茶色い2匹
う、う~ん。
眩しいな。朝か?
くらくらしている頭に億劫になりながら重いまぶたを上げると目の前にウィンドウが開いていた。寝起きで焦点が合わず内容がわからない。
瞬きを繰り返してウィンドウに焦点を合わせる。なになに、『名前をつけてください』か。名前、名前っと。
……ん? 何が仲間になったんだ?
いつもより重く感じる身体をゆっくりと起こす。と両方の耳元からキーキーといった感じの鳴き声がした。なのに左右を見回しても何もいない。
……えい!
両耳の横に手をやって何かに触れたので掴む。目の前に持ってきてみると鳴き声の正体は2匹の茶色い蝙蝠だった。
「……お前らが新 しい仲間か?」
「「キー」」
どうやらそのようだ。
そうとわかったら名前をつけないと。
…………………………。
駄目だ。頭が重くて何も思い浮かばない。安直だけど蝙蝠だからコウとモリーにしてしまおう。ごめんな。
最初のウィンドウにコウと入力、続いて出てきたウィンドウにモリーと入力した。これでコウとモリーも俺の仲間だ。
それにしても調子が出ない。何が原因だ?
考えながら手元にいたララビィを撫でていると、ララビィの毛ではない硬い手触りの部分があった。毛を避けて見てみると丸い傷跡が2つ、首元にあった。
もしかしてと思って自分の首元を触ると先ほどと同じような硬い手触りが2つあった。大きさもララビィの傷跡と同じくらいだと思う。
なるほど、血を吸われたのか。まあ、俺の血なんかで仲間になってくれたんだ。歓迎しよう。
朝食を済ませて出発しようとしたけどまだふらふらする。結構な量の血を飲まれたみたいだな。
体調がよくなるまで出発は見合わせて、俺は仲間と触れ合うことにした。仲間達を存分にモフってやるのだ。
仲間達をひととおり撫で回した後、膝に丸まるララビィの上にとまったモリーの鼻先を撫でながら俺はメニューを開く。タランとミツバとコウとモリーのステータスを確認するのだ。
名 前:タラン
種 族:森蜘蛛3
スキル:戦闘4 糸吐7 麻痺毒1
名 前:ミツバ
種 族:ソルジャービー3
スキル:戦闘3 集団戦3 毒2
名 前:コウ
種 族:ブラウンバット1
スキル:戦闘1 吸血2
名 前:モリー
種 族:ブラウンバット2
スキル:戦闘1 吸血3
コウとモリの吸血が既に上がっている。やっぱり俺とララビィの血を吸ったみたいだな。
ただ、こんなに具合が悪くなるなら毎食は吸わせてあげられない。夜寝る前までは我慢してもらうことにしよう。
お昼を食べたら調子も戻ってきた。これなら出発しても問題なさそうだ。
しばらく歩いたら蜂の群れを見つけた。まだこちらに気づいてないようだ。コウとモリーの実力を確認するのに丁度よさそうだ。
「コウ、モリー、あの蜂の群れを倒せ。タランは危なそうだったら糸で援護だ」
「「キー」」
俺の指示に従ってコウとモリーが蜂の群れに静かに飛んで行った。と思ったらコウだけ高度を落としていく。
そして地面に触れてしまいそうなほどの高さで接近すると一気に高度を上げて蜂に噛み付いた。
一瞬動揺したような動きをした蜂たち。すぐさまコウを攻撃するため1匹が針を向け突進した。
しかし、コウに近づいた蜂はモリーの体当たりで阻まれる。その間にコウが噛み付いた蜂を食べてしまった。
蜂はターゲットをモリーに変えて突撃するが、モリーが一足早く上空に避難。いつの間にか蜂を平らげたコウが隙だらけの1匹に噛み付いた。
やたら連携が上手いけど、あいつら集団戦闘のスキル持って無かったよな?……試しにミツバを混ぜてみるか。
「ミツバ、お前も行け」
ミツバが蜂の群れに向かう。その間にコウが2匹目の蜂を食べつくした。
コウが3匹目に噛み付いたところでミツバが合流、戦闘を開始した。
しばらく眺めたけどコウとモリーは集団戦闘が出来るわけではないみたいだ。ミツバはコウとモリーの動きに合わせて攻撃やフォローをしていた、けどコウとモリーはミツバが来ても2匹だけで連携しているのだ。
同じモンスターだからかな?
なんにしても今はこれ以上調べられることはない。
その後も蜘蛛や蜂の群れと何度か戦いながら森を歩き続け、夜になった。肉だけの夕食も終わりタランにハンモックも作らせた。
後は――。
「コウ、モリー」
ララビィと一緒にハンモックに上りコウとモリーを呼ぶ。蝙蝠2匹のお食事の時間だ。
コウはしばらく仲間達の周りを飛ぶとレイドッグの首に噛み付いた。それに対してモリーは俺の首元へまっしぐらだ。
首に小さな痛みが走った後、身体から血が出て行くのがわかった。今朝の感じだと結構な量を持っていかれそうだ。
あ、くらくらしてきた……。