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ハーレムへの選択肢  作者: ひなた
一日目
10/223

「ごめんなさい。ほら、春香はるか、こっちにおいで」

 俺が探すまでもなかったらしく、女の子を呼ぶ声があった。

「お姉ちゃんだ! 逃げろーっ」

 楽しそうに叫んで、春香と呼ばれたこの女の子は、俺から離れて走り出してしまう。どうしよう。


 ①追い掛ける ②放っておく ③呆然とする


 ーここで③しか選べないのですー


 どうしたら良いものか。追い掛けても変質者だが、置いていくのもどうかと思うし。

 結局は立ち尽くし、呆然とすることしか出来ずにいた。

「春香が何か迷惑を掛けたりしませんでしたか? すみません」

 保護者らしき女性がこちらへやってきて、俺にそう訊ねてきた。

 黒髪を膝の辺りにまで伸ばし、前髪は目の上で美しい弧を描いている。横髪は肩に掛からないくらいの高さ、戦国モノに登場する美人女性キャラクター、みたいな印象を受ける。

 目は切れ長で周りを長い睫毛が縁取る。

 鼻はスラリとしていて、口は小さく唇も薄い。

 風呂上がりであるせいか、白い肌の頬だけが桜色に染まっている。

 絶世の美女としか言いようがなかった。

 天沢さんの美女っぷりも素晴らしいものだったが、この女性は違う美しさを持っているのだろう。

 天沢さんには失礼かもしれないけれど、第一印象というか外見というか、それだけでいけばこの女性の方が美しいと思う。

 もう、美しいという言葉では言い表せないような、言葉や絵では伝えられない。何に例えることも出来ない、目を疑うほどの美しさだった。

 天沢さんを見たときには、俺の妄想ではないかと考えた。

 しかし彼女は俺の想像力で作り出せる美しさを超えている。

 ここまで美しければ逆に、現実なのだと判断することが出来る。

 ただ……、俺は死んでこれから死後の世界へ連れて行かれるのではないか。というような恐怖さえも覚えた。

 どちらかといえば、天国ではなく、笑顔で地獄へと連れて行ってくれそうな美である。

 怪しさや妖艶さは感じさせない彼女だが、純粋無垢な黒い瞳は、無邪気なままで自然と地獄まで誘いそうなところである。

 また、天沢さんと異なる美しさを感じさせるのは、やはり彼女のスタイルである。

 背は俺より低いくらいだから、女性としては普通だろう。

 そこはともかくとして、胸だ!

 少しの膨らみも感じさせない胸は、彼女に不思議な子供らしさを演出させる。

 お母さんなのかと思ったが、俺と変わらないくらいに見えるし、下手したら年下にも見える。

 だからといって、他に保護者が同伴しているようにも見えないのだが……。

「あの、どうなさいました?」

 ずっと呆気に取られていた。という設定で見惚れていた俺に、彼女は麗しい声で問い掛けてくる。どうしよう。


 ①迷惑な子供だ ②可愛い子供だ ③可愛いお方だ


 ーここでは②を選びましょうー


 どのようにして誤魔化そうか。俺が悩んでいると、丁度良くさっきの幼女が再び現れてくれた。

「可愛い子ですね。春香ちゃんって、言うんですか?」

 これ以上走り回って欲しくなさそうなので、さりげなく幼女の頭を撫でて動きを封じながらも、目の前の美女に質問してみる。

 こんなことになるんなら、部屋着なんかに着替えなきゃ良かった。

 そう考えながらも、後悔の表情も美女へ向けられる下心も隠して、微笑みを浮かべ続ける。

「あっはい、本当にじゃじゃ馬娘で困ってしまいます」

 俺の微笑みが通じたのか、怪しむ気配もなく彼女は肩を竦めて困り顔。

 このままの流れで、春香ちゃんだけでなく彼女の名前も聞き出せはしないだろうか。

 そう思っていたところだが、そこまで上手くは行かないらしい。

「それでは、本当にご迷惑をお掛けしました。ほら、春香も謝りなさい」

「おじさん、じゃあねっ! またはるちゃんと遊ぼうね!」

 最後にもう一度彼女は謝罪の言葉を述べて、春香ちゃんを引き連れ帰って行ってしまった。どうしよう。


 ①見送る ②どうでもいい ③追い掛ける


 ーここはさすがに①しかありませんよー


 追い掛けてまで会話をすれば、それは立派なストーカーだろう。

 一目惚れでストーカーになるなんて、彼女としては迷惑以前に吐気がするほどに気持ち悪いだろう。女の子に好かれていたいのはもちろん、ストーカー状態になり蔑まれ避けられるのは、俺としてもメンタルがもたない。

 彼女の美しさが罪なんだけど、ここは我慢するしかないだろう。

 地獄の使徒に惑わされるわけにはいかない。

 なんとか自己を保ち、手を振ってくれる春香ちゃんに小さく手を振り返す。

 そして名前を知らない彼女の、あの美しい姿を思い浮かべながら、一人で一人暮らしの家に帰った。

 ああ、綺麗な人だったな。

 今日は戸惑うほどに絶世の美女との運命の出会いをしてしまう。これは、リア充になろうと決意した俺を、神様が応援してくれているということなのだろうか。

 それとも、本気で彼女を作ろう。そう決意したことにより、以前よりも可愛い女の子が見えるようになったのか。

 以前まではもったいなくも見逃してしまっていたのかもしれない。

 何にしても、今年こそはリア充人生をスタートさせてみせるのだ。

 家に帰った俺は、虚しさよりも喜びやヤル気を大きくするため、改めて決意をし直した。どうしよう。


 ①運動 ②読書 ③ゲーム ④寝る


 ーここは③を選びましょうかー


 もうやることはやったので、適当な食事を取りながら、俺はゲームを始めた。

 リア充になるからといって、ゲームをやめる理由にはならないだろう?

 ゲームをやるからオタクなわけではないし、ゲームをやらないからリア充なわけでもない。そもそもオタクとリア充は対義語ですらない。

 オタクでありリア充でもある、そんな存在だって別にいないわけではなかろう。

 それだったら、ゲームをやって妄想好きも変態もやめないで、そのままの俺でリア充を目指そうじゃないか。

 夢中でゲームをしながら、リア充になるプランを考えていると、いつの間にか寝てしまっていたらしい。

 瞬きくらいの時間しか、自分としては体感していなかった。そのはずなのに、暗かった空が、一気に明るく染まっているのであった。

 慌てて時計を確認すると、驚くべきことにもう七時であることを示している。


 ここでやっと一日目が終了し、二日目に突入するというわけですね。

 やはり一日ですべてのメインヒロインと出会えるわけもなく、半分にも満たない人数としか関わりを持てませんでした。

 しかし一年を掛けて攻略を進めていくわけですから、好スタートといえるのではないでしょうか。くっくっくっく。

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