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どの教科も、それなりにテスト結果は良かったのではないかと思う。
最後の教科が終わって、上機嫌で帰ろうとしていたところ、祭さんのライブのことを思い出す。どうしよう。
①教室待機 ②声を掛ける ③だれかを誘う
ーここでは②を選びましょうねー
ライブを始める気配はあまり感じない。
場所は教室だったのだから、待っていたら始まるのだろうとは思うけれど、松尾さんにからかわれているだけなのかもしれない。
しかしまだ教室にいるようだし、祭さん本人に聞いてみるのが一番確実だろう。
松尾さんが遊んでいるだけなのだとしても、それに祭さんは加わっていないだろうから。
彼女はどう考えたって本気であるに違いないのだろうから。
詳細は松尾さんの方が知っていそうなところだけれど、俺は声を掛けようとは思えない。
誤魔化されて、遊ばれて、そのままわからないままに終わってしまいそうだ。
むしろ謎を増やされてしまいそうに思える。
「あの、ライブというのは、いつ始まるのでしょうか」
机に突っ伏している祭さんにそう訊ねてみる。
「ん、あぁ、今からやるって。睡眠も取れたし、元気いっぱいだぜ」
眠そうに眼を擦ると、元気に楽しそうに立ち上がった。
元気いっぱいと自分で言っているだけあって、騒がしく走り出した。どうしよう。
①歓声 ②応援 ③帰宅
ーここも②を選びますー
思わず驚きで逃げようとしてしまったが、いつ始まるのかと声を掛けている時点で、どう考えても楽しみにしているようではないか。
それなのに逃げ出しては失礼となろう。
だって一度ここから逃げてしまったなら、俺は戻ることなど耐えられず、絶対に帰ってしまうことだろうから。
楽しみにしていたふりをして、走って逃げ出し帰ってしまったということになるからね。それはひどい。
「頑張って~。応援してくれる人は、こんなにたっくさんいるんだ。良かったね、これがマツリちゃんの人気だよ。テスト終わりなのに、みんな、こんなに集まってくれたんだからっ」
祭さんの人気ではなく、松尾さんの人気なのではないだろうか……。
彼女の言葉に祭さんは喜んでいるようだけれど、本当にみんなが彼女のファンと思っているようだけれど、そうではないと学校内の事情や関係に疎い俺だってわかる。
これが松尾さんのファンクラブのみなさん、ということなのか。
「あたしのために、集まってくれてありがとな!」
教壇の周囲をうろちょろしながら、マイクを持っているように右手を口元近くにあてて、嬉しそうに祭さんは飛び跳ねるけれど、だれもそんなものは見ていない。
応援しているような顔をした、松尾さんでさえも、祭さんのことを見てはいないようだった。
「可愛いですよ、祭さん! ライブ、頑張って下さい!!」
出得る限りの大声で、周りがいかに五月蝿くとも聞こえるように、全力でそう叫んだ。
向けられる視線など気にせず、俺は何度も叫んだ。だってこれは花空祭の、スペシャルライブだからね。
「……。……ちっ。むぅ、マツリちゃん、可愛いよ。可愛い、世界一可愛いよ~」
「「「ううぉおおお!!」」」
不機嫌そうに舌打ちしたように見えたけれど、可愛らしい天使のような声で、松尾さんも応援しているような声を挙げた。それに周りの人も続く。
祭さんに対してではなくて、松尾さんに応えた声なのだろうに、よくぞまあ素直に自分のファンと信じられるものだ。どうしよう。
①教える ②帰る ③連れ出す
ーここは③を選べるのですー
本人が喜んでいるのだとしても、とても良いことだとは思えない。
「祭さんっ!」
これ以上は、見ていられなかった。
だれもかれも、祭さんには興味がないといった様子で、応援席で松尾さんに近付くことばかりを考えている。
俺が祭さんの何というわけでもないが、思わず飛び出してしまっていた。
おかしい人と思われているだろうけれど、それでも。それでも、飛び出さずにはいられなかったから。
彼女の手を取って、教室から連れ出してしまう。
意味などなく、考えもなく、それなのに、だけれど見ているだけも辛かったから。
「なんだい? 熱狂的なファンなのは良いが、ライブちゅうだし、んな大胆なことされちゃ困るぜ」
嬉しそうに困った顔でそう言う祭さんは、あまりに素直だった。
あまりにまっすぐで、疑いというものを持っていないようだった。
本人が楽しんでいるのに、それを疑いや裏切りに染めることが、相手を想ってのことだと言えるのだろうか。
それに、ただ同じクラスなだけである、俺がそんなことを。どうしよう。
①告げる ②教える ③帰す
ーここは②を選択致しますー
本人のためとは言えないかもしれない。
だけどずっとこのまま松尾さんに遊ばれ続けるというのは可哀想だ。
「あの人数、どうやって集めたのですか。だれなのか、どういう人たちなのか、ご存じなのですか」
首を傾げた祭さんは、俺の言葉の意味が全くわからないらしい。
「ファンサービスはしているつもりだが、ファン一人一人の名前までは知らないな。そういう意味では、お前ぇはかなり特別なのかもしれないな」




