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3日前 初めてのモフモフ

 翌日、目を覚まして時計を見たらまだ4時を回ったところだった。まだこんな時間かと布団をかぶろうとして思い直す。

 せっかく早い時間に目が覚めたんだから《RMMO》にログインしよう。昨日も22時頃には寝た、寝不足ということも無いはずだ。

 7時に朝食なので2時間半はプレイできる、遅れると母がものすごく怒る。

 布団をたたみ顔を洗って歯を磨く、シャツを替えズボンをはいたらヘッドギアを着けてログインだ。


 ログインしたら直に南の平原へ。朝早いからか平原にはまったく人がいなかった。

 オオウサギを探して正面から近づきおでこをなでる。ネットでウサギの撫でポイントを調べたんだがどうだろう?

 オオウサギはこちらを見るとすぐに跳びかかろうと体重を後ろにやる。――だめか。

 オオウサギに合わせて俺も腰を落として両腕を広げる。

 さあ来い!今度こそ受け止めてみせる!

 オオウサギが跳んだ。目標は俺の腹の辺り。

 俺の腹にオオウサギがぶつかり結構な衝撃が来る、だが最初の時ほどじゃない。俺は腹筋に力を入れて耐えきった後、下へ落ち始めるオオウサギの体を両腕で捕まえた。

 ヤバイ!すごいモフモフだ!

 じたばたと暴れるオオウサギを逃がさないように気をつけながら右腕を外して、オオウサギの背中を優しくゆっくりとなでる。

 ……はぁ~、やぁらか~い、幸せだ~。……このまま何時間でもなでていたくなってしまう。不満があるとすれば鎧とアームガードを装備しているせいで全身で味わうことができないことくらいだ。


 しばらくなでているとオオウサギが抵抗を止め、俺の顔を見上げてきた。何となく逃げ出さないような気がして地面に下ろしてあげる。

 地面に下りたオオウサギは俺の手に額を擦り付けてきた。なでて欲しいのか?

 そう思い俺が手の平でオオウサギの額を触るとオオウサギを光が放った。そして、光は一瞬で消えてしまう。

 何事かとオオウサギを見つめる俺の前にウィンドウが現れる。ウィンドウには名前をつけてくださいと出ていた。

 ……目の前のオオウサギに名前をつけろってことだろうか?

 オオウサギの名前か……よし、こいつの名前は“ララビィ”だ!

 ウィンドウにララビィと入力して決定を押す。

 途端そのウィンドウが消え、新しいウィンドウが現れた。


名 前:ララビィ

種 族:オオウサギ1

スキル:戦闘1

装 備:


 これはララビィが俺の仲間になったってことだよな。

 やった! これでいつでもなで放題じゃないか!

 ついでにあのタックルで戦力にもなってくれるはずだ。どれくらい戦えるかまずはオオウサギを相手に試してみよう。

 

 新しいオオウサギを探し、近くへと寄って行く。


「ララビィ、やれ」


 俺の一言でララビィがオオウサギへと跳んだ。ぶつかった2匹はそれぞれ反対側に吹っ飛んだ。

 ……これは目印をつけないと、乱戦になったら見分けがつかなくなりそうだ。

 そんなことを考えながら敵であるオオウサギに近づきナイフで突く。そして、いつもどおりタックルに備えようと距離を取ると、オオウサギが跳ぶ前にララビィが突っ込んできて互いに吹っ飛ぶ。

 予想外の出来ことに驚いていると敵のオオウサギが体勢をととのえて俺に跳びかかってきた。ララビィのタックルも飛ぶタイミングがそろったため外れてしまう。

 驚いて動きが止まっていた俺は、慌てて防御しようと腕を交差させる。腕に衝撃、防御はギリギリ間に合った。

 着地したオオウサギをララビィのタックルが襲いまた吹っ飛ぶ。今度は驚くことも無くナイフで追撃。

 それを何度か繰り返してオオウサギを倒した。あの後俺が攻撃を食らうことは無かった。

 

 オオウサギを相手にもう2戦してみる。いずれも無傷で勝利した。

 どうやら俺の攻撃の分だけ攻撃が遅れたようだ。ララビィのおかげでオオウサギを楽に狩れるようだ。

 これならマヨイイヌを相手にしても問題なさそうだ。


 先ほど倒したオオウサギのところまで死骸を持って行き3匹分の剥ぎ取りを行う。

 肉が5個、尻尾も10個になったのでクエストの報告がてら目印になりそうなものを買いに行こう。


 


 ララビィを腕に抱いて町へと帰ってきた。まずは酒場でクエスト報告、報酬は1360Bだった。

 続いて道具屋に行く。前回来た時に目印に使えそうなリボンが売っていたのを思い出したからだ。仲間が増えたときのことも考え安い無地の黒いリボンを15m、150B分買った。

 ついでに簡単な調理器具も買っておこうか、そろそろオオウサギの足と頭をどうにかしないと。

 小さな包丁とまな板・フライパンに深めの鍋の4点で1250B、これに残金分だけ塩と胡椒を買って残金0だ。塩は安く沢山買えたが胡椒は高かったので塩の10分の1しか買えなかった。

 おいしい料理のためにもこれからもお金を稼がないと。

 買い物を終えて店を出る。いつの間にかララビィは腕の中で寝ていた。気持ちよさそうな寝顔が可愛いな。




 本日二度目の南の草原、目標はマヨイイヌだ。マヨイイヌは門の近くよりも町から離れるたところにいることが多い。

 町から南に10分くらい歩いたところでマヨイイヌを発見、あごの下をなでる。

 マヨイイヌはすぐさま爪で攻撃、それを右の脚甲で受けその反動を利用して1歩後ろに下がった。

 姿勢を低くしてこちらをにらむマヨイイヌ。いつでもいいぞ、来い!

 跳びあがったマヨイイヌは左の爪でひっかいてきた。こっちは右腕のアームガードで防御、さっきと同じように距離を取る。

 着地したマヨイイヌは間を空けず再度跳びかかり、着地後の隙を狙ったと思われるララビィのタックルが外れる。

 口を大きく開けてこちらへと突っ込んでくるマヨイイヌ、狙いは首への噛み付きのようだ。俺は左腕を横にしてマヨイイヌの大きく開いた口へ突っ込んだ。当然噛み付いてくるがアームガードによってダメージは無い。

 左腕を噛まれている間に右手で口を押さえ込み地面へと押さえ付ける。押さえた右腕を支点に周りマヨイイヌの胴体をまたぐ。後は体重を乗せて動けなくしてモフモフタイム突入だ。

 俺が腰を落とそうとしたところを後ろから突き飛ばされる。地面を転がり突き飛ばしてきた方を確認するともう1匹マヨイイヌがいた。どうやら仲間を助けに来たようだ。

 新しい方のマヨイイヌが跳びかかってくる、最初のヤツはララビィによって吹き飛ばされていた。

 跳びあがったほうは噛み付こうとしてきたので同じように腕を突っ込み防御、地面に押さえつける。

 しかし、今度は横から突き飛ばされた。確認すればまた新手のマヨイイヌ。こうなったら、1匹を残して全滅させなきゃ駄目だな。

 腰に差してあったビギナーダガーを右手で持つ。


「ララビィ、俺の邪魔をさせるな!」


 その声がきっかけとなりマヨイイヌが2匹、俺に跳びかかってくる。片方はひっかき、片方はかみつきだ。

 ひっかきはそのまま喰らい、かみつきには口の中に左腕を突っ込んでやる。

 左腕を噛み切ろうとしているマヨイイヌの頭にダガーを何度も突き刺す。7,8回突いたところで腕からはなれ地面に落ちた。

 最初のマヨイイヌはララビィと戦っている。今のうちにもう1匹を倒してしまおう。

 マヨイイヌの爪による攻撃を何度か防ぐ。跳びあがって噛み付いてきたら同じように腕を突っ込んでやる。これで残りは1匹になる。

 ダガーを刺そうと振りかぶった俺の視界に右から跳びかかってくるマヨイイヌが見えた。ララビィを放置して俺へと向かってきたのか。

 咄嗟に右腕を相手の口目掛けて突き出す。手に持ったダガーがマヨイイヌの口の横を切り裂いたが、倒すにはダメージが足りなかったようで噛み砕こうとしてくる。

 さて、どうしようか?アームガードのおかげで痛くはないが視界に写るHPゲージが削るように減っていく。どうにかしたいが両腕にマヨイイヌをぶら下げているため攻撃出来ない。

 途方にくれて視線を彷徨わせる俺をララビィがじっと見ていた。かわいいなぁ……。

 ……ん?何でララビィはこいつらを攻撃しないんだろうか?もしかして、今攻撃すると俺の邪魔になると考えているんだろうか?


「ララビィ、こいつらをどうにかしろ」


 そう言った途端右腕のマヨイイヌへとタックルするララビィ、指示に対して融通が利かないみたいだ。

 何はともあれこれで右腕が自由になった。とっとと残ってるほうを倒してしまおう。

 ダガーをぶら下がったままのマヨイイヌに刺す。三度刺したところでマヨイイヌが横へと飛んでいく。

 俺の足元にはララビィ、どうやら先ほどのマヨイイヌを倒しこちらに向かってきたようだ。

 それなら今吹っ飛んで行った奴を捕まえようとそっちを見れば、ララビィが追撃のタックルをかましていた。

――指示の出し方は気をつけよう。


 朝食に遅れるわけにはいかないので解体を始める前に時間を確認。時刻は6時53分、倒したマヨイイヌには申し訳ないけどこのままログアウトだ。


「ララビィ、また後で」


 こっちを見上げたままじっとしているララビィに声をかけてログアウトした。

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