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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 苛立ち編
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 今から雪乃さんの家に来れたら来て、理由も告げないメッセージ。

 それをコノちゃんに送ったらば、一瞬で了解の返事があった。

 突然で意味だってわからないだろうに、何も聞かずにコノちゃんは来てくれるというのだ。どうしよう。


 ①感謝 ②時間稼ぎ ③許可


 -裏ワザとしてここで全てを選びますー


 何か秘密があったでもないのだから、別に聞いてくれても良かったといえば良かったのだけれど、理由を必要とせず訪れてくれることに、信頼感という特別な何かを感じた。

 コノちゃんの意図がわからない以上は、それにこそ理由があって、俺の考えはただの自惚れだとも考えられる中でも、嬉しいのは間違えなかった。

 嬉しいから、嬉しいから、コノちゃんに対する感謝が止まらなかった。

 勝手にもう呼んでしまったから、事後報告になってしまうが、雪乃さんにはきちんと言っておかなければいけないだろう。

 不満そうな神様は、最早俺では、一人の手には負えない。

「雪乃さん、コノちゃんを呼んだんですけど、大丈夫ですか?」

「え? だれだか知らないけど、あんたが呼んだのなら確実ね。問題ないわ」

 視線は葉月くんから外さず、少しだって俺のことなど見ないまま、雪乃さんは許可してくれたのだった。

 これも信頼感というものなのだから、嬉しいと言えば嬉しいような気がしたが、こうなると雪乃さんに関しては怪しんで欲しいくらいだ。

 コノちゃんのことがだれだかわからないとは、呼び方の問題なのだろうか。どうしよう。


 ①忘れた ②呼び方 ③名前


 -ここは②を選びましょうー


 一緒に遊びに来たあの時点で、俺の記憶ではコノちゃんのことをコノちゃんと呼んでいたのだけれど、俺の記憶違いかもしれないし、そんなことを気にする雪乃さんではないという可能性もある。

 一応、名前だけ伝えておこう。

「堂本木葉です。覚えはありませんか?」

「ないわ。生憎、人を覚えるのは、完璧な私の唯一苦手なことなの」

 迷う間などなく、即答であった。

 唯一だとは思えないし、人だけに限らず雪乃さんの記憶力の弱さは知っているけれど、まさかここまでだとは思わなかった。

 名前を言ってわからないのでは、今の俺にどうしようもない。

 実際にコノちゃんが来たときには、わかってくれるよう祈るしかない。

 問題ないの言葉をもらえたし、大丈夫だよね。

 部屋の外で放置してる神様のことが気になるし、俺も雪乃さんの邪魔になってはいけないと、すぐに部屋を出た。

 どんな言葉を俺が放ったところで、きっと届かない。

 わかってはもらえないことだろう。

 だからそれに関してはコノちゃんが来てくれてから頑張るとして、それまでの間は、時間稼ぎを全力でしなければならないだろう。

 神様が空気の読めない行動をしてしまわないように。

 そして、神様をこれ以上は不機嫌にしてしまわないように。

「なんなの~? あ、これ、そこそこ本気で」

 呼ばれたから来てみれば、いきなりこんな状況では、コノちゃんは困惑することだろうな。

 話のわかる彼女ではあるが、コノちゃんにどう説明するかも考えておくべきだろう。どうしよう。


 ①無理 ②頑張る ③出来る


 -ここは確実に③を選んでくださいー


 かなり高難易度に思えたが、同時に”俺は出来る”と思えた。

 強引に思い込んだと言った方が正しいことであろうが、どうにかそう思い込ませることに成功したのだ。

 人に無理難題を押し付けておいて、自分だけ無理だなんて言えるものか。

 俺だって出来るだけのことはしよう。

「俺も雪乃さんも神様のファンではありません。友だちとしてここに立っています」

 いつもの俺ならば、友だちだなんてとても言えなかっただろう。

 住む世界が違うような人であるから、俺なんかが、友だちだと思われているとは思えないからだ。こちらばかりが一方的に友だちのつもりで、説教のようなことを言うだとかあまりに痛々しい。

 けれどこの場合であれば、友だちであることを否定されたとして、そちらの方がかえって話が進めやすい。

 だって俺と雪乃さんが神様のファンではないことは、確実な事実だから。

 もし夏休みに家を訪ねまでしているこの状況で友だちを否定すれば、他のファンに対応するのと同じように感じているのであれば、痛々しく勘違いしているのは俺ではなく神様の方になる。

 我ながらに、相変わらず自己防衛が必死で気持ち悪かった。

 時間稼ぎだけのために踏み出す自分に与える勇気。そんな価値のないことに必死になっていることもまた、憐れなことだろう。

 自分の中だけだとしてもだ。どうしよう。


 ①無理 ②頑張る ③出来る


 -ここも強く③を選び取るのですー


 しかし俺にはそうする必要があった。そうすることが出来た。

 俺ならば、出来る。

「そんなことわかってるよ~。もしかして、ツンデレ的な何か? だから否定しようと思って、照れ隠しで意地悪を言うの~? だったら、ワタシ、素直な人の方が好きだよ? 従順なのが好みだって言ってるじゃん」

 怒りが一瞬ばかり消えたと思えば、思い付いたというか閃いたというような感じで、至って真面目に神様はそんなことを言えるのである。

 呼んだときには考えていなかったが、コノちゃんという選択はかなり正しかったのではないだろうか。

 二人の自意識の間を取れたら、それこそが妥当なんだろう。

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