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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
恋人と友だちと知り合いと、初めましての微笑みを。
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 コノちゃんと一緒に行ったのは一度きりだったが、それからも雪乃さんの家にお邪魔して、勉強を教えることは何度かあった。

 また、自分一人でも勉強の時間を多く設けて、中間テスト以上に気合を入れて勉強をした。

 そして遂に迎えたテスト初日の朝に、突然この言葉である。

「今度、ライブをやるぜ! ファン代表であるお前ぇのことは、特別にあたしから招待状を渡してやろうと思って。ほらよ」

 いつもよりも早く来て、最後の確認をしている最中のことであった。

 祭さんは満足そうな顔をして、俺に一枚の紙を差し出して来る。どうしよう。


 ①受け取る ②受け取らない ③相手しない


 ーちゃんと①を選んであげましょうねー


 受け取ってみれば、いかにも手作り感満載なライブチケットで会った。

 栞に使いやすそうな細長い形に切られた紙に、「花空祭 special live tiket」と書かれていた。一つ残念なところを挙げるとすれば、ticketのスペルが間違っているところだろうか。

 それとも、こんなチケットを作っていること自体だろうか。

 彼女は楽しそうにしているのだから、それで良いのかもしれないけれど、この状態でテストに臨んでも大丈夫なものか?

 英語は中々に悲惨だと思うが、俺だってこれくらいは書ける。どうしよう。


 ①指摘する ②スルーする ③馬鹿にする


 ーここは②を選んでしまいましょうかー


 だが、あえてだとしたらどうする?

 何か意味を持って、このように書いているのだとしたら。だとしたら、間違っていると指摘してしまったら、相手は恥ずかしい思いをする上に、傷付くことにもなる。

 込められた深い深い意味に俺が気付いていないだけだよね。

「ごめん、そこまで喜んでくれるとは思わなくって、あたしも嬉しいぜ」

 複雑な笑みを浮かべてしまっているであろう俺の表情を、彼女は何と思ったのだろう。

 そのようなことを言われてしまった。

「マツリちゃ~ん、どうだった~?」

 どう対応したものか俺が戸惑っていると、柔らかそうな金髪を揺らし、現実離れしているほどの美少女が近付いてきた。

 我がクラスの金髪美少女、みんなのアイドルである松尾さんだ。

 どこを取ってみても、どのような場面であっても完璧なる可愛らしさである。

 真っ白な天使のような存在なのに、腹の中が黒く見えてしまうのは気のせいだろうか。

「声も出ないくらい喜んでくれているみたいだ」

「そっか、それは良かったね~。ワタシのアドバイスは役に立ったかな?」

「おう! ここまで喜んでくれたのは、そのおかげだと思うぜ」

「良かった~。だれだって、特別って言われたら嬉しくなっちゃうものだからね~」

 多くの男子生徒の視線を集めながら歩いて来ると、松尾さんは祭さんとそんな会話を交わした。どうしよう。


 ①意味を聞く ②首を傾げる ③追い払う


 ーここも②を選ぶことになりますよー


 言っている意味がわからず、俺は首を傾げる。

 するとそれに気が付いたようで、祭さんが説明をしてくれた。

「実はだな、ライブリクエストをしてくれたのはクリスなんだ。だからあたしがプログラムとチケットを作ったら、言ってくれたんだよ。ファンサービスが重要だから、熱烈なファンには手渡しでチケットを渡してやれ、そうすりゃ喜ぶぞって」

 この二人の関係性そのものがよくわからないな。

 友だちのようにも思えないし、ライブリクエストとか言っているけれど、とてもファンだというようにも思えない。

 不思議に思っていると、祭さんはまだ説明が足りないと思ったのだろう。

「お前ぇだけは特別って言えば、気絶するほど喜んでくれる。そうアドバイスをくれたのもクリスなんだぜ」

 そう続けてくれた。

 俺はともかく、相手が本当にファンなのだとしたら、そういうことは言わない方が良いんじゃないのかな……。

 とにかく、どれも松尾さんの入れ知恵だということか。どうしよう。


 ①喜ぶふり ②お礼を言う ③困る


 ーここでは③を選ぶということが大切ですー


 微笑んで誤魔化そうとも思ったけれど、表情を作るのも間に合わなかったらしい。

 疑問点があまりに多くて、対応に困っているところが、きっとそのまま表情にも表れてしまっていたのだろう。

 松尾さんがクスッと笑い、祭さんに囁いた。

「見て、あの顔。マツリちゃんが可愛くって、固まっちゃってる、困惑の顔だよ~。やっぱりだれも近付けないくらい可愛いマツリちゃんが、直々に、なんて刺激が強かったかな~」

「やっぱそうか。だけどそんだけ喜んでくれるんなら、あたしも嬉しいや」

 嬉しい。その言葉は嘘ではないのだろう。

 祭さんの顔は心から嬉しそうで、楽しそうで、元気で無邪気な笑顔を浮かべていた。

 それに対して松尾さんも、ある意味では楽しそうな表情であるということに違いはないのだが、無邪気さというものは一ミリも感じられない。

 嬉しさというのは含まれず、祭さんの反応をただ楽しんでいるのだろう。どうしよう。


 ①喜ぶふり ②お礼を言う ③困る


 ー同じ選択肢、ここでは②を選びますー


 何をしても何を言っても、祭さんはポジティブな解釈をした。

 何事もネガティブに考える人よりも、そちらの方がよっぽど良いと俺は思うから、好意的に思っていたのだけれど、どれも松尾さんが仕組んでいたものということなのか。

 隣で囁いて、何もプラスに思えるように、一種の洗脳のような形で。

 そう思うと悪いことにも聞こえるが、カウンセリングとも取れるかも。

 ポジティブに考えられることって良いことだもんね。

 いや、でも必ずしも全てがそうというわけでもないし……。

 何よりいけないのは、彼女がそれを楽しんでしまっているということか。

「ありがとうございます」

 これ以上、黙っていることを変に解釈されても困るので、俺はとりあえずお礼だけ言って、手作りのチケットをバッグの中にしまった。

 テストが終わったら、一応は詳しく見てみようかな。

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