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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
クラスメート
118/223

 好きなふりをしていれば、いつか本当に好きになってくれる日があるかもしれない。

 恋愛感情からなる好きではないにしても、友だちであると思い込むことによって、それが本当に友だちになれる日が来る。

 思い込みが過ぎて、松尾さんと祭ちゃんの友だちごっこの繰り返しになってしまっても困る。

「根っからの良い人? 俺が? 初めて言われた」

 本心ではなくふりだとはわかっていても、驚きで俺は聞き返してしまった。

 思わず呟いてしまった。

 初めて言われた、だなんて。可哀想な奴みたいじゃないか。

 そう思ったのに彼女は、「だろうな」そう笑ったんだ。どうしよう。


 ①理由を問い質す ②意味を問い質す ③傷付く


 ーここも①を選ぶことになるようですー


 俺のことだから、良い人だなんて言われているわけがない、そういうことか?

 だろうなってどういう意味だよ!

 そうは思ったけれど、彼女のことだから、悪い意味で言っているとは思えなかった。

 哀れなほどに、そして羨ましいほどに素直な彼女が偽りだと知れたけれど、それでも彼女が悪態ばかり吐くような悪い性格はしていないとわかった。

 悪い意味じゃないとしたら、どういう意味があったのだろう。

「どうして、そう思ったの……?」

 単純に彼女がそう言った理由が気になった。

「不器用だからだ。優しいけど冷たいな、とか思っていたら、あまりに優しくて冷たく見えるだなんて、不器用にもほどがある。不憫にもほどがある。そんなお前ぇだから、良い人だなんて言われたことないだろうって思った。お前ぇの良いところに気付ける奴が、あたし以外にたくさんいたってちょっと妬いちまうしな」

 放った言葉の理由を訊ねるだなんて、面倒な奴だと思われたかと、少し後悔もしたけれど、彼女は笑顔でその答えを返してくれた。

 まるで彼女が俺に好意を抱いているかのような言葉だった。どうしよう。


 ①ときめく ②笑う ③微笑う


 ーここは③を選びましょうー


 どうしたら良いのかがわからなくて、ただ微笑みを浮かべた。

 照れてしまって、目を逸らしてしまって、言うべき言葉がわからなかったものだから、微笑みを浮かべるしかなかった。

 微笑む俺の返事を、彼女は何と思ったのだろう。

「はは。お前ぇと木葉が付き合っているのは、目の前で告白を見ていたものだし、すっごくわかっているんだ。なのにあたし、ドキドキしちゃって……、お前ぇの顔を見ていると変なんだ」

 照れたように彼女が言うのは、本気の証拠だろうか。

 一瞬だけ思ってしまったけれど、そのようなことがあるはずもない。

「何を仰るのです!」

 戸惑いのために、敬語に戻ってしまった。

 ドキドキしちゃってだなんて、友だちじゃなくて恋じゃないか。

 いやそんなはずがないのに。

「木葉とはどうなんだ? 最近もまたデートしたり、キスしたり、とにかくいちゃいちゃしているのか?」

 照れた様子で言い難そうにしながらも、興味津々で彼女は言った。どうしよう。


 ①彼女とはもう別れちゃったんだ ②うん、そうだよ


 ー正直に①を選ぶとしましょうー


 嘘を吐いたところで、祭ちゃんとコノちゃんとだって、そう遠い存在ではないのだから、俺が隠しても簡単にばれてしまうことだろう。

 隠す意味もないし、隠せるとも思わないのだから、俺は正直に言うことにした。

「彼女とはもう別れちゃったんだ」

「へぇ、そうなんだ!」

 どこか嬉しそうな声で、身を乗り出す勢いで言われた。

 その後、彼女はバツが悪そうにする。

「ちょっと喜んじゃって、ごめん、嬉しくなっちゃって。つまりそれって、今は彼女がいないって、そういうことだよな?」

 彼女が嬉しそうにしているのは、どういうわけなのだろう。

 今この状況で、俺と彼女は友だちということになっている。

 ただのクラスメートではなくて、友だちなのだ。

 それでは、彼女のいなくなったという事実を、笑おうということなのだろうか。

 友だちならではのそういう励まし、俺もちょっと憧れているところがある。

 しかしそれを隠すというのも、また友だちらしいということなのだろうか。どうしよう。


 ①彼女はいる ②彼女はいない ③内緒


 ーここは②を選びましょうかー


 ただ、コノちゃんに待っていてくれとか相応しくなるとか、友だちに戻るのも言ったんだって言ってあるし、なのだから、変なことは言えないよな。

 ネタのつもりだったとしても、それが彼女の耳に入ることがあるかもしれない。

 俺が笑ってコノちゃんに言うならともかく、祭ちゃんからコノちゃんに伝わってしまったとして、それを俺が否定したというときに、彼女はどう思うだろう。

 そんなの、真実だと思うに決まっている。

 直接、俺からそう言うよりも、真実味は強くなる。

「あぁそういうことになるね。初めての彼女持ちは、もう、終わってしまったよ。彼女なんて今はいるわけもない」

 だから強がりもせず、正直に言った。

 ふったわけでもふられたわけでもなくて、お互いに話をして、今は恋人でいられないということに纏まった。

 喧嘩をしたとかじゃない。嫌いになったわけじゃない。

 励ましなんて本当は必要ないのだけれど、寂しくなるべきところでもないというのに、どうしてもしんみりとしてしまった。

 こんな俺を見て、彼女は何があったと思うだろう。どうしよう。


 ①笑う ②悲しむ ③目を逸らす


 ー他を選びたくもここは③になってしまうのですー


 笑って誤魔化そうかと思ったのだけれど、そうはいかなかった。

 思わず、目を逸らしてしまった。

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