ポ
まさか本当に俺が彼女の可愛さに魅了されているだなんてことを、彼女が気が付く日は来るのだろうか。
この可愛らしさに、真に気が付く日は来るのだろうか。どうしよう。
①教える ②わからせる ③待つ
-ここは③になってしまいましょうかー
何を言おうと冗談だと、揶揄うなと笑われてしまうことだろう。
その状況では、俺の言葉で伝えることなど不可能だと言える。
無理にわからなければいけない理由はないのだし、上辺の彼女は上辺の可愛さを理解していて、その内で謙虚さを持ち合わせているのだと思えば、悪いようなところなどどこにもない。
いつか本人も気が付くことだろうし、それならそれまでは同じレベルのふりをしてもいいのだろうか。
傍にいていいなら傍にいたいものだ。
紛れもなくそれは下心であって、否定するつもりなどない。
「何よ、その顔……。何よ、この間……。まさか本気で言ってるっての~?」
黙っていた僕に本気を感じたのか、かなり戸惑う様子の神様。
まさかだなんて言われたって、完全に本気以外の何物でもない。どうしよう。
①肯定 ②否定 ③拒否
-ここは①を選びましょうー
嘘を吐く必要もないのだし、どうせ揶揄っているのだと流されてしまうなら、隠す必要などどこにだってないのだろう。
伝わるのなら伝えてしまえ。
「そりゃ本気だよ。本気も本気、本気に決まっているだろ」
「ん~、そっか~。恋愛対象として見られちゃうんだとしたら、異性だってことを意識して、友だちじゃないコソコソがないといけないね。ただの友だちじゃなくって、恋愛対象として見られちゃう、健全な高校生の男女なんだもの」
冗談にも聞こえるし、本気にも聞こえる。彼女も俺の言葉をそのように受け取ったということだろう。
友だちごっこの……いや、友だち同士の恋人ごっこだったとしても、感情がいつか着いて来るかもしれない。
勘違いと思い込みが、真実を生むことだってあるかもしれないのだから、それなら俺としては冗談だって思われたって、実際に冗談だったとしても必要な設定であるように思えた。
待っててくれているコノちゃんにも、優しくて、”友だち”という関係を望んでくれている神様にも、悪いことだとはわかっている。
それでも、俺の望みはそこにあるように思えた。どうしよう。
①なりたい ②いたい ③進みたい
-きっと基準は友だち、ここは③ですねー
まだ到達しきったとも言えない、友だちという関係。
それなのに、もう既に、友だちの先へと進みたいと思っている俺がいた。
神様が望んでくれる存在から、こんな俺じゃ遠ざかってしまう……。
「まあ、なんだって良いよ。それならそれで、楽しそうじゃないの~。ワタシを恋に落とせる人がいるのなら、さっさと恋へと突き落としてほしいものね~」
余裕でいられるのも今のうち、すぐに攻略してやる。俺が恋愛ゲームの登場キャラクターだったら、それくらいのことが言えたり思えたりするのかな。
この余裕にはそれなりの理由と根拠があってのことなのだろう。
神様ほどの人なら、男に期待が持てないのも納得でしかない。
「へ~、反応なしか。ここはきゅん死にする、または挑戦的な瞳を向けるところね~」
言葉だけで考えれば頭のおかしい人の確定条件になるに違いないものなのだが、行っているのが神様だと考えると、妥当な選択肢に思えてしまう。
ほとんどの人が前者、一部の美少女に慣れた人だって後者が限界だ。
放心状態にも近い俺は、どう評価されたことだろう。どうしよう。
①繕う ②正直に ③取り返す
-ここは②を選ぶようですよー
今更になって、強がったところでどうしたものかという話だから、もうこうなったら正直に言うしか方法はなくなってしまうことだろう。
良い言葉が思い付くほど、残念ながら俺のお頭は優秀じゃない。
「見惚れてたよ。これは所謂きゅん死にって奴じゃないかな」
「そういう冗談って、もう本当に嫌な感じっ! ワタシだって冗談なんだから、そんなわけないだろって、ツッコんでくれたら良いのに。そういうとこ、好きだぞ~」
しかし神様は、正直な言葉などというものは、発想としてのものから持ち合わせていないのだろう。
彼女の言葉の受け取り方は、全ては天邪鬼であるように思える。
諦めて正直に白状したのだったが、そういうときに、彼女は毎回、俺の言葉を性質の悪い冗談だと思うようなのである。
適当な嘘を、適当に信じてしまうくせに。
何もかもを彼女は普段から疑っているのではないか、それは、辛いことなのではないだろうか。
自らという、あまりに身近な嘘に苦しめられ、怯えていたことが窺い知れる。どうしよう。
①真実を伝える ②嘘を伝える ③今は黙る
-ここは必ず③を選ばなければなりませんー
どんな言葉だって、逆さまに届いてしまうのなら、正面から言葉が届けられるようになるまでは、黙っているしかないのだろう。
真実を彼女に知ってほしい。
今の俺では図々しく、余計なお世話でしかない。今はまだ、そんな距離感だ。
「とりあえず、行こうか」
ここで会話を続けるのも苦しくなって、沈黙の中に自ら飛び込むことで、沈黙から逃げることを選んだ。




