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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 宿題編
148/223

 その日の夜、銭湯で偶然に雪乃さんと会った。

 今日は一人なようだった。

「これからお風呂に入るの? 私もそうだから、せっかくここで会ったんだし、一緒に行きましょうよ」

 言っておくけれど、もちろん銭湯は混浴じゃない。

 相変わらずの様子である。どうしよう。


 ①話でもしていく ②放っておく ③ツッコむ


 ーここは①を選びましょうー


 時間はあるのだし、話でもしていくとしようか。

 無駄だとわかっているから、ツッコミは入れないけれどね。

「ところで、勉強はきちんとやってますか?」

 会話の流れでそうなったときに、俺はふと思ってしまった。

 ここで雪乃さんと会ってしまったということは、明日雪乃さんに会いに行くことを、伝えずに別れる選択肢はなくなるのではないだろうか。

 もし彼女がいたとして、どうして昨日には伝えてくれなかったのかと、普通ならそうなるだろう。

 相手は雪乃さんだから、普通に行くとは限らないことだが……。

 だからこそ、何が起こるかわからない恐怖がある。どうしよう。


 ①言う ②言わない ③許可を取る


 -ここは③を選びますよー


 断られてしまったのなら、それを隠して神様と会って、そのまま二人きりでいれば良い。

 だって断るということは、家を訪ねても雪乃さんに会わないということなのだろう? だとしたら、断られていることを知っていてのことだとは、神様に知られることはないだろう。

 外出でもなく断るのだとしたら、早めに知れて良かったと、神様に伝えてやむなく諦めるとしようか。知らずに行って、気まずくならなくて良かった、そう考えれば良いのだ。

 この場合、知ってマイナスになることはないだろうと考え、一応は雪乃さんに許可を取っておくことにした。

「明日、家に行って一緒に宿題をやりましょうか?」

「ありがとう。助かるわ」

 やはり大丈夫だったようだが、それにしても即答である。

 当然、手を付けてはいないようだけれど、宿題の存在は憶えているようで安心した。

 雪乃さんならば「何それ」と返って来てもおかしくなかったからね。

「ところで、明日はあんたが一人で来てくれるの?」

 神様のことを伝えるべきか迷っていたところでの、雪乃さんからの質問であった。

 言えなかったとして、言い忘れたという逃げ道を絶たれてしまった。

 絶対に狙っていないものだろうが、それだけに脅威である。どうしよう。


 ①伝える ②隠す ③はぐらかす


 -ここは①で十分でしょうかー


 嘘を吐いても仕方のないことだし、伝えておかないといけないだろう。

「二人で行っても良いですかね。松尾クリスっていう、俺のクラスの子なんですけど、雪乃さんも知りませんか? 話したことがないとしても、結構、有名な人なんですよ」

 なぜだか俺の言葉に雪乃さんは噴き出して笑った。

「なんでよ、知ってるわけないじゃないの。あんたのクラスってことは、私とは違うクラスなんでしょ? クラスが違うのに、話したことなくって、なんで知ってるのよ。あんたったら、意外と天然よね」

 どのポイントを聞いて、彼女は俺を天然だと判断したのだろう。

 しかし、知ってるわけないとは、神様が聞いたらショックを受けるだろうな。

 雪乃さんのクラスにも、ファンはいるだろうと思うけど、残念ながら雪乃さんの耳には全く入らなかったようである。

 確認だけど、この人はクラスにいるんだよね? どうしよう。


 ①笑う ②困る ③微笑む


 -ここは②を選ぶのですー


 もしかしたら、神様なら知られているかもしれないとは思ったのだが、さすがに雪乃さんにまでは届いていなかったか。

「変わった名前なのね。男の子? それとも女の子なの? どういう漢字を書くんだか、難しそうね、私に当てさせて」

 彼女の中に片仮名という発想は少しもないのだろう。

 どんな漢字を言ったところで、正解は出ないよ。

 そうは思ったのだが、雪乃さんが何を言うのか、気になってしまって片仮名だなんて言えなかった。

 だって、面白そうじゃん。

「く、く、くってことは、苦渋の決断の苦ね! あとは、り、だっけ? 林檎のりなんてどうかしら。あと、すは、やっぱりお酢の酢しかないわよね。どう? 正解?」

 この人に子どもが出来て、名前を付けることになったら、その子が可哀想だと心から思った。

 何を言っているんだか、さっぱりわからない。どうしよう。


 ①正解発表 ②褒め称える ③ツッコむ


 -ここはさすがに③でしょうー


 聞き流すにも厳しいほどのひどさである。

「逆に、よく苦渋の決断なんて出てきましたね……」

「見直したでしょ? 私だって難しい言葉を知ってるのよ」

 どうやら、聞いたことがあった言葉を言っただけらしい。

「ちなみにどんな字を書くかはわかりますか?」

 それがわかっていたら、よろしくを夜露死苦と書いちゃうようなヤンキーしか、使わないだろうよね。

「い、いくら私だってそこまでは知らないわよ」

 だなんて、答えて来た。

 漢字を当てるって言っていたのに、どんな漢字だか知らないで答えるとところ、雪乃さんらしいところである。

「苦しむですよ。苦いに渋いと書いて苦渋です。林檎のりはただの林ですし、そもそも、りではなくてりんです。お酢の酢は、酢には違いありませんが、名前で使いますかね?」

 わざとらしく頭を押さえて、雪乃さんが崩れていく。

「自信あったのにー!」

 衝撃の言葉も添えられていた。どうしよう。


 ①正解発表 ②褒め称える ③ツッコむ


 -もう①で大丈夫でしょうー


「クリスは片仮名で書きます。それと、女の子ですよ」

 性別もわからないでいたみたいなので、ついでにそちらも正解発表をしておいた。

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