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2日前 カラスとの追いかけっこ

 宿題を進めてからログインしたので時刻は13時だ。

 本日の目的はソウゲンカラスを仲間にすることだ。ただソウゲンカラスは物を投げても届かない高さを飛んでいて手の出しようがないのが問題だ。

 じっとしていても何も変わらないのでとりあえずソウゲンカラスを探しに行こう。


 空高く飛んでいくソウゲンカラス、その姿を見送りながら地面に膝をつき肩で息をする俺。

 速度はあるし下りてはこないしで結構な距離を走らされた。しばらく立ち上がれそうにない。

 その場に仰向けになり何か良いアイディアはないか考える。

 俺に合わせてなのかララビィとレイドッグが俺の脇に伏せる。撫でるのに丁度良い位置だ。

 2匹の手触りに少しの間癒される。仲間になってあまり立っていないのにおとなしく撫でられてくれるのは、たとえゲームだからだとしても嬉しいな。

 それぞれの手触りを堪能してるときにふと思い出した。そういえば昨日の2度目のログインのときにソウゲンカラスが数羽飛び去ったな。

 飛び去ったということはそれまでは地面にいたはずだ。あの時は確か……そうだ、朝食に遅れないように倒したマヨイイヌをそのままにしていた気がする。それなら餌を用意してやれば下りてきそうだな。

 思い付きを試すために残っていたオオウサギの足から皮と爪をはがして高く掲げる。これで食いついてくれるかもしれない。しばらく待っているとこちらへと近づいてくる1羽のソウゲンカラス、上手くいったようだ。

 ソウゲンカラスはある程度の距離まで来るとその場で周りはじめる。少し待ってみるが降りてこようとはしないので、何かあるのかと俺は周囲を見回した。

 周りはただの草原、まばらに木が生えていてマヨイイヌが何匹か見える。

 変わったところは特にないなと視線を戻すとソウゲンカラスがものすごい勢いで突っ込んでくる。そして、唖然としてる間に肉を掻っ攫われてしまった。

 急いで振り返るも既に手の届かない高さまで舞い上がり飛び去ろうとしている。逃がしてたまるか!




 ソウゲンカラスを追いかけてから40分、走りっぱなしなので息も上がっている。

 途中で、肉があれだけではないことを思い出し追うのをやめようかとも思ったが、そのまま追い続けている。

 昨日レイドッグにあげたときにはすぐに消えてしまった肉が、今も消えずにくわえられていたからだ。もしかしたらどこかに巣等の降りる場所があるのかもしれない。

 幸い肉が重いのか飛ぶ速度は落ちている。ついて行けなくはなかった。


 しばらく走ると前方に大きな木が現れた。ソウゲンカラスはその木に下りていく。どうやらあそこがゴールらしい。

 木の下まで寄ってみるが木の葉と枝でソウゲンカラスの姿は確認できない。これは登ってみるしかなさそうだ。

 俺は防具をはずし背負い袋を下ろして身軽になり、右手にビギナーダガー左手に剥ぎ取りナイフを持ってそれを交互に刺しながら木を登っていく。とてもきついが他に方法はない。

 何とか太い枝に辿りついた時には腕がプルプルと振るえ手がなかなか開かなかった。

 枝に座って少し休み今度は枝に手をかけて登っていく。途中何度も休憩をいれながら時間をかけて登り遂にソウゲンカラスたちの巣のある高さまでやってきた。

 辺りには沢山の巣がある。ここはソウゲンカラスにとって集合住宅みたいなものなんだろう。どの雛も元気に餌をねだっている。その子供を守るために沢山のソウゲンカラスがこちらを見ていた。

 これじゃ手は出せないな……。

 諦めて下りようとしたときに痩せ細り横になっている雛を見つけた。鳴く力も無い様なので心配になり、その巣から離れたところか観察することにした。もし1時間以内に親鳥が戻ってこないようなら保護しよう。

 

 あれから10分、親鳥は戻ってきていない。まるで死んでいるようだが、さっき羽を少しだけ動かした。まだ息はある。


 更に30分、まだ親鳥は戻ってこない。近くにある別の巣に戻ってきたカラスの鳴き声に反応したのか横になったままくちばしを開けた。いたたまれない気持ちになった。


 とうとう1時間がたった。多分この雛の親鳥はプレイヤーに倒されたかして、もう生きてはいないんだろう。でなければこんなにも長い時間雛を放置するとは考えられない。俺が来る結構前から戻っていないことは雛の痩せ細った体を見てもわかる。

 まずは雛を木の下におろすために巣からすくい上げてもち胸に抱く。雛を落とさないよう、持った手に力を込めないように注意しながら枝を伝って下りていく。しかし、一番低い枝から下におりる手段がない。飛び降りたら俺も雛も無事では済まないだろう。

 考えた末に開いた手でダガーを持って気持ち浅く木に指して飛び降りる。木をガリガリと削りながらおりていくが、ダガーを持った手が悲鳴を上げる。

 地面まであと2メートルのところでダガーから手が離れてしまった。


「お前等! 受け止めろ!」


 腕を横に精一杯伸ばして雛を離す。その下にララビィが駆けつけてくれる。これで雛は大丈夫なはずだ。

 相当な痛みを覚悟して目を閉じて体を丸めるが、柔らかい物が俺の体を受け止めてくれた。

 体を起こすとつぶれたように伏せるレイドッグが。俺の体を受け止めてつぶれたらしい。


「無事か!?」

「クゥ~ン」


 力はないが返事を返してくれた。体を撫でてみたが怪我をしていたり骨が折れたりはしていないようだ。しばらくしたら動けるようにもなったし大丈夫だろう。


「レイドッグ、助かった」

「ワン!」


 レイドッグに礼を言うとララビィが頭をこすりつけてくる。その背には雛が乗っていた。


「ララビィもありがと」


 その言葉を聞いて満足したのか、ララビィは俺に背中を向けて座る。

 ララビィが座ったことで転がり落ちそうになっている雛を両手で持ち上げる。早く助けてやれということだろうか。

 俺は厚手の服で簡単な巣を作り雛を置くと、近くにあった背負い袋を引き寄せ中からウサギの足を取り出した。いつも解体するときにビギナーダガーを使っているが、木に刺さったままなので剥ぎ取りナイフで代用しよう。

 代用したナイフで皮を剥ごうとするもナイフがウサギの足に入った途端爪だけになってしまった、それもたったの1本だけ。ウサギの足から剥ぎ取ったということだというのは何となくわかるが、今はそれでは困ってしまう。

 しょうがないのでマヨイイヌの肉を取り出す。これなら既に素材だし大丈夫かもしれないと思ったが甘かった。ナイフが入った瞬間肉が一回り小さく整った形になり、それを切ろうとしたら今度は消えてしまう。なんとも融通の利かないナイフだ。

 諦めてナイフをしまい新しいマヨイイヌの肉と包丁、まな板を取り出して小さく切り分けていく。いくつか用意できたらそれを雛の口元へと運んでいく。

 しかし食べ物だとわからないのか口をあけない。そういえば木の上では他のソウゲンカラスの声に反応していた。


「かー、かー」


 俺がカラスの鳴き真似をすると雛が口をあける。

 急に肉を与えて大丈夫かと今更ながらに不安になるが他の餌を用意する時間はなさそうだ。

 雛は俺が差し出した肉に食いついた。その瞬間肉は消える。そういえばこれはゲームだったな、だったら肉でも問題ないかもしれない。切り分けてある肉をどんどん雛に与えていく。

 何度か繰り返すと目の前にいつものウィンドウが、少し悩んでカーと名づけた。


名 前:カー

種 族:ソウゲンカラス0

スキル:成長48

装 備:


 餌をあげるのに邪魔なのでウィンドウは確認せずに閉じた。

 しばらく餌をあげているとお腹がいっぱいになったのか口をあけなくなり、横になったまま動かなくなった。胸が上下しているから寝むっているようだ。 

 寝てしまった雛をレイドッグに乗せて防具を装備しなおす。背負い袋を背負って時間を確認する。時刻は現在17時23分、まだ1時間は余裕がある。

 移動したいところだが木にはダガーが刺さったままだ。腕もダルさが残っているのですぐに登るのは無理だ。

 今日は仲間達とここでゆっくりしてログアウト、明日ログインしてからダガーを回収しよう。

 そうと決まればモフモフタイムだ。

 まずはララビィを横から抱きしめ背中を撫で、満足したら同じようにレイドッグを撫でる。

 更に横になって腹の上に乗せてみたり、枕にしてみたり、正面から抱き合ってみたりして、堪能した後にリボンのことを思い出し巻いてあげることにした。

 ララビィは右耳に、レイドッグは左の前足に、カーには背中に結び目が来るようにして胴に巻いてあげた。黒いリボンがあまりに可愛いかったため自然と顔が緩んでしまう。

 ログアウトした後も表情は戻らず、店の常連の女性に気持ち悪いよといわれたが気にもならなかった。

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