4/5
4
――― 母の手に抱かれて
愛しい我が子
優しい夢を ―――
歌が、聞こえる。
はっきりと、すぐ近くで。
目を開けると、母さんの優しい笑みが僕を覗いていた。
「健ちゃん」
母さんが乗り出すように僕の顔を覗きみる。
でもその表情を知ることはできない。
僕の目は固く閉ざされ、開こうと力を入れてみても空回りしているような感覚だ。
でも母さんの表情はすぐに窺い知れた。
「健ちゃん、ごめんね…」
母さんはすすり泣くような声で言った。
「痛かったね。辛かったね」
腹の上で組まれていた僕の手を、少し小さな手が擦る。
涙を拭ったのか、少し湿り気を帯びた手。
やっぱり僕は死んだんだなぁ。
いつも会う度に抱き寄せてくるから鬱陶しく感じていたけど、今僕は心からこの手を握り返したいと思った。
手は動かない。
冷たくしてごめん。
そう言いたいのに、貼り付いたような唇はほどけない。
「健ちゃんがお腹に戻れたらいいのにね」
母の切なげな声が聞こえた。