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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
夏休み 始まり編
130/223

 天沢さんほどは作られたものではなく、何があっても、喋り方からボロが出るということはないわけだ。

 そのことはかなり松尾さんの像を本物に近付けるだろう。どうしよう。


 ①肯定 ②否定 ③笑う


 -ここでは②を選ぶ必要がありますー


 可愛いのは認める。けれどいくら可愛いからといって、クラスでの日常生活でまで特別視をしているというのは、あまり俺には理解が出来ない。

 理解だって出来ないし、賛成だって出来ない。

 それでも本気で松尾さんのことが好きだから、松尾さんを応援したいと思っているから、松尾さんに少しでも良く思われたいと思うから、そうしているだろうことはわかる。

 それなのに、当の松尾さんがこんな言い方をするんじゃ、あまりに不憫だった。

「馬鹿なんかじゃ、ありませんよ。だってどの方だって、確かに松尾さんに好意を抱いているのですから。受け止めろとは、ましてや応えろとは言いませんが、目をくれるくらいのことはしても良いのではありませんか?」

 何かおかしなことを言った覚えはないのに、松尾さんは笑った。

 笑顔とかではなくて、鼻で笑ったのでもなくて、彼女は笑ったのだ。

 もしかしたら俺は、初めて彼女の笑う姿を見たかもしれない。

「目をくれる、ねぇ。言ってくれるな~。結構ひどいこと言ってるって自覚ないでしょ~。そういうところ、好きだな」

 作られたような様子はなく、だからこそ好きだなという言葉にはドキッとした。

 そう言った意味ではないとわかっていても、思わずにいられないのだから、この可愛らしさというのは卑怯なものだと思う。どうしよう。


 ①告白ですか? ②好きなどと言うものでありませんよ


 -ここも②を選ぶことになるのですー


「好きなどと言うものでありませんよ」

 どうしたって照れてしまって、目を逸らしながらになりつつも、少しの動揺もしていないふりして注意をする。

 すぐに好きとか言うところも、彼女にとっては当然のこと。

 その上、素の彼女にとっての当然のことだったというわけなのか?

 本人も認めたとおり、裏表のある子ではあるけれど、実際のところそう遠くは離れていないのではないだろうか。

 だからこそ作られた感じのなくなった素の姿は、更に愛らしくすら感じられる。

 このままじゃ駄目だ。ファンになりそう。

「どうして言っちゃいけないの? 好きだから好きって言ってるだけなのに、どこがいけないんだかわかんないよ」

 作り笑顔やキャラクターに効果がないと思ったのか、被った猫を捨ててくれたのに、その上でこの言葉はやはり卑怯なのではないかと思う。

 本人は気付いていない様子だが、半端でない破壊力だ。どうしよう。


 ①指摘する ②褒める ③非難する


 ーここは①を選びますー


 もし無意識の彼女が、このまま俺と友だちになることを望んでいるのだとしたら、それはとても無理な話だ。

 ファンのふりをしようとして、デレデレする必要など全くない。

 だってそんなことをしなくても、この松尾さんに惚れずにいられる自信などないから。

「……松尾さん、ズルいですよ。ご自分が可愛らしいことをご存知でしょうに、どうしたらそのようなことを仰れるのです?」

「今、何か変なことを言ったかな? 雰囲気で可愛さ出していけるけど、本物の美少女と一緒にいて、目が肥えちゃってるからには効かないんでしょ?」

 もしかしたら、松尾さんは何か勘違いしているのかもしれない。

 彼女自身がどれほどの美少女であるか、知っているようで知らないのだと、そういうことだろうか。

 確かに顔だけで見て、唯一無二と言えるほどの美少女ではないかもしれない。

 それでも松尾さんは紛れもなく美少女だ。

 間違えなく事実であり、疑う余地さえないものだろう。どうしよう。


 ①力説 ②否定 ③肯定


 ーここも①を選んでいきますー


 身の安全を確保するためにも、改めて松尾さんにはご自身の可愛さというものを知ってもらう必要がある。

 言動にわざとらしいぶりっ子という影は見えていたが、彼女が可愛いのは、そのせいだけじゃない。

 それどころか、そのままの松尾さんはもっと可愛い。

 そのことを認識してもらわなければ、更なる無意識に襲われ俺は死ぬ。

「何を仰っているのですか。わざとらしいところがなくなって、作り物っぽさがなくなって、そうしたら俺には、松尾さんの魅力が増したように感じられます。今の状態で学校に来ていたら、どう抵抗しようとしても、俺は松尾さんの夢中になっていたことでしょう」

 何を言っているかわからないといったふうに、彼女は心底不思議そうな顔をしている。

 自分自身が可愛いわけではないのだと、彼女は思い込んでしまっているということだろう。

 協力していたというだけだって、理論は祭ちゃんと同じということ。

 ……自信がない。自信が持てない。

「冗談は止めて。マツリちゃんはとっても良い子。コノハちゃんとか言ったっけ? あの子も見るからに良い子そうじゃないの。うちのクラスでキミが絡むのは性格が良い子だけ。当然よね。先輩含めて他クラスの本物たちと仲良しなんだもの。学校中の噂よ。気付いていないの?」

 本当に松尾さんは可愛いのに、傷付いたような瞳だった。

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