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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 始まり編
133/223

 特殊なタイプな人というのを、松尾さんが良い意味で言っているようには見えなかったけれど、それで話をしてくれると言っているのだから良いのだろう。

 ファンだとか、そういうわけではないけれど、純粋に彼女のことを知りたいと思った。どうしよう。


 ①最後まで聞く ②逃げる ③耳を塞ぐ


 -ここは①を選びますよー


 せっかく話してくれるというのだから、最後まで聞くしかない。

 彼女の方から話してくれる限りは話を聞こう。

 それに、逃げ出したいと思ったところで、ここから逃げ出す方法なんてどこにもないのだからね。

 逃げられるなら、こんな空気になる前に、とっくに逃げてる。

「なんとなくもうわかると思うけど、ワタシね、すごく根暗だしネガティブなの。一年のときは本当に暗くって、感じ悪いから、だれもワタシのことなんか見やしないわ。それに嘘吐きって言われるのは嫌なのに、どうしても嘘を吐いちゃうから、……嘘を吐かないように話をしないようにしたんだ。目立たないように、いろいろしてたし」

 横髪を弄りながら、いじけたように松尾さんは話す。

「似合わないのわかってて、ショートってレベルじゃないくらい、髪型はショートにしてたんだ。今はコンタクトだけどずっと眼鏡だったし、それとさ、今もそれなりだと思うんだけど、去年はもっと太ってたの」

 想像が出来ないけれど、見た目も随分と変わったというわけなのか。

 二年生になって出現した美少女、ということになるのか。どうしよう。


 ①驚き ②唖然 ③コメント


 -ここも①になりましょうー


 まさか松尾さんは遊んでいるだけ。勝手にそんなイメージを持っていた。

 しかしそれこそが、彼女が作り出したものだったということだったのか。

 話を聞けば聞くほどに、俺は松尾さんに申しわけないことをしていたような、後悔が強くなって来る。

 驚きを抑えきれない。

「今の感じで見ると、松尾さんはなんでも似合いそうなんですけどね。どんな髪型だってどんな服だって、松尾さんに掛かればオシャレに見えそうですし、それこそ眼鏡なんてオシャレアイテムではありませんか。どのような状態であっても、松尾さんの可愛さは変わらないように思えるのですけれど」

 戸惑いのためか、つい口から零れていた本音の恥ずかしさに、俺は頭を振って慌てて正気を取り戻す。

 どう思われたか不安になって、松尾さんの方を見れば、意外な反応が見られた。

 照れているなどとは思わなかったのだ。

「ほ、本当にそういう、そういう冗談は止めてよ~。あんまり言われると、ワタシ本気にしちゃうからね? だってこんな腹黒なワタシ、可愛いわけないじゃん」

 これも彼女の作戦だと思うのに、本物の動揺に思えてしまってならない。どうしよう。


 ①好きになる ②嫌いになる ③否定する


 ーここは③を選びますー


 弄ぶような普段の笑顔なら、可愛いとは思うけれども、アイドルのような存在としてそれで終わり。

 可愛らしいと思って、行っても、応援したいというところまでだ。

 だけどこんな姿じゃ本気で好きになってしまいそうだ。

「ねぇ、本当に可愛いの?」

 住む世界が違う人、好きになることなんて、許されるはずがない。

 違う違うと、どうにか否定を繰り返すけれど、どうにも出来ないところがあった。

 そんなときに、松尾さんは追い討ちを掛けるのだからひどい。

「甘えたような声を出さないでください。もう本当に、ドキドキしちゃったらどうするんですか!」

 そして、どんな言葉よりも辛い、沈黙という空気がこの場所を包み込む。

 気まずさを感じているのは、俺だけじゃないようだった。

「もしかして、だれにでもこういうこと言ってるんじゃないの~? なんだかんだ言って、結局はだれと付き合ってるんだか、よくわかんないキミだしさ」

「俺が軽い男に見えてるってことですか?」

「そういうわけじゃないよ。暗いし、存在感ない空気だし。だから不思議でならないんじゃないの」

 俺と松尾さんの間とには、格差があるとはわかっているが、本当に友だちのように返してしまっていた。

 返ってくるのも完全に悪口である。どうしよう。


 ①文句 ②反論 ③照れる


 ーここは②になりましょうかー


 そのまま頷くわけにはいかない。

「自分が明るいとは思いませんし、存在感があるとも思いませんが、そういう言い方はないと思います」

 思わず反論をした俺に、クスクスと松尾さんは笑ってくれる。

 見惚れるほどに愛らしい笑顔だった。

「あぁあ、なんかキミを見てたら、自分を取り繕うのも馬鹿らしく思えてくる。好かれたくって、努力して、偽りの自分を愛されて。それで満足なんて、本当に寂しい話だよね~」

 先程まで本当に楽しそうだった笑顔が、一瞬ばかり陰りを見せて、今度は笑顔なんてその面影すら消えてしまった。

「もう力を抜いて、ファンクラブ解散しちゃうってのも、ありかもしれないよね~。ちょうど、疲れてきた頃なんだ~。やっぱりワタシには無理なのかな~、なんて思っちゃって」

 そのまま松尾さんになることは、良いことなのかもしれない。

 けれど今のアイドルのような彼女を求めている人が、数多くいることも事実なわけで、松尾さんを変える引き金を引いたのが俺だと知られたら……。

 最初からファンに殺されるのは覚悟の上、今更なことだけど。どうしよう。


 ①押す ②逃げる ③留まる


 ーここは①を選ぶとしますー


 何度も迷う必要なんてないんだ。

 殺されるのは覚悟の上、そのはずなんだから。

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