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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
クラスメート
116/223

 俺が彼女と松尾さんとの間に掛かっていた催眠を、その友だちごっこを終わらせてしまったがために、今の彼女は俺のそんな言葉を信じはしないだろう。

 けれど彼女は笑顔で言ってくれた。

「いや、大歓迎だぜ。なんてたって、祭ちゃんは、ファンサービスも完璧だからな。求めには応えてやるし、友だち以外にファンのふりもしてたいってなら、友だち以外にアイドルらしい顔も持っていてやる」

 その笑顔は自然ではあるのだけれど、それが行き過ぎている。

 自然が過ぎるのだ。

 それは彼女の作り笑顔は、今まで真実であったから、それが笑顔として身に付いてしまっているせいだろう。

 逆に、本当にアイドルというのも向いているのかもしれないな。どうしよう。


 ①彼女に勧める ②笑える ③なんともいえない


 ーここで選ぶのは③ですよー


 自分で思って、なんともいえないような気分になってしまったのだから、馬鹿らしい。

 これを言葉にしてしまったなら、彼女はなんと思うのだろう。

 何も思わないような、今でも真実だと思ってしまいそうな、この笑顔で笑い飛ばすだけなのだろうか。

 彼女だと思っていた彼女と、初めて会うような彼女と、どちらが現れたとしても怖いような気がした。

 まだ、笑いの種にするのには、些か過ぎた時間が短いのではないだろうか。

「黙んなよ。報われないだろ? ったく、急に写真を撮ってきたものだから、せっかく付き合ってやってるのに……。てかさ、どういうわけなの、本当に気持ち悪いぞそれ」

 ポジティブなだけの彼女でいてくれたから、大丈夫だったけれど、普通に考えるようになってしまったら、それは気持ち悪いよな。

 確かにそうなのだけれど、言われてしまうと傷付くところがあった。どうしよう。


 ①貫く ②正直に ③誤魔化す


 ーここでは②を選びましょうー


 誤魔化しても誤魔化し切れないだろうし、それだったらば、このまま貫いているよりも、正直に話した方がましだろうか。

 別に、やましい心があったわけではない。

 というか、最初に誤魔化そうとして使った、可愛かったからつい写真を撮ってしまった、という嘘。それこそがやましさというものなのだろうから、他に何があると言おう。

 ここで何も言わなかったとして、反対に、彼女はなんと思うのだろう。

 それも気になるところであったが、無駄に不信感を持たせたいとも思わないので、やはり正直に話すべきだろうと結論付ける。

「あの、ですね、話したらきっと、俺らしくないって思うんじゃないかな。逆に気持ち悪いと思うんだけど、それでも?」

「気持ち悪いかどうかはわかんないじゃん。話を聞いてから、気持ち悪いなら気持ち悪いって笑ってやるよ」

 男らしくもそう言ってくれたので、話す勇気をきちんと持てた。

「綺麗な笑顔だなって思って、それで……。これは本当ですからね! 作り笑顔とか、苦笑いとか、考えてみたら今までそんなのばかり見てきたから、さっきの笑顔はそれとは全然違ったものに見えて。そうしたら、写真に残しておきたいって、そう思っちゃったんだよ」

 最後はもう、消えゆくような声だった。

 言い切って暫くは、驚いたように目を瞬かせていたが、やがて祭ちゃんは大爆笑をした。

 それは結構な時間の間、ずっと彼女は大爆笑をしていたものであるが、急に真剣にこちらを見る。

 思わず身構えてしまったくらい、真剣な顔でだ。

「その写真、自分でも見たいな。どうやって、本物の笑顔ってものを浮かべているのか、どんな顔なのか、知りたいからさ。作り笑顔ばかりを見てきたし、自分の作り笑顔を本物だと信じて、楽しいときでも真の笑顔なんて知らないままだった。だから、その、本物の笑顔を浮かべている写真は貴重だと思うし」

 気持ち悪がらないでいてくれたどころか、彼女は写真を見せてくれるように要求してきた。

 俺の訴えを、意味がわからないと切り捨てるような人ではなかったのだ。

 結局いくら明るく振る舞っていようとも、彼女は同じ世界の人だということか。どうしよう。


 ①見せる ②見せない ③嘘を吐く


 ーここは普通に①で大丈夫ですー


 見られて困るものでもないのだし、本人が見たいと言っているのならば、見せてあげた方が良いのだろう。

 それに、言いぶりからも態度からも、感じるところがあった。

 彼女は興味だとか好奇心だとか、そういった感情からではなくて、勉強か何かとでも思っているのではないかと思える。

 これ以上、完璧な作り笑顔に磨きをかけるつもりなのだろうか。

 まさに今こそが完璧な状態というもの。

 しかし実際に浮かべる、自然の笑顔というものは、必ずしも完璧なものだというわけではない。

 なのだから玉に瑕を付けてそれを完璧ではなくし、より本物のような作り笑顔へと仕上げようと、そういうつもりなのだろうか。

 何かそんな類な考えを持ってでもいない限り、祭ちゃんのこの反応にはならないはずだ。

「それじゃあ、画像を送るよ。……って、そういえば、連絡先も知らないままだよね、俺たち。友達なんだから、友だちらしく、ね、良いでしょ?」

「SNSとかも含めて、全部、アカウントを教えてやるよ。そうしたら、よりいろんなことを知れるし、仲良しって感じもするんじゃないかな」

 他の人が見たなら、それこそこういうのを友だちごっこというのだろうな。

 そのように思いつつもちゃっかり女子のそういう情報をごっそりゲット。どうしよう。


 ①にやつく ②喜ぶ ③悪用する


 ーこれじゃあ②しか選べないではありませんかー


 これは喜ばないわけにはいかない。

 当初の目的となっていた、リア充の基準を余裕でクリア出来るようなものだ。

 これを喜ばないでいられるはずがない。

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