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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
部活動
121/223

 口調も考えろ。これは罠だ。罠に違いない。

 だって、現実的に考えてみろ。

 美少女系ロリボイスで「はにゃ?」だぞ、聞こえてくるわけないだろ。

 罠かまたは幻聴だ。どうしよう。


 ①無視 ②振り向く ③抱き着く


 ーここは②を選びましょうー


 恐る恐るながらも、俺は後ろを振り向いて見る。

 そこに立っていたのは、悪戯っぽくスマホを掲げたおっさん。とかじゃなくて、本当に先程のロリボイスの持ち主であろう、美少女なのであった。

 うちの高校の制服を着ているから、生徒には違いないのだろう。

 しかしとても高校生とは思えない、見事なロリっぷりであった。

 可愛い。どうしよう、可愛いんだけど。

 身長は俺の胸辺りまでしかないから、女子にしても小さい方だと思う。

 そしてなんといっても真っ平な胸! 典型的な幼児体型!

 雪乃さんも幼児体型だと思うけれど、この子に関しては、全くもって少しも膨らみを感じることさえ出来ないのだ。

 それはもう、ロリキャラの中でも、特に幼女系に分類されるほど。

 って俺は何をしているんだ。

 相手は本物の女子だろうに、何を分類なんてしているんだか。どうしよう。


 ①仕方がない ②止まらない ③止める


 ーここも②を選びますよー


 そうは言っても、止まらないのだからどうしようもない。

 頭の中で考えている間は、セーフであろうか?

 それに、彼女の外見が、二次元から出てきたかのようなのだから、キャラクターとして考えてしまっても仕方がないような気がする。

 こんな勝手、失礼だってわかっているけどさ。

 もしかしたら俺の幻覚なのではないかと、まだ思ってしまう。

 ふわりと広がり、小さなお尻の辺りまで伸びる、真っ黒の長髪。そしてその頭には、ピョコッと二つの耳が生えている。

 そう、頭から耳が生えているのである。

 髪と同じ黒だから、独特の髪型なのだと考えられなくも……考えられないよね。

 どこからどう見ても、猫耳が生えている。どうしよう。


 ①訊ねる ②触る ③流す


 ーここは①しかないでしょうー


 この猫耳を放置したまま、話を前に勧めることなど出来るだろうか?

 いや、出来ない!

 気になることがあまりに多いぞおい。

 どなたですかと問われているが、それに答えられるほど頭が追い付かない。

 待って。この美少女は何者だ。

「たった一人の部員が彼女です。本名は庄堂珠希というのですが、自身のことはあまり知ってほしくないようなので、余計なことは言わないようにしましょう。それで、彼は〇〇と言って、前に、この部へ勧誘したい生徒がいると話したことがあったでしょう? その彼です」

 どちらからも何も言えずにいたとき、髙橋先生が紹介をしてくれた。

 文芸部のたった一人の部員。

 つまり、入部をしたなら、必然的に彼女と二人きりになれるということ?

 この美少女と二人きりで放課後を過ごすことが出来る。

 そう考えると中々に夢があるけれど、そのような理由で入部を決めても良いものだろうか。どうしよう。


 ①入部 ②拒否 ③保留


 ーここでも①を選んでしまいますー


 美少女と二人きり。部活。

 部活をやらずに早く帰宅しても、どうせ一人じゃないか。

 心の中の俺のその声が、強く背中を押した。

 そうだ。どうせ一人で家にいるなら、学校で放課後を過ごした方が良い。

 だって美少女と二人きりだぞ?

「会ってみて安心しました。一気に、文芸部に入りたいって、そう思いましたもの。怪しい人とか、怖い人とかが来なくて良かったです」

 俺の言葉は、庄堂さんというらしいこの美少女へ向けてではなくて、髙橋先生へ向けてのものであった。

 誘ってくれたのは、あくまでも髙橋先生だからね。

「たまきと一緒に、部活動をしてくれる人ですかにゃ? うにゃ、たまきも、部員が増えるのは、とても嬉しいですにゃん」

 先生が許可しても、部員に拒否されたら……。

 思いはしたけれど、あっさりと笑顔を向けてくれた。どうしよう。


 ①笑顔を返す ②自己紹介 ③警戒


 ーここは②を選びますよー


 紹介はしてもらったけれど、自分でちゃんと自己紹介した方が良いよね。

「初めまして」

「詳しい個人情報まで聞こうとは思いませんにゃ。言いたいなら勝手に言っても構いませんが、たまきは言いませんですからにゃ」

 名乗ろうとしたところで、被せてそう言われてしまった。

 この口調なども含めて、本当にキャラクターになりきりたいタイプなのだろう。

 なりきりにリアルを持ち込むのは外道だ。それくらいのことは、俺だって心得ている。

 詳しい個人情報とは、どこからを指すのだろう。

 知らないとお互いに不便なこともあるだろうし。どうしよう。


 ①自分的に ②質問して ③気にしない


 ーここは①を選ぶのですよー


 自分的に、ボーダーラインだと思うところで止めようか。

 必要のないと思うことは、出来るだけ言わないようにすれば良いのだ。

「たまきのことは、たまきって呼んで下さいにゃ。余計なことは考えなくて大丈夫ですからにゃ。えっと、二年生だとお伺いしていますので、たまきは先輩とだけお呼びします。十分ですよね?」

 一応は髙橋先生から本名は聞いているのだし、そこも言う必要がないことだったのか。

 彼女は互いの呼び方の提案、というか指定を出してきた。どうしよう。


 ①了解 ②却下 ③微笑む


 ーここも①で十分でしょうー


 俺に選択の余地はないのか、それを思わないではない。

 けれど特に嫌な部分があるわけでもない。

「わかりました。改めてお願いしますね、たまき」

「了解ですにゃ。ありがとうございます、先輩」

 甘えるような声で、先輩と言ってくるものだから、それだけで幸せになるような音の響きであった。

 こんな魅力的な部活があったなら、最初から入っておけば良かった。

 それとも一学期があったからこその、この歓迎ムードなのかな。

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