表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み デート編
138/223

 目に見えて彼女の顔が明るくなる。

 尽くされるばかりだから、たまには尽くす方の感覚も味わいたいという、興味にも似たものなのかもしれない。

 けれど彼女がそうしたいのなら、断ることはない。

 俺の財布にもとても優しいしね。

「んで~、結局はどこに行くんだっけ? 何か欲しいものとかないの~?」

 本当は彼女の方が買ってくれるのに、まるで俺に強請るかのような可愛らしさで、愛らしい猫撫で声で、彼女は訊ねてくる。

 教室で見せる姿を、本人はぶりっ子と自覚し、同時に美少女と自覚している。

 今の彼女の姿は、本人が素として見せているから卑怯なのだ。どうしよう。


 ①ある ②ない ③いらない


 -ここも①を選択は致しますー


 何か欲しいものと言われても、すぐに思い付くようなものはなかったが、とてもないとは言えそうになかった。

「え、あるよ」

 とりあえずあるとは答えたものの、欲しいものとは、何を言えば良いのだろうか。

 欲しいものなんて、本とゲーム以外には思い付かない。

 相手が他の人だったなら、正直に答えられただろうけれど、今目の前にいるのがだれであるのか認識してしまうと、答えられるはずがなかった。

 俺が求めているのは、答えられるような作品ではなかった。

 さすがにいかがわしい作品ではないにしても、所謂アニオタと呼ばれる人でなければ、ゲーム趣旨を伝えただけで気持ち悪いと思われかねない。

 それが恋愛シミュレーションゲームというジャンルの運命なのだ。

 俺が読むタイプのラノベは、ラノベの中でもタイトルが意味不明だから、笑って流してくれないと辛いし。

 神様ならば大丈夫だろうとは思うが、やはり辛い。どうしよう。


 ①正直に ②模範解答を ③素っ頓狂に


 -ここは②を選ぶとしましょうかー


 食事くらいが安牌か。

「一緒にご飯を食べに行こうとか、そういうのは買い物デートに入らないからね~。ワタシはプレゼントがしたいんだけど、欲しいものって、一体何があるの~?」

 やっと纏まってきた答えを返そうとしたところで、先回りしてそれを封じられてしまった。

 自分で言ってしまったネタだけれど、それが首を絞めたかもしれないな。

 買い物デートだとしたら、まさか食事を奢ってもらって、それで終わりというわけにはいかないことだろう。

 そうしたら、何を買ってもらおうか。

 値段を考えると、文房具とかが良いのかな。

「えっと、すごく今の話で良いなら、シャー芯が欲しいかな。さっきまで宿題をやってた中で、ストックがなくなっちゃったから、今シャーペンに入っているので終わりなんだ」

 どう頑張っても高級品にはならないであろうものを、見事に選んだ自信がある。

 欲しいものには違いないから、嘘は吐いていないし。

「わかった。じゃあ、文房具屋さんに行こうか。なんだったら、ワタシとお揃いにする~?」

「ぶぶっ」

 安心して、油断していたところに、不意打ちでそんなことを言ってきた。どうしよう。


 ①賛成 ②反対 ③拒否


 ーここは③を選んでしまうのですー


 神様とお揃いだなんて、それは信者とは呼べないのではないだろうか。

 貢物を捧げるどころか買ってもらおうとしているくらいだし、本当に神として信仰しているはずはないが、咄嗟に俺はそんなことを思ってしまっていた。

 早くも神様が馴染んでいて笑える。

「いやいやいやいや、無理ですって! それが見つかったら、ファンの人に確実に殺されるから。家に来たことも危ないし、デートへ行くことだって危険に溢れているっていうのに」

 事態を整理したら、なぜ落ち着いていられたのかが不思議になった。

 笑っている場合じゃなくて、慌てて断った。

「別に良いじゃん。ワタシたち、友だちなんだからさ。友だちと一緒に遊びに行くだけ、デートだなんて悪ふざけで名前だけ、そうでしょ? 問題なんてないよ?」

 ファンの熱意を知らない神様ではないはずなのに、彼女は尚もそう迫って来た。

 どうやら、譲る気持ちはないらしかった。どうしよう。


 ①仕方がない ②無理 ③嬉しい


 -ここは①を選べましょうー


 買ってもらう話についてもそうだったけれど、神様という呼び名がしっくり来てしまうだけあって、言葉や仕草の威力が半端なものではなかった。

 頼まれると、押されると、頷いてしまう。

 仕方がないと、そう思えてしまう……。

「じゃあ、責任を持ってちゃんと助けてくれる? 俺が神様のファンのみなさんに襲われたとき、ちゃんと庇ってくれるの?」

「もちろんだよ~」

 彼女の言葉をどこまで信じられるか、わからなかった。

 嘘を吐きたくないと願う彼女のことだから、信じてあげたいとは思うけれど、無意識で嘘を吐いてしまうのがまた彼女でもあるのだ。

 それを自力で直せるのなら、悩みはしないだろう。

 強い意志の籠る、もちろんという言葉だったから、俺の不安の気持ちが大きくなる。どうしよう。


 ①信じる ②信じない ③信じられない


 -くれぐれもここで①以外は選ばないようにー


 庇ってくれなければ、俺は抹消されてしまう。

 庇ってくれたとしても、彼女が去ったその後で、俺は抹消されてしまう。

 いつでもそのときに傍にいるなんて、相手も彼女がいないときを狙うはずなのだし、そんなことは無理に決まっている。

 高望みは罪だ。ときに、嘘よりも重罪だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ