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渋々といった様子で、雪乃さんは神様のことも案内する。
雪乃さんの場合、神様がいるかなのか、勉強という言葉を聞いたせいなのか、不機嫌な理由はわからないけどね。
神様には悪いけれど、雪乃さんはあまり気にしなさそうだし、後者が有力かな。
「で、教科は何? やっぱり最初は音楽かしら。私、音楽をやりたい気分だわ」
バッグを漁っていた雪乃さんは、なぜか音楽の教科書を取り出した。
音楽は選択科目になっているから俺は取っていないし、テストだってないのだから宿題だってないのではないだろうか?
それを知らないのだろう、雪乃さんのことだから、そりゃそうだよね。どうしよう。
①却下 ②賛成 ③反対
-ここは①となりましょうー
神様がどうなのかは知らないけれど、俺に関しては、音楽は授業だって受けていない。
本当になぜ音楽を取り出したのかと思うが、雪乃さんの行動に理由を求めたら負けだ。
「とりあえず、数学が課題の量としては一番多いですし、一人だと進めにくい教科でもあるでしょう。音楽は却下、数学でもやりませんか?」
「何様よ。音楽をやりたい気分だって言ってるのに、なんで数学なのよ。あっでも、音楽も数学も同じって言ったら、同じかもね。だって両方ともがくって付いてるもんね」
却下されて不機嫌そうにした、と思ったら、後光が差すほど美しい笑顔をこちらに向けて来た。
音楽も数学も、同じって言ったら同じ?
何を言っているんだか、いつものことながら、意味がわからなかった。
「数学の教科書を出してください」
俺の言葉に頷いて、バッグの中を漁り出した。
「ないわ! 数学なんてないわよ。きっと学校に忘れてきてしまったのね」
暫くして、雪乃さんからの衝撃発言があった。
普段だったら、俺だって多少の置き勉はあるけれど、夏休みに入るのに学校に置いたままだなんてことあるものか。
ましてや数学の教科書って、忘れてくるものじゃない。
「え、あぁ、ワタシが持って来てるよ~。何やるかわかんなかったから、数学と国語と英語は持って来たんだ。あとは、宿題が出てるのって、生物くらいだったっけ~?」
ニコッと笑う神様は、雪乃さんとは違って正しい判断だと思う。
どうせ雪乃さんは一人で勉強なんてしないのだから、一緒にやるのだったら、教科書は一冊あれば十分だろうと考えはした。
けれど、どうして俺は雪乃さんが教科書を持っていると信じてしまったんだろうな。
そこには後悔が残るが、神様のおかげで助かった。どうしよう。
①雪乃を責める ②クリスに感謝 ③安心
-ここで全部を選ばなくちゃならないようですー
この場に少なくとも一冊ずつは三教科の教科書がある。
一先ずは安心して大丈夫だね。
まだ勉強は始めていないけれど、そろそろ神様は雪乃さんが外見のように賢くないことに、気付いていも良い頃ではないだろうか。
そんなことを思いながら、ありがたく教科書を借りる。
「雪乃さんも、彼女を見習って、少しは真面目に勉強する気を持つのですよ。学校に忘れてしまったものは、今更どうしようもありませんが、その分も今日はしっかり勉強をするのです。ワークとノートを出して! 忘れたとか言ったら、学校まで取りに行かせますからね」
スパルタ教育モードになって、俺が厳しく言えば、慌てて雪乃さんはバッグを漁り出した。
ひょっとしてだけれど、バッグの中に入っている以外に、彼女の勉強道具はないとか言うわけではない……よね。
バッグの荷物は多いが、そこまでではない。
つまり他は全部学校にあるだとか、そういうことじゃないよね?
俺だって優等生じゃないけれど、いくらなんでも雪乃さんはひどいぞ。
「神様がしっかりしていてくれるから、本当に助かるよ。ありがとね。見つけるまでに時間が掛かりそうだし、その間にちょっと確認していよう。雪乃さんと勉強するには、一から見直すことにはなるんだけど、俺たちがちゃんと理解していた方が進みもましになるでしょ?」
まだ神様は雪乃さんが勉強が出来ないことを信じられずにいるようだった。
先に雪乃さんの失礼とすら言えなくなるほど、馬鹿と言わざるを得ないレベルを知ってしまっているから、俺としては彼女が賢いということの方が驚きだ。
しかし、外見としては勉強はすごく出来そうだ。
秋桜さんもそうだと言っているのだし、やれば出来るのは間違えないのだろう。
問題はどうしたらその冴え渡った雪乃さんに変貌を遂げるかってことか。どうしよう。
①賭ける ②地道に ③諦める
-ここは②を選びますよー
人が変わったと言われる、冴え渡った雪乃さんが出現することに賭ける。それが最も、雪乃さんに点数を取らせる方法だった。
そうではあるのだろうけれど、方法が難しすぎる。
俺だってその冴え渡った雪乃さんを見たことがないのだし、どうしたらそうなるのかなんて、知っていたらずっと賢い雪乃さんでいてもらう。
本人だって調節が無理だから、ほとんどのテストで底辺成績となるのだろう。
手掛かりのない方法を探すよりは、地道に勉強を教えて、一つずつ理解させて覚えてもらった方が効率が良いように思えた。
諦めたくなるけれど、一点でも多く雪乃さんに点を取ってもらおう。
それに、そう思って勉強をしていると、集中力が続くという俺にとっても大きなメリットがある。
雪乃さんほどじゃなくても、俺は普通に常時勉強が苦手だから、雪乃さんと一緒に集中して楽しく出来るのはありがたい。
今回は神様に教えてもらうことも出来るし。




