新しい家族
木が風に揺れる音がする。森が、植物が強く香る。地面についた手には落ちた葉の感触が伝わり、驚愕に見開いた目には鮮やかな緑が映った。
ゲームじゃない、五感がそう訴えていた。
「……………………」
え? あれ? どうしよう? どうしたらいいんだ? 帰れないんだよな? いつまで? 邪神を倒すまで? 一年後に復活するって? なら一年間は帰れないって事か? その間はどうすればいい? 住む場所は? ご飯は? 着る物はどうしよう? ってか学校は? 一年間なら休学って事になるのか? 店は? 俺が手伝わないと困るんじゃないか? そもそも帰れるのか?
父と母にはもう会えないんじゃないか?
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
我慢できずに叫んだ。喉が痛いけど抑えることができなかった。涙が溢れた。体中の水分がなくなるんじゃないかって思った。
そうしてしばらく泣き続けた。
涙も声も枯れた時、ふと自分が何かやわらかくて暖かいものに包まれているのを感じた。
「ぷんっ」
低いような高いようなその声のほうを見ると大きな兎が、ララビィがいた。
「ぷー、ぷー」
ララビィが俺の首に自分の首をこすりつけてくる。
「……慰めてくれてるのか?」
掠れてほとんど聞こえないはずの俺の言葉にこちらを見ると、また首をこすりつけてくる。
「ぷん」
「わんっ」
誰かが俺の顔をなめた。泣き声が無くてもわかる、レイドッグだ。
「…………」
「ガーフガーフ」
さっきから俺の腰に巻きついている尻尾はリザルドの、肩を優しく叩いてくれているのはゴブだ。
「ぴー」
カーは俺の正面から顔を見上げていた。
皆、泣き叫び続けた俺の側でずっと慰めてくれていた。
「ララビィ、レイドック、カー、ゴブ、リザルド。皆、ありがとう」
「ぷーっ!」
「わんっ!」
「ぴーっ!」
「ゴフッ!」
「……!」
この日から、彼らは俺の家族になった。