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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
クラスメート
114/223

 他人事のように言う彼女は、それが不可能だと、距離を置きたいのだと思っているように見える。

 しかし俺と同じくらいに、友だちという存在を望んでいるようにも見える。どうしよう。


 ①確認する ②肯定と解釈 ③否定と解釈


 ーここは②を選ばなければなりませんー


 少し強引にでも、肯定であると、解釈してしまうべきなのだろう。

 ここで受け身になっていては、話は進められない。

 お互いに友だちにはなれないまま。話し掛けたいんだけど、どう思われるかわかんないしなぁ、でもだれかと話がしたいなぁ。友だちって良いなぁ。

 そんな関係を続けることになる。

 そうした関係でいたままに、卒業をしてしまうことになる。

 高校でまで、俺はそれを繰り返し感じたくはない。

 話し掛けたくて、その勇気がないままに終わるなんて、絶対に嫌だ。

 そして親しい人なんていなかったから、詳しいことは知らないけれど、俺と同じように、友だちがおらずそう思っていた人だって、いたんじゃないかと思う。

 虐めはない学校だったが、みんなが仲良しなんて、ありえようもないからね。

「それでは、俺と祭さんは、今から……明日から友だちです。クラスメートであり、友だちです。それを基盤としてなら、ファンであることもまた良いかもしれませんね」

 今のは単に俺がヘタレだっただけだ。

 明日からと、期限を設けてしまうなんて。どうしよう。


 ①今からに直す ②明日じゃまだ ③無理


 ーここでも②を選んでしまうんですよねー


 相手がどう思っているかわからないのに、今すぐだなんて、言えようはずがなかった。

 自分にも考える暇がほしかったし、相手にも与えなければいけないと判断した。

 だから今と言い掛けていたのに、明日と言ってしまったのだ。

 それどころか、明日でもまだ足りないんじゃないかと、思い始めてしまっている。

「すぐにというわけにはいきませんか? でしたら、徐々に友だちになることを目指していく、そのために、友だちと呼べる日まで一緒に行動し続けるというのも、一つの手ですけれど」

 祭さんのためのような顔をしてしまうのだから、俺は相変わらずだな。

「いかがでしょう。友だちになるつもりがあるのなら、こつこつ続けていきませんか? 千里の道も一歩よりということで」

「その千里の道を、多くの人は一歩でクリアしているんだろうな。本当の友だちという、ゴールの存在する友だちごっこか。面白そうだな。きっと、友だちになろうじゃないか」

 祭さんの例えは、そのとおりなことだと思った。

 そう思えてしまっただけに、悔しいことであったよ。

「友だちごっこが、友だちと呼べる日が来ても、きっと、傍にいてくれよな」

 微笑んだ祭さんは、ドキッとするくらい綺麗だった。

 ときめきの意味でのものか、罪悪感がなすものか、そのどちらかはさておいて。

 何にしても、彼女の微笑みは綺麗だったんだ。どうしよう。


 ①微笑み返す ②見惚れる ③目を逸らす


 ーここは③を選んでしまいますー


 直視してはいられなくて、つい目を逸らしてしまっていた。

 なんだか悪いことをしているかのような心地だった。

 元々、正義のヒーローでなんかいられているとは思っていない。

 だけれども、悪であるつもりはなかったのに。

「もうこれで話は終わりだよな。ほら、早く食わないと、料理が冷めちゃうぞ」

 沈黙の空間が、気まずくなりつつあった頃、俺の知っている彼女の笑顔で、彼女は明るく笑ってくれた。

「そうですね。せっかくの料理が、冷めてしまうといけませんね」

 どう返事をしたものか、少し迷いつつも微笑みで言葉を誤魔化して、俺は夢中で食べ始めた。

 食べるのに集中していれば、その間は無言でも気まずくならないからだ。

 妙に意識してしまった方がいけないと、そう思ったからだ。

「あまりがっつくタイプには見えなかったから、なんか意外だぜ」

 食べ終わって口を拭いていると、祭さんにそう言われてしまった。

「そういう祭さんは、イメージどおりですよ。意外なほどがっついていたという、その俺よりも、先に食べ終わっているのですから」

「へいへい、そうかよ。イメージからしてめっちゃ喰いそうってことかよ」

 ちょっと不機嫌そうに唇を尖らせた。

「女の子にその言い方はないだろ。デリカシーないでやんの」

 最初から、人見知りの気配は感じられなかった祭さん。

 だけれども、変化した彼女の話しぶりは、友だちに近付こうとしてくれていることが見える。

 俺は、それが嬉しくてならなかった。どうしよう。


 ①俺も変わる ②確認を取る ③変わらない


 ーここは②を選んでしまうんですねー


 こうなったら、俺も変わるべきなのだろうか。

 彼女がそうしてくれているのに、俺が歩み寄ろうとしないなんて、そんなことは間違っているだろうか。

 突然に俺が変化を起こしたとして、彼女は嫌に思わないだろうか。

「あの、俺も普通に話して良いですか? 友だちなのに、敬語って変かと思いまして。それと、呼び方も、やっぱり祭さんから、何か他のものに変えるべきかと思うのですけれど。今すぐ、実行する自信はありませんが、変わらないといけないですよね……?」

 やっぱり俺はヘタレなのである。

 一々、変わり出す努力をすることにまで、許可を求めてしまうのだから。

 どこまでも、自分が傷付くのが怖いのだろう。

 断られるはずもない質問を、わざわざしてしまうくらいに、臆病なのだ。

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