瞳は、物憂げな表情は、何を示しているのだろう。どうしよう。
①笑う ②肯定 ③否定
-ここも③を選びますー
笑うことは、シンプルに失礼な行為であろうことはわかった。
冗談での言葉だったとしても、コノちゃんや天沢さんのように、笑いを求めてネタを言うような人ではない。
俺の知る限り、神様はそういう人であるはずだ。
「違う。神様を可愛いと思うのは本当だけど、今はそういうことじゃない。その発言が悪ふざけなのだとしたら性質が悪いよ。メッセージはまるで暗号だったし、伝える手段だって遊びのようだったけど、それは雪乃さんが馬鹿だっただけ。彼女は至って本気だ。だからそれを茶化すのは違うんじゃないかな」
責めるような口調になってしまって、慌てて謝ろうかと思ったけれど、神様は気にしていないようだった。
興味なさそうに「ふーん」とだけ。
もう嘘を吐きたくない。彼女の言葉とは、こんな意味だったのか。
愛らしさを演じる必要のない時間が出来たことで、神様が楽になれているのなら、俺が彼女を少しでも楽にしてあげられているのなら、それはいくらだって努力しよう。
ファンのつもりはないが、それなりに尽くすつもりくらいはあった。
彼女が頼ってくれたのが、強ち嘘でもないと知ったときから、そのつもりだった。
だけれど、友だちごっこを終えることで望んだのは、友だちという関係だと思ってしまっていた。
それは勘違いだったのだろうか。
彼女はただ、疲れていただけだったのだろうか。
望んでいるのなら俺はそれをサポートしたいから、増して戸惑った。どうしよう。
①本人に聞く ②探りを入れる ③考える
-ここは②を選んでおきましょうー
勝手に履き違えて勘違いして、神様に俺の理想を押し付けようとしてしまっているのだとしたら、すぐに軌道修正を図らなければならない。
それとなく聞き出せたら良い。
はっきりと聞いてしまうのは、気が利かないにも限度があった。
雪乃さんのことは気遣うのにと、そう思われても仕方あるまい。
前の見えない俺でも、さすがにその程度には抑えられた。
「馬鹿、ね~。お勉強が苦手なのはもうわかるんだけど、どうにもそうは思えないんだよね~」
言っていることには共感が出来た。
彼女の姿を見ていると、どうにも馬鹿だとは思えないのは、俺だってそうだった。
言葉を聞いてしまうと、文字を見てしまうと、その度に再認識させられることでもあるのだけれど。
それよりも、今は雪乃さんではなく神様のことだ。
どうしたら良いか。それとなく話題を変えて、さりげなく探りを入れる。目的の項目を聞き出す。
今年は会話も多いものだから調子に乗っているかもしれないけれど、所詮は俺なのだ。
コミュ力なんて欠片ほどもないし、会話テクニックなんて更にない。
俺に出来る範疇を、食み出るなんてレベルじゃないほどに超えている。
「さすがにもう少しくらいは気にしても良いと思うくらい、雪乃さんは他人からの見え方を気にせず、自分らしく自分が好きなように堂々としている。俺みたいな凡人にはとても出来ない強さからなるものだと思う。だから彼女は勉強の出来ないところとは別で、とても馬鹿だとは思わせないんじゃないかな」
表情を見ていると、俺の言葉が彼女に理解されていないのだとよくわかる。どうしよう。
①説明する ②進める ③続ける
-ここで③を入れてしまうのですねー
理解されていないならいないで、畳み掛けるようにそれらしく適当な文字列を吐き出せば、雰囲気だけで神様は誤魔化されてくれるのではないだろうか。
今の会話に神様が興味を持っていないことが、俺にとって吉と働くかもしれない。
彼女を置き去りにした後で、本題を不意に出して、騙すようにすり替えるようにしたら、足りていない俺の会話スキルも、話題と一緒に誤魔化せるのではないだろうか。




