表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
二日目
13/223

「どうして自分のクラスを通り過ぎていったのですか? あんな綺麗な女性の隣で、何をなさっているのですか? ストーカーの予行練習ですか? それとも本番ですか?」

 教室に入り用意まで済ませ着席すると、驚くほどに堂本さんからの質問があった。驚くほどにと言うより、驚いた。

 だって堂本さんの方から、俺のことを尋ねてくるとは思いもしなかったんだもの。

 オタク仲間として、あくまでもその程度の興味しか持っていないだろうと思っていた。

 彼女が好きなのは俺ではなく、俺がプレイしているゲーム。そうとはわかっていたから、妄想だけを広げていた。

 それなのに、俺自身に興味があるかのようなことを彼女はしてくるのだ。

 大人しくて優しい。ほとんど知らなくても、それくらいのことはよく伝えてくれる。それほどまでに、彼女は内気で優しい少女なのだ。

 そんな彼女が怪訝そうな顔をしてこういろいろと訊いてくるのは、俺が好きとしか思えないだろう。嫉妬して怒っちゃっているんだ、そうに違いない。

 妄想乙? そんなこと言わせないから。どうしよう。


 ①答える ②答えない ③会話する


 ー普通に①で良いのでしょうかー


 堂本さんが本当にその質問の答を求めているのかはわからないが、とりあえず全てに返答しておくことにする。

 おかしなことを言って拒絶を受けるくらいならば、質問に答えておいた方が、後で彼女のせいに出来るから……。

 自分の性格の悪さは、もうわかっていたことだもん。今更、なんとも思わないさ。

「自分のクラスを通り過ぎたのは、ただ気付かなかっただけです。綺麗な女性は偶然会ったから、他愛のない話をしていただけです。ストーカーの予行練習とか本番とか、断じてストーカーではありません」

 まるで浮気の言い訳をしているかのような気分だった。

 だけど堂本さんの方から質問してきているんだから、変な空気はちゃんと回収してよね。

 俺、悪くないから。無邪気に素直に、子供のような素直さで、質問されたことに正直に答えたというだけ。

 堂本さんが望んでいた答えがあったんだとしても、それを俺は知らないのだから。

 自分の気持を正直に答えたんだ。事実を伝えたんだ。

 なんとかそうして自分を庇おうとするけれど、やはり二人の間に流れる空気に耐えかねた。

「そうですか。ストーカーでないなら、それで大丈夫です。心配だっただけですから。疑ってしまってごめんなさい」

 しばらく沈黙が続いて、心が折れそうになっていたところ、堂本さんが可憐な笑顔を浮かべてそう言ってくれた。どうしよう。


 ①見惚れる ②微笑む ③目を逸らす


 ーここは③しか選べないのだそうですー


 彼女のその美しい微笑みを前に、微笑み返すことも出来ず、俺は目を逸らしてしまった。

 本当に美しくて、それは堂本さんの心を映す綺麗な笑顔なのだろうと思った。

「それで、偶然会ったとはどういうことでしょう! 今は時間がありませんから、昼休みにまた詳しく問い詰めさせて頂きますね!」

 まだ話は終わっていなかったようで、興奮気味に堂本さんはそう言ってきた。

 それは提案や約束ではなく、決定事項であり確定としか思えない言い方。

 普段の彼女の様子からは考えられないことだが、命令とも言えるのではないだろうか。どうしよう。


 ①承諾 ②拒否 ③無視


 ーここは①としましょうかー


 彼女がそうしたいと思っているのなら、それはそれで構わないかな。

 俺は何も悪いことをしていないし、問われて答えられないような行為に及んだ覚えもない。

 それだったら、昼休みに話す話題を先に決められたとして、自然と会話へと持ち越せそうでいいじゃないか。

 これはつまり、昼休みに堂本さんと一緒に過ごすことが、確定したということでいいんだよね。

「わかりました。待っています」

 その程度の答えしか返せないけれど、あまり長々しく言うより良いかな、と俺を納得させる。

 どんな話題にしろ、堂本さんの方からともに過ごす約束をしてくれたんだ。


 そして迎える昼休み。

「わあ、手作り弁当ですか? 男の方ですのに、そういうのって魅力的だと思いますよ」

 弁当を食べながら取り調べは行おうと、そう決まったのだが、弁当箱を開けた途端に堂本さんは感嘆したようにそう言ってきた。

 彼女に限ってないと思うのだけれど、多少それは馬鹿にしているようにも聞こえる。

 一目見て、俺が作ったとわかったのはどうしてなんだろう。

 それはきっと、この雑さと料理ではない感じからだろうね。どうしよう。


 ①喜ぶ ②憤慨 ③照れる


 ーそれでもここは③になってしまうのですー


 購入した弁当と間違えることはないだろうけれど、普通だったら母親が作ったものだと思うだろう。

 それなのに俺が作ったと決め付け、そうして褒めてくるなんて、弁当の悲惨さを嘲笑っているとしか思えない。

 そんなことも思ったものだが、やはり褒められて悪い気はしない。

 男は単純な生き物だな。

 罠とわかっていながらも、欲望のままに罠に嵌ってしまう男も、きっとこんな気持ちなんだろう。

「魅力的か、ありがとうございます。女の子に褒められることないから、もう……勘違いしてしまいそうですよ。堂本さんも、少しは自覚して下さいよ」

 照れながらそう言った俺に、堂本さんも照れたようなはにかみを向ける。

「今更、女の子とか言われてもこっちはキュンとしませんよ。話を逸らさないで、大人しくあの美少女の情報をコノに下さい」

 堂本さんの目的はそこだったのか。嫉妬してくれたんじゃないか、という妄想は音を立てて大きく崩れ落ちた。

 そりゃそうだよね。

 あの並びだったら、俺じゃなくて美少女に興味をもつだろう。

 でも情報を下さいと言われても、俺だって与えられるほども知らないからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ