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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 宿題編
154/223

 部屋を出ていく雪乃さんの後ろ姿を、見えなくなるまで眺めていて、神様は大きく溜め息を吐いた。

「本当に、すごい人ね。こうして一緒にお勉強して、楽しくお話して、だけど……せっかくなんだけど、仲良くなれそうにはないな~」

 俺はそんなことないと思うのだが、神様が言わんとしていることも、わからないでもなかった。

 きっと雪乃さんは()()()()()のだというのだろう。

 どういうわけでの神様の言葉だかを、理解してしまっているようじゃ、認識が共通のものに近付いているということだし、そうすると祭ちゃんに対して失礼なことになるね。

 しかし祭ちゃんが大人しく騙されていたのではなかったにしても、神様が祭ちゃんのことを下に見ていたのは、だれにとっても事実なのに違いないのだ。

 進んで祭ちゃんの方がそうしていたようにも見えるけれど。

 その影響で、慣れてしまった神様としては、反対に雪乃さんの傍にはいられないというのだろう。

 本人が思っている以上に、神様は素敵な人だというのに。どうしよう。


 ①いいや、仲良くなれるんじゃないかな ②それは残念だ


 -なんとここで①を選ぶんだそうですー


 余計なお世話かもしれないけれど、神様にはもっと自信を持ってほしいと思ったし、もっと自信を持ってもいいと思った。

 だから、こればかりは自分の欲のためじゃなくて、強く溢れてしまっていた。

「いいや、仲良くなれるんじゃないかな」

 二人を会わせたのは俺だけれど、もはや二人が仲良くなるかの問題については、部外者とすら言えるくらいだ。

 それなのに、こうも断言するのはおかしなことだ。

 決め付けるのはおかしなことだ。

 でも、それくらいしなければ、神様は動けない。

 序でに言えば、雪乃さんは動く必要がないので、動かない。

 信じられないほどの美少女である二人だからこそ、共感し合えることもあるのだろうし、何気ない会話も嫌味でなしに成り立つんだ。

 二人とも良い人だって知っているから、仲良くなれる。断言出来る。

「何さ~、それ。ワタシの何を知ってるって言うの~」

 ありがちな台詞で笑って見せてくれるが、目だけは笑ってなかった。どうしよう。


 ①全部 ②具体例 ③知らない


 -ここは③を選んだようですよー


 俺は神様の何を知っているかと言われれば、知っていると言えるほどは、何も知らないというのが答えであった。

 二人に仲良くなってほしいなんて、保護者みたいに言っているが、俺だってそう昔から仲良かったわけじゃない。

 神様はそれこそ雲の上の存在だったし、雪乃さんのことは出会うまで知らなかったけれど、あんな美少女と偶然に出会えたことは奇跡だと言える。

 見掛けたくらいじゃ、声を掛けられないどころか、逃げてしまうほどの美しさだ。

 遠くから眺めていたいとすら思わない、圧倒的な魅力が彼女にはあるのだ。

 偉そうに仲良くなってほしい言える立場ではないが、適当な言葉を並べ立てるのではなくて、自分の欲望に加えてその気持ちを持っていることも本当なんだ。

 だから正直に答える他なかった。

「何も知らないよ。何一つとして、知っていることはない」

「それはちょっと言いすぎなんじゃないかな~」

 苦笑いされてしまったけれど、そんなことは気にしない。

 だって知っていると言えるほどには、何も知らないことは、そのとおりであることなのだから。

 何を言おうとしたのか、神様が口を開けたとき、雪乃さんが戻ってきた。

 クッキーを取って来てくれているだけなのだから、そう長い時間が掛かるはずもない。

 なのだがどうも、タイミングが悪いと思ってしまうものだ。どうしよう。


 ①続ける ②戻る ③説明する


 -ここは②を選びましょうー


 何を話していたか、雪乃さんに説明して、それを理解してもらうことは不可能だと諦めたいほど面倒なことだ。

 神様が何を言おうとしていたのか、気になるところではあるけれど、雪乃さんがいる中じゃ聞き出せないな。

 気になっていても仕方がないから忘れることにしよう。

「ズルい! クッキー持ってったの、見てたんだから! って、おじさんと遊んでたの? なんで教えてくんなかったの。ズルいズルい!!」

 元気いっぱいな声が雪乃さんの後ろから聞こえて来た。

 部屋に入って来ると同時に、俺にドロップキックを決めようと構えて、失敗して尻餅を搗いたのは、もちろん春香ちゃんである。

 今、家にだれがいるのか知らないけれど、だれがいたとしても、鬼山家にそんな子は春香ちゃんしかいない。

 可愛いとは思うけれど、ドロップキックは失敗して良かったと心から思う。

 成功してたら、反射的に背負い投げしてるわ!

「遊んでたんじゃなくって、こっちは勉強をしてたっていうのに、邪魔しないで頂戴な。春香もちゃんと宿題をやった方が良いんじゃないの? 余裕だと思ってると、また最後に焦ることになるわよ」

 雪乃さんの言葉に、春香ちゃんは大袈裟にギクッとした。

「だ、大丈夫だもん。今年は余裕だもん」

「この時点で余裕なのは毎年そうでしょ。一か月と少ししたら、また焦り出すに決まっているわ」

 なんだか春香ちゃんが来た途端に、姉らしくなって雪乃さんがしっかりした気がする。

 引き返す気配のない春香ちゃん。どうしよう。


 ①一緒に遊ぶ ②一緒に勉強 ③追い出す


 -ここで②を選んでも良さそうですねー


 小学生のレベルの勉強ならわからないこともないだろうし、合間にでも教えられることだろう。

「じゃあ、春香ちゃんも一緒に宿題をやりますか?」

「おじさんと宿題? うん、良いよ! やってあげる!」

 なぜ上から目線なのかは不明だが、そういうところは姉譲りということで、とにかく春香ちゃんも一緒に勉強をするってことだ。

 学力も姉譲りじゃなければ良いのだが……。

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