ボ
「いいや、芸能人などではありませんよ。だれに似ているでもなく、芸能人の方ではないかとは、変わった問いですね」
雪乃さんの兄だというのだから、雪乃さんと同じ血を引いているというのだから、わざとやっているとはとても思えない。
失礼かもしれないけれど、失礼とも思えないほどに、雪乃さんは思っているよりも馬鹿だ。
オブラートに包むことすら忘れてしまうほど、彼女の言動はひどい。
その兄なのだし、無意識にこのオーラを放っているということなのだろう。どうしよう。
①距離を取る ②距離を取らせる ③耐える
-ここも③にはなってしまうのですよねー
面食いを鼻で笑うような神様でも、これほどの美形を前にしては、恋に落ちてしまうのも時間の問題だろう。
それを考えたなら、彼からは離れた方が良いのかもしれない。
だが彼が悪いことをしたわけでもないのに、外見が美しいという理由で避けるのは、どこをどう頑張っても正しいことをしているとは思えない。
元々、正しいことしかしないような、俺は正しい人間を目指しているわけではない。
だけど、秋桜さんはきっと良い人だと思うから、避けられない。
冬華ちゃんだっていることだしね。
「この半端じゃないイケメン、キミの友だちなの~?」
「ううんと、友だちのお兄さん、かな」
これで雪乃さんに友だちじゃないと言われたら悲しい。何度か家にお邪魔しているし、一緒に勉強して、一緒に遊んで、それって友だちで良いんだよね。
雪乃さんに否定されたら、春香ちゃんに頼むしかないか。
空しいとか思わないからっ! どうしよう。
①自信を持つ ②自信喪失 ③どちらでも良い
-ここは②になるのだそうですよー
確かに雪乃さんはフレンドリーなタイプじゃないだろうけれど、だからといって人見知りするようにも見えない。
神様のようにちやほやされる道を選ばなかっただけで、彼女がそう望めば、それは簡単に叶うことだろう。
これは神様の努力を否定するわけではないが、あまりに雪乃さんは可愛らしく美しい。
見た目だけなら賢そうだから、高嶺の花、あまりに高い手の届かない人と思われているのかもしれない。
笑顔の多い人ではないし、喋り方も相まって、クールな印象を受ける。
春香ちゃんに至ってはあの明るい性格だし、きっとみんなの人気者なのだろうな……。
大勢の友だちの中の一人というのが、悪いとするわけではないけれど、そう思うと少し寂しいような気がした。
嫉妬深さは友だち作りには障害なのだろうけれど。
「それで、あなたも雪乃の同級生の人なのですか? あの子は本当に馬鹿だから、果てしなく馬鹿だから、どこまでも馬鹿だから、仲良く出来ているか心配でならないのですよね。……やれば出来るのですがね」
秋桜さん、同感だけど馬鹿って言い過ぎ。
それに、神様が圧倒されてしまっている。どうしよう。
①助けに入る ②放っておく ③冬華ちゃんっ!
-ここは①を選択致しますよー
神様はコノちゃんとは違う。
友だちを作ることが苦手な理由は、人見知りが激しいからだとか、会話が苦手だからだとかではない。
そのはずなのだが、秋桜さんに完全に圧倒されてしまっている。
ただでさえ外見の時点でそれを感じたのに、秋桜さんが返答に困るような言葉を投げるものだから。
だれだって、どう返したら良いか困ることだろう。
神様が雪乃さんのことをどの程度知っているかもわからないが、仲が良いわけではないだろうと思われる。
そうしたら、頷くわけにもいかないだろうが、それだけ押されて、よく知らないのに否定をすることも難しいだろう。
結果、どうしたら良いか困るというのが正解なようにも思えるほどだ。
「彼女も雪乃さんとは同級生ですけど、クラスが違うものですし、接点がなくあまり話したことがないようなのです」
「雪乃お姉ちゃんお友だち少ないですもんね」
俺は秋桜さんに答えたのだが、笑顔の冬華ちゃんからとんでもない暴言が入った。
幼稚園性って怖いわー。どうしよう。
①多い ②少ない ③秋桜さん
-ここは③を選ぶようですー
妹の発言について、兄の様子を窺ってみる。
「そうだね。雪乃は友だちが少ないよね。冬華みたいに頭が良くはないけど、雪乃も優しい良い子なんだけどねー」
出方を待てば、どうやら頷いてしまって良いらしい。
「学校での雪乃さんをほとんど見たことはありませんが、あまり友だちと騒いでいるイメージはありませんね。目立つことをするイメージもありませんし。あれって本当に友だちが少ないってことなんですか? なんか、そのイメージもなくて」
何がおかしかったのか、俺の質問に秋桜さんは声を上げて笑った。
真似をしているだけなのか、それとも何かおかしかったのか、冬華ちゃんも笑い出す。
「雪乃は基本的に冷たそうに見えるでしょう? どうしても近寄りがたいのでしょうね、馬鹿なのに」
「馬鹿押しがすごい……」
思わず声に出してしまい、慌てて口を押さえる。
そうしてから、口を押さえることもなかったと思い直す。
にしても、家族内で雪乃さんの扱いはどうなっているんだか。どうしよう。
①心配 ②憐れみ ③ネタ
-ここで選ぶのは①になりますー
ネタにしようとも思うが、これだけ小さな妹にも定着してしまっていると思うと、もはや雪乃さんが心配にすら思えた。




