7日前 俺が《RMMO》を始めた理由
良くあるテイマー主人公モノです。
「《リスペクティブ メリィ メモリィ オンライン》の世界へようこそ。まずは新しい世界でのお名前をどうぞ」
その声に目を覚ました俺は、真っ白い空間の中にいた。
ここは今話題のVRMMORPG、《リスペクティブ メリィ メモリィ オンライン》通称《RMMO》のキャラクター作成用の空間だ。
俺はゲームで遊んだことがない。親が居酒屋をやっているため、学校が終われば手伝いに駆り出されて遊ぶ時間などまったくない。
そんな俺が《RMMO》をプレイしているのには、俺の体質と叔父が関係している。
小さいころから様々な動物が好きで、いろんな図鑑を毎日飽きもせず読んでいるような、そんな子供だったらしい。
成長しても動物好きは変わらず、更に植物や魚などにも興味を持ち始めた。
俺は小学生の時の遠足で動物園に行って、初めてその体質に気づいた。
ウサギの触れあいコーナーで他の子供達が寄って来たウサギを抱いたり撫でたりしているのに、俺の近くにはウサギが寄って来ない。こっちからウサギに近づいていくと、急にウサギが逃げ出したのだ。
泣いてしまうほど悲しかったのを今でも覚えている。
その後も、近所の野良猫から動物園、植物園、水族館、ペットショップなんかにも行って触ろうとしたが、触ることはおろか種類によっては見ることも出来なかった。
高校生最後の夏休み、急に叔父がやってきた。そこで渡されたのがVR用のヘッドギアと《RMMO》のパッケージだった。
なんでも叔父は、俺の悩みについて両親から相談を受けていたらしい。
叔父はVRの世界だったら、動物達に触ることが出来るのではないかと思って用意したそうだ。確かに、VRなら触れた感触もある。
パッケージに入っていた薄い説明書を読むと、《RMMO》には現実にいない様々な生物がおり、動物や魔物と共に生きる職業もあるらしい。
《RMMO》に興味を持った俺は、叔父と一緒に両親を説得してもらい、居酒屋が忙しい時間帯以外の手伝いを免除してもらった。
そして8月最初の日曜日正午、サービス開始と同時に《RMMO》にログインした。
俺は目の前のウィンドウに表示されているキーボードを使って名前を打つ。
このゲームの入力方法は、今やったウィンドウを使ったタッチ入力、音声による入力、思考による入力の3つだ。VRなど初めての俺は、慣れの必要な思考による入力はできない。音声入力も正確な認証にはコツが必要だ。
結果、今の俺にはウィンドウを使った入力方法が主になる。
「ダイチ様ですね。続いて外見を決めてください」
外見は先に自身の写真をパソコンへと取り込んでおき、それを元に決める。
薄い説明書には何度も目を通したので、キャラクター作成に抜かりはない。
特に自身の見た目にこだわりはないため、そのままの外見で決定する。
「続いてジョブを選んでください」
《RMMO》において、ジョブはかなり重要なものと説明書には書いてあった。
ジョブは3つ選ぶことができ、その組み合わせによって能力の成長とスキルの取得・成長が決まる。
膨大な数の職業がウィンドウに表示されている。その中から自分の目的である生き物とのふれあいに関係しそうなジョブを探した。
俺に合っているのは〈魔物使い〉〈酪農家〉だろうか。他に動物や魔物と関係しそうなのは〈召喚士〉〈漁師〉などがあった。
たぶん、〈召喚士〉は必要なときだけ他の生き物の力を借りるジョブだと思うので俺の求めるものとは違う。
〈漁師〉は魚を獲る仕事だ、触れあいとは違うだろう。
他にもあったが、〈魔物使い〉と〈酪農家〉以外にしっくりくるものはなかった。
最後の1つは〈料理人〉にした。
家が居酒屋をやっているので簡単な料理は出来るし、俺が作った料理を魔物たちに食べさせたいからだ。
「最後に初期武器を選んでください」
初期武器に関しては何でもよかったので、包丁代わりとして短剣を選んだ。
全ての選択が終了したので目の前にステータスウィンドウが表示された。
名 前:ダイチ
ジョブ:〈魔物使い〉1 〈酪農家〉1 〈料理人〉1
能力値:筋力・・・6
体力・・・6
器用・・・5
敏捷・・・4
魔力・・・3
精神・・・6
スキル:
称 号:駆け出し
装 備:ビギナーダガー
ソフトレザーアーマー
所持品:背負い袋(剥ぎ取りナイフ 革の水筒)
所持金:5000B
とうとう開始だと思うと、胸がはずんでくる。ああ、早くもふもふやすべすべなんかを味わいたい……。
「お疲れ様でした。それでは《リスペクティブ メリィ メモリィ オンライン》の世界をお楽しみください」
その声と同時にあたりが暗くなっていき、俺の意識も沈んでいった。
同設定・別視点の[RMMO 異世界のお節介な道化師]もお願いします。