表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
二日目
16/223

 これは間違えなく好意なんだろうけれど、それをそこまで嬉しいと感じることが出来なかった。

 こんなに優しく声を掛けて貰っているんだぜ? 俺には少しの損もない、もう特しかないような最高のお誘いだぜ? その上、誘い主様は女の子。

 泣いて喜んでも良いくらい、むしろ嬉しすぎて疑っても良いくらい。

 何か? 女の子って歳じゃないと?

 いやそれでも、女性からのお誘いには違いないじゃないか。どうしよう。


 ①お言葉に甘えて ②遠慮する ③逃亡する


 ーここは②でしょうー


 食欲。それは、人間の三大欲求の一つである。

 しかし俺は誘惑に負けることなく、自己を強く保ち、おばちゃんのお誘いを断ることにする。

「いえ、そこまで迷惑は掛けられません」

「んなこと言うんじゃないわよっ。別に、迷惑なんかじゃないわ。それどころか大歓迎。そのまま住んでくれちゃっても良いくらいなんだから」

 そ、そのまま住んでくれちゃうとは……これは遠回りなプロポーズだろう。

 不思議なことに、このおばちゃん以外にも、商店街のおばちゃん方からの人気が高かったりする。

 ここでクラスを作ったら、努力せずとも俺はリア充一直線だと思うくらい。

 本当だよ? 自意識過剰なだけとか、そういうわけじゃないから。普段優しくされ慣れていないせいとか、そんな悲しい理由じゃないから。

 今だって、おばちゃんは俺を家に誘ってくれている。どうしよう。


 ①お言葉に甘えて ②遠慮する ③逃亡する


 ーここは③を選んでしまうのですー


 どうやら、そう簡単に断らせてはくれないらしい。

 コロッケの代金とでも言わんばかりに、おばちゃんは俺のことを誘ってきている。

 このまま走りだしたら逃げられるだろうが、それは食い逃げということになるのだろうか。いいや、その前に、それだったら押し売りということになる。

 俺は、くれるというから貰っただけ。

 それなのに後から代償を要求するなんて、むしろ詐欺とすら言えるのではないだろうか。

「ご馳走様でした」

 くれる。そう言ったのだから、俺は悪いことをしていない。

 おばちゃんにコロッケを包んでいた紙を渡すと、受け取るその隙を突いて猛ダッシュでそこから逃亡した。

 ごめんね。俺は別に、おばちゃんのことが嫌いなわけではないんだ。

 だけど、やっぱり、女性の家に上がり込むなんて俺には出来ないよ。

「珍しいな。お前が走るたぁ、何屋のおばちゃんに襲われたんだい? それとも、早く会いたくて走ってきてしまったのかい?」

 逃げ切ったことを確認して、息を整えていると、そう声を掛けられた。

 通い慣れているせいかいつの間にか、俺は八百屋赤羽の前にきていたらしい。声を掛けてきたのは、店主のおっちゃんである。どうしよう。


 ①会話 ②逃亡 ③笑顔


 ーここは①で良いのでしょうー


 その質問自体が、さすがだと思う。

 確かに、俺が走ることはほとんどない。体育の授業では仕方がないが、それ以外のところで俺が走ることは、全くと言っていいほどにない。

 つまり、俺が走る姿を見ることが出来るのは、ごく僅かということである。

 まあそれ以上に、俺が走る姿を見たい人なんていないと思うが。

「あはは、よくわかりましたね。肉屋のおばちゃんですよ」

 笑い返す俺に、おっちゃんも笑顔で応じた。

「やはりな。あのおばちゃんは、お前のことを確実に狙っている。気を付けた方が良いぞ? 若い頃からあんな調子で、何度おらだって押し倒されたことか、両手の指じゃ足りないな」

 本当か嘘かわからないようなことを意味深に言うと、おっちゃんは豪快に笑ってみせた。

 でも様々なことを恵んで下さるのは事実だし、あまり悪く言うといけないよね。どうしよう。


 ①気を付けます ②気を付ける ③これまで通り


 ーここは③でしょうかー


 気を付けるとか、そういうのって違うよね。何も、俺に害をなそうとしているわけではないんだから。

 そりゃまあ、好きが転じてストーカーになったりしているんだったら、危険だし犯罪だし気を付けないとだけどさ。

 あのおばちゃんは、素直に俺のことを大切にしてくれているだけだろう。

 子供がいないって言うし、よく商店街に現れる俺を可愛がりたいのかもしれない。

 それはわからないけれど、甘やかしてくれるんだから甘えないと失礼だよね。

「ただいま。……あら、うちの学校の生徒ですこと? どうしてここにいらっしゃるのかしら」

 背後から声。それは、とてもお上品で高貴で、だけどどこか縛られているようで。豪華な檻に入れられた、セレブが飼う美しい鳥のような、そんな美しくも悲しげな響きだった。

 あるいは、何かを恐れているようにも聞こえる。

 だからこそなのだろうか。美麗なだけではない、不思議な魅力を感じる。

 振り返るとそこに立っていたのは、俺と同じ学校の(・・・・・・・)制服を着た女性だった。

 この人も同じ学校に通っているのだとすれば、なぜ去年に気付かなかったのかと悔やまれるほどに、俺が通う学校には絶世の美女が溢れている。

 しかしこの女性は、高校生とは思えない艶やかさや色っぽさを持っている。

 吸い込まれそうになるほど、透き通る真っ白な肌。

 漆黒の瞳は闇を称え、その黒さえも隠すように大きな目は長い睫毛に縁取られている。唇は赤く、紅く、触れることさえ許されないような実を、啄んでしまったようであった。

 全体的に、閉ざされたような印象を受ける。

 ただ見惚れざるを得ないような、視線を逸らしてはいけないというような、そんな美しさを持っているんだ。

 顔だけじゃなくて、スタイルも最高だと思う。

 メロンサイズの豊満なお胸。プリっとしていて、大き過ぎたりはしない綺麗な形のお尻。何か運動をしているのだろうか、制服を着ていても引き締まっているとわかるお腹。

 グラビアアイドルの良さも、モデルの良さも、両方を兼ね備えた理想的な姿だと思う。

 髪の毛は漆黒だが光沢を帯びるほどに輝き、魅力的な尻の辺りにまで伸びている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ