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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
部活動
124/223

 作られたツンデレ。

 これが可愛いと思えるのは、やはり、コノちゃんだからなのだろう。

 その言葉だって嘘ではなかったのだ。どうしよう。


 ①抱き締める ②突き飛ばす ③目を逸らす


 ーここは③を選ぶことしか出来ませんー


 恋人でいられるほど、俺は立派ではない。だけどまだ、コノちゃんのことが好きで、恋人でいたいと思ってしまっているのだ。

 彼女は待っていてくれると言ったけれど、本当に彼女の王子様になれるとは思わない。

 近付くことも遠ざかることも怖かった。

 都合の良さを求めているということになるのだろうか?

 コノちゃんが好きと、それではいけないのか……。

「何よその顔。好きでいるのはコノだけじゃないのかなって、どうしてもそう思っちゃうじゃん」

 目を逸らしてしまったからか、コノちゃんは可愛らしい声を出して来る。

 視覚で駄目なら、聴覚から誘惑をしようというわけか。どうしよう。


 ①抱き締める ②突き飛ばす ③飛び付く


 -ここで①を選べてしまうのですー


 抑えきれなくて、そのままコノちゃんに近付いて、抱き締めてしまっていた。

 ここは学校だというのに。俺たちは、付き合っているわけでもないというのに。

「ちょっと、何をするのよ馬鹿じゃないの? 嬉しくなっちゃうじゃないのよ」

 突き飛ばされて、軽くショックを受けていたところに、真っ赤な顔のコノちゃん。

 か、可愛い……っ。

「二人って付き合っちゃってる系だったのっ! 気付かなかったんだけどヤバい! 今ここで何やってたの? どうしよ、ウチ、見ちゃったんだけどぉ!!」

「「え?」」

 叫び声が聞こえて来て、驚いてそちらを見るが、時間的にも薄らと暗く、だれであるか判別が出来なかった。

 あまり聞き馴染みのない声でもあるし、だれなのだろう……。

 スキップで近付いて来てくれて、そこでやっとだれだかに気が付いた。

 トレードマークとなる、大きな星を頭に付けていて、背が小さめで子供っぽい。髪が肩に少し掛かり、彼女が跳ねる度に揺れるのが、彼女の元気を感じさせて、また可愛らしかった。

 彼女の名前は夢前星香ゆめさきせいか。同じクラスの、リア充である。

 あまり話したことがないので、どういう子か詳しくは知らないけれど、リア充であるに違いない。

 だれだか気付かなかったのは、最初から選択肢の中に入っていなかったからなのだろうな。どうしよう。


 ①黙らせる ②戸惑う ③堂々とする


 ーこれは②以外を選べようがないでしょうー


 まずは静かにしてもらわないと。

 でもどうするか、どうするべきか、どうしようもない!

 だって話したこともないもん。

 実は天沢さんみたいに、リア充に見せ掛けて、というタイプなのだろうか?

 だとしたら、このテンションで俺とコノちゃんに、話し掛けはしないだろうね。

 どう考えても、二人揃って根暗なんだから。

「そんなに動揺しちゃって、怪しいな、増々怪しいなぁ。いっつも一緒にいると思ったら、そういうわけだったのね。だけど、あの、だれだっけ? あんた、他の女のことも一緒にいるよね。意外とモテる、意外とチャラいタイプの子的なこと?」

 ビシッと指差されて、彼女は順に俺とコノちゃんを見る。

 しかし自覚はあるが、そこまで意外と言わなくたって良いじゃないか。

「え、モテるの? アナタが? 嘘でしょ……?」

 隣で意外そうな顔をしている、コノちゃんも失礼だよね。どうしよう。


 ①反論 ②文句 ③呑み込む


 ーここは①を選びましょうかー


 さすがの俺でも、ここまで言われっぱなしではいられない。

「俺だってモテるから。モテモテだから! 嘘じゃないもん」

 言ってから自分で虚しくなって、後悔した。

 コノちゃんもそして夢前さんも、大爆笑をし出すのだからひどい。

 会話をすることなんて初めてに近い、夢前さんともずっと仲良しだったようで、俺にはそれが嬉しかった。

 男子からの人気だけを集めているとかではなくて、女子だけで絡んでいるとかでもなくて。

 クラスの中心で楽しそうに笑っている、だれからも嫌われないタイプである夢前さんは、俺からはかなり距離のある人だ。

 コノちゃんが隣にいるってだけで、夢前さんほどの人の前でも、言葉を発することが出来るとは。

 やはりコノちゃんの力は強い。

「意外とモテるって思ったら、そんなことなかったか。だけど二人の付き合っている疑惑ってのは、事実だったりしちゃったり? えっへへ、クラスの恋愛事情はウチにお任せ! しっかしまあ、ウチのサポートなしに付き合い始めちゃうとか、超辛いんだけど。今はもう七月だから、前のクラスのときから付き合ってるとか、……そんなことはないもんね?」

 さりげなく、彼女との認識の差が表れてしまった。どうしよう。


 ①合わせる ②逃げる ③吐き捨てる


 ーここで②を選んでしまうのですー


 怖くなって、コノちゃんの手を掴んで、思わず走り出してしまった。

 逃げ出してしまったのだ。

「ね、ねぇっ、手を離してよ。コノが先に逃げるからっ」

 手を振り払って、コノちゃんは俺を抜かして走っていく。

 俺が逃げるしかなかったように、コノちゃんだって同じだったのだ。

「待って。待って! コノちゃん、どこまで行くのさっ!」

 昇降口を過ぎて走っていくコノちゃんを、大声で呼び止めれば、やっと気が付いたというようにコノちゃんの足が止まる。

 そうして、疲れた様子で歩いて来る。

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