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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 始まり編
136/223

 みんながと言ってしまったなら、俺だけではなくなってしまう。

 これはただの独占欲だ……。

「ありがとう。ほんと、ほんとっに、ありがとう」

 お礼を言ってくれるから、罪悪感が大きくなってしまいそうだった。どうしよう。


 ①許される ②代償 ③開き直る


 -ここは①を選べるようですー


 けれどこれだけしたのだから、許されるとも思えるのではないだろうか。

 俺が、俺の力で、それなら許されても良いのではないだろうか。

 ファンとして応援していた、ずっと傍で松尾さんを見ていた。それなのに、気付けなかった方が悪いんだ。

 または、気付いていた上で無視し続けていたか。

「突然、呼び出したりして、本当に悪いと思っているよ。お父さんが呼んでるなんて、そんな嘘を吐いて、お父さんまで巻き込んじゃったし、そのために婚約者だなんてとんでもない嘘も吐いた。それなのに、キミはやっぱり優しいね~。謝っても足りない、お礼を言っても足りない、どうしたら良いのかな……」

 笑顔で明るい松尾さんが、瘴気に戻ってしまう日が来るのを、少しでも先延ばしにしようとしていた。

 そういうこと、なのだろうか。

 嘘吐きというのは確かなことなのだろうし、彼女の嘘に、少なくとも今日だけでも俺は随分と振り回されたものだと思う。

 そうは思うが、正直に謝れるのならば、その中の罪は小さなものだとも思うのだ。どうしよう。


 ①伝える ②伝えない ③笑う


 -ここは③を選ぶのだそうですー


 嘘を吐いてしまった人は、ほとんどが更なる嘘でその嘘を隠そうとする。

 祭ちゃんと二人で信じ込んだ、あの大きな嘘こそが、その完成形だったのかもしれない。

 だとしても、今の松尾さんが嘘を正直に嘘と認め、謝れるだけの力を持っているのだから、それならば十分ではないだろうか。

 嘘を吐くことも、もちろん悪いことだろうけれど、謝れるのだからそれくらいの嘘ならば良いと思う。

 そう考える俺が間違っているのだろうか。

「心がそこにあるのでしたら、謝ることにもお礼を言うことにも、足りないなんてことはないはずですよ」

 俺の言葉にどれほどの力があるのかは知れないが、松尾さんは悪くないと、偽りのない言葉で伝えたならば、彼女のいくらかの自信に繋がることだろう。

 そうせずただ笑ったのは、やはり俺の下心のためだろうか。

 こんな俺の、どこが優しいものか。どこに感謝など出来るものか。

「ありがとね~。そういえば、前は断られちゃったお願いだけど、今ならどうかな。敬語を止めて欲しいの。いきなりじゃないし、ワタシの中でキミはマツリちゃんの次に仲良いよ?」

 自分の言葉が絶対だと信じ、断られることなど夢にも思っていない、あの頃の松尾さんとは違っていた。

 少し自信がなさげとすら言える表情で、不安げに頼んでくる。どうしよう。


 ①許可 ②了承 ③却下


 -ここで選ぶのは②でしょうー


 可愛さを利用した誘惑により、俺をファンクラブに組み込もうとした、あのあざとい可愛さとは違う。

 本当に友だちになりたいと思ってくれているようで、距離を縮めたいという、精一杯の気持ちなように感じられた。

 それならば、俺だって逃げるべきじゃない。

「わかりました。それじゃあ、今度から松尾さんと話すときは、敬語じゃなくするね」

「うん、それと、呼び名も松尾さんはちょっとなぁ……。えっと、マツリちゃんのことは、なんて呼んでるんだっけ~?」

 チキン野郎な俺が顔を出して、敬語から直すことに緊張してしまってならなかった。

 それなのに、一気にそこまで進展するというのは厳しい。

 断じて顔で選んでいるだとか、そういうつもりではないけれど、どうしたってそういうところが出てしまっても仕方がないと思う。

 だって松尾さんは本当に美少女なんだもの。

「ライブから連れ出したあの日以来、祭ちゃんと呼んでいるけど、クリスちゃんだなんて呼べないからね?」

 ファンの人たちのこともあるし、危険だと思い先に言っておいたが、どうやらその必要はなかったらしいのだ。

 俺の言葉を松尾さんはくすくすと笑っている。どうしよう。


 ①理由を問う ②首を傾げる ③納得


 -ここは普通に①を選択しますよー


 何かおかしなことを言っただろうか。

 祭ちゃんをどう呼んでいるかと訊ねたから、そこから松尾さんの呼び方も決めようとしていたのかと思って、そういったのだからおかしなことはないはずである。

 けれど松尾さんは「それはない」と笑う。

「どうして笑うのさ」

 考えてもわからないだろうから、俺が質問してみれば、「だって」と松尾さんはその理由を明かす。

「名前にちゃん付けなんて頼まないよ~。なんでそう呼んでみて気が付かなかったの~? クリスチャンって、完全に別ものじゃないの。ワタシ、キリスト教とかよくわかんないよ~」

 つまり、クリスにちゃんを付けて、クリスチャンとか笑っちゃうわー。ということ?

 説明している途中も、必死で笑いを堪えているようだったから、勝手に俺の中でハードルを上げてしまっていたのだろうか。

 そこまで面白いとは思えないのだけれど……。どうしよう。


 ①笑う ②困る ③納得


 ーここは③を選ぶようですよー


 とりあえず、理由については納得だね。

 どこがそんなに面白かったのかはわからないけれど、よくわからないことがツボに入ってしまって、一人で笑っちゃうってわりとあることだもんね。

 クリスちゃん、クリスチャンか。

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