死にたい。
やだ。
一人にしないで。
もうあの苦しみを・・・
味わいたくない。
誰か・・・
私を助けてっ!!
私は思わず教室から走り出し、屋上に向かった。
「…なんで…あんなに、友達だって…信じてたっ、のに・・・っ」
堪えきれなくなった涙が私の頬を伝う。
生暖かい雫の跡が、次の雫を流す。
・・・・裏切られた。
理由はわからない。
私が何したって言うの?
・・・この世界は不公平過ぎる。
「・・・もっぅ、やだ・・・っ」
声を殺し、密かに泣くつもりだった。
でも、もうそんなんじゃ我慢できない。
「・・・・あのー・・」
後ろから男の声がする。
私はビックリして涙をぬぐう。
「・・な、何か・・・?」
「・・・これ、どうぞ。」
男は私にハンカチを差しだした。
「・・・・ぁ、いえ・・結構・・・です」
ハンカチが汚れてしまう。
洗って返したとしても、きっと嫌がる。
だって私・・・
こんなだし。
嫌われて当然なんだから。
「ぁ、そっか・・・っはは。」
男は無理に笑ってハンカチをなおす。
「・・・・・・」
まだ何か私に言う事でもあるの?
用は終わったはずでしょ?
だけど男は黙って私を見ていた。
・・・私に嫌がらせでもしに来たのかな?
無言がひたすらと続く。
“キーン、コーン、カーン、コーン”
HRの始まるチャイムが鳴る。
「・・・な、なぁ。」
先に沈黙を破ったのは男の方だった。
「・・・授業、でねぇの?」
「・・・・」
あなたこそ、早くもどった方がいいんじゃない?
そう、言ってやりたかった。
でも口は、全く言う事を聞かない。
「・・・関係・・・あるの?」
男はちょっとビックリした顔で、目を真ん丸くしている。
「・・や。・・・ねぇけど」
無いなら、どうしてここに居るんだろう。
哀れな私の姿を見て、何か楽しい?
「・・・俺、((バンっ))
大きな音で扉が開く。
私は一瞬にして硬直した。
・・・・誰?
私と男の目線が一気に扉に集中する。
「和真居た!!もぉー。学校中探し回ったじゃん!!魅羅に心配かけさせないでよねー」
ミニスカートに長い黒の靴下。
栗色の髪に沢山のピアス。
色白で、可愛い子だなって直感で思った。
・・・・彼女・・・かな?
どうやら、私が今まで話していた男は“和真”と言うらしい。
そして、その和真の彼女らしき子は多分・・・・
男子がよく騒いでた・・・
海裏魅羅。
・・・・
でも男子がもうひとつ何か言ってた。
「なぁなぁ、海裏 魅羅って知ってるか?」
「ああ。知ってるぜ。」
「ちょーーーーー可愛くねぇか!?俺狙っちゃおうかなー?」
「無理だな」
「は?何でだよ」
「海裏って言えば、あいつと付き合ってるらしいぜ?」
「誰だよ、そいつ」
「和真」
「えええーーー!!そんなのってアリかよ!?美男美女ってか?ぅわーーー」
・・・・美男美女・・か。
確かに、お似合いかもね。
少なくとも私よりは。
「ねね、和真?」
海裏さんは、私に見せ付けるかのように和真君の腕を握り締めていた。
・・・そんな、私に対抗心燃やしても・・・・
何にもならないよ。
「この子、和真の友達?」
・・・・友達?
・・・・・さっきたまたま一緒に居ただけなのに。
「ねーぇ!友達なの?」
和真君の腕を揺さぶりながら軽くムっとしていた。
そこで和真君は口を開いた。
「ん?秘密」
海裏さんにウインクをして答えた和真君。
・・・・詐欺だ。
こんなの間違ってる。
だって、さっき会ったとこだよ?
“秘密”って・・・
そんなの答えはひとつじゃんか。
(違うよ)
・・・なんでそう言わなかったの?
私に変な期待を持たせるため?
ねぇ、なんで??