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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
部活動
122/223

 どちらにしても、たまきの可愛さに俺はデレデレだった。

 普段からこの状態なのだとしたら、敵も多く作っていることだろうが、俺みたいなアニメヲタクには愛らしくて堪らなく見える。

 実際、純粋な顔の美しさとしては、間違えなく雪乃さんとかの方が上となるのだろう。

 失礼なこととはなろうが、少なくとも俺はそう思う。

 それなのにたまきがどうにも可愛く見えるのは、あざとい仕草のせいなのだろうなと、意外にも冷静に俺は分析までしていた。

 どこか二次元らしいので、見惚れるとかそういうことにはならないが、だからこそ可愛らしさに胸を打たれる。どうしよう。


 ①告白 ②近付きたい ③この距離を


 ーここは③となっておりますよー


 近付いてしまったなら、きっと何かが違ってしまうのだろうな。

 詳しい個人情報を彼女の方から守ろうとしてくれたのは、ありがたいことだと言えるだろう。徹底的ななりきりを尊敬する。

 部活とはいっても、運動部でなければ、この程度のハードルしかなかったものなのか。

 怖がっていたほどのものではなかったようだ。

「入部届を用意してあります。顧問のサインなども済んでいますから、後は、生徒の指名の方をお願い出来ますか。保護者のサインはあってもなくても、むしろここで自分で書いてくれても大丈夫ですよ」

 扉の下の隙間から、スーッと紙が出てくる。

 拾い上げてみれば、髙橋先生の言葉のとおり、それは入部届なようであった。

 保護者のサインとはなんであったのかレベルの発言だぞ、それでも教師か。

 呆れながらも見ているが、どこに保護者のサイン欄があるのかわからない。

「先生、また適当なことを言ったにゃね。先輩が困っちゃってるから、ちゃんと謝らにゃいといけませんにゃあ」

 たまきの言葉に気付く。

 いつもの髙橋先生の、何も考えていない、少しの責任も持たない適当な言葉シリーズか。

 声のトーンがいつだって一定なものだから、わかりづらくて困る。どうしよう。


 ①叱る ②笑う ③無視


 ーここも③を選ぶこととなりますー


 不機嫌そうな素振りを見せれば、髙橋先生に笑われるに決まっている。

 本当にとても教師だとは思えない人である。

「ねぇたまき、髙橋先生の授業は受けたことがありますか? または、髙橋先生の授業を受けたことがある知り合いなどはいるでしょうか?」

 面白い授業をするとは聞くけれど、担当ではないので、気になってたまきに聞いてみる。

「にゃぁ。いえ、たまきのクラスは担当されてないですにゃん。それと、この感じで伝わっていると思うんですけど、残念ながらたまきに友だちはいませんにゃ。学校内の生徒に限れば、今この状態で、たまきと最も親しいのは先輩だと思うくらいですにゃ」

 明るく可愛らしく、どうでも良さげに、けれど丁寧に答えを返してくれる。

 完全に悪いことをしてしまった気がしてならない。どうしよう。


 ①謝る ②共感 ③笑う


 ーここは②になりましょうー


 謝られたなら、反対により虚しくなるであろうことを、考えなくても俺はわかる。

 本人が明るく言っているのだから、笑い飛ばしてしまったなら楽なのだろうが、それが出来るほど俺とたまきは親しくない。

 だとしたら、どうすることが正解なのだろうか。

 いや、ないのだ。生かいなんてものは残っていないのだ。

 それならするべきことは、最小限にダメージを小さくするということ。

 俺もたまきも傷は既に負っているのだろうから。

「そうですか。そうですよね……。大体、俺と話をしてくれる人って、あまり顔が広くない人なんです。顔が広い人は、数多くいる知り合いの中に俺を含めたくないんですかね」

「うにゃぁん、気持ちはわからないでもないですにゃ。友だちが多い人って、友だちが多い人同士で絡んでいる気がしますにゃん。類は友を呼ぶって奴ですかにゃ? はっ、どうせ上辺だけの友だち関係ね」

 鼻で笑ってにゃんも忘れた、どす黒いたまきの影が一瞬だけ見えたが、気にしない気にしない。

 それから、リア充への偏見話で思いがけず盛り上がってしまう。

 部活動の時間を終えて、解散をするというときには、まるで友だちかのように自然な話が出来るようになっていた。

 友だちがいないということは、一緒に帰る相手もいないということだろうけれど。どうしよう。


 ①誘う ②諦める ③興味ない


 ーここはきちんと①を選ぶのですがー


 勇気を振り絞って、一緒に帰ろうとそれだけ言えたら良い。

 同じ部活の女の子と、学校から一緒に帰宅するだなんて、恋人同士としか思えないじゃないか。夢がある、恋人らしいことだ。

 さっきまで自然に話を出来ていた相手だ。

 何もナンパをしようとしているわけではない。知らない人ではない。

 それに隣を歩くにしても、あくまでも友だちとしてだ。

「家ってどっちなのですか? もし方向が同じだったらだけど――」

「ごめんなさい。それは無理です。それじゃあ部活動も終了の時間ですし、たまきはそろそろ帰りますね。今日の部活動は楽しかったです。ありがとうございました」

 言い終わるのも待たないうちに、たまきは図書室を後にしてしまった。

 部活動の一環として、俺とのコミュニケーションを取っていただけだということ? どうしよう。


 ①追い掛ける ②割り切る ③傷付く


 ーここは②を選びましょうかー


 インターネット上でだけの関係と、そう変わらないものなのだ。

 現実世界のことは明かさずに、相手のことは何も知らないで、余計なことは詮索しないで。そういう、仲の良さの形。

 部活の間だけの友だちと、そういうわけか。

 たまきはあれだけキャラクターを演じきっているのだ。

 それなら俺だって、リアルの俺である必要などないのだろう。

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