表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/116

97

挿絵(By みてみん)


「…強者からすれば『脅威になり得ない者達に対して相手にする必要がない』という許容範囲が極端に広いのだという事は判る。

だが今現在では脅威になり得ない者達もいずれ脅威になり得るのかも知れない。

だから脅威になり得る存在へと進化する可能性のある者達同士をぶつけて殺し合いをさせて間引きしておく。そういう考え方があるのかも知れない…」

王子がそう言って苦笑するのを見詰めながら


(ああ、それは有り得るのかも…)

と思った。

脳裏には当然、モルガン侯爵のーーハンフリー・モルガンの顔が浮かんでいた。


ハワードが休眠期に入る前には、『ハワードの息子達』が駆り出されて、王家も主だった貴族達も「北部へ手出ししない」という暗示を掛けられまくったらしいのだが…

ハワードが休眠期に入って以降は『ハワードの息子達』は何もしていない。


なので「北部へ手出ししない」ようにと暗示を受けた世代も歳を取り影響力を失って、次の世代へと入れ替わってきている。


東部でも中央でもエルフが人間に成りすまして伸び伸び暮らしていた事から、北部吸血鬼側の影響力の衰えをどうしても感じてしまう。


(モルガン侯爵の潜在的記憶を読めるなら、エルフから『超加速』の魔法陣の記憶を一斉に抜いて、連中を無力化させる手段も分かるのかも知れないな…)

と思った。


そこで思わず連想したのは…

マーティー・ブランドンとヴィクター・モルガンの存在。


しかしマーティーがモルガン侯爵に近付くのは無理だから、それが可能なヴィクター・モルガンだけが私の知る限りの頼みの綱という事になるのだろうけれど…


(あの意地悪な男に頼み事をするとかは有り得ない…)

という反発が内心で起こる。


エヴェリー・モルガンから「読心の魔法陣」を盗み返して使うにしても「読心の魔法陣」では潜在的記憶までは読み取れないのだ。


「…ともかく、エルフ側から『超加速』の知識が消えるような事態になれば、お前はこの国を出る必要はないんだろう?

…ユーウェインの森を所有しているようだし、お前に爵位をやる事もできるんだ」

と王子は言うが


「…方法も分からないのに、楽観的に未来を語るべきじゃありません」

と嗜めてしまった。


「これでも一国の王子なんだが手厳しいな」


「…ご存知かも知れませんが、私は精度の高い魔眼持ちでして…。だから一国の王子が部下に成りすまして騎士団で暮らしていたり、そのまま騎士見習いに成りすましたままブラッと民間の診療所まで治癒師見習いを口説きに来たりとか、そういうのは本当に危ないですよ、と釘を指しておきたいのです」


「…バレてたか」


「いえ、今日初めて気付きました。パレードの時は本物のエルマーさんの方が王子役をなさってたんですね」


「ああ。パレードなんて格好の暗殺の場になり得るだろう?影武者を立てるのがもはや慣習となっている」


「今は本物のエルマーさんは騎士団へお戻りに?」


「ああ、今日から元通りの環境へ戻った。だから私も今後はお前の所へ気軽に通って口説く訳にはいかなくなった」


「…安心しました。城は安全でしょうから」

本心からそう思った…。


******************


そう、王城はおそらく安全だ。


随分と昔から私に張り付いていた不可視の使い魔と同じ魔力でできた不可視の使い魔が、この王城の色んな場所をウロツイている…。


「王家に仕える魔術師がいる」

だろう事は誰でも理解しているが、私は今日初めてそれを実感した気がする。


そして王家に忠実であるように刷り込まれた竜騎士達も同じ城で暮らしているのだから、エルマーと入れ替わったりしなければ、マーカス王子の身は安全の筈。


王家に仕える魔術師の不可視の使い魔は、他の魔術師達の不可視の使い魔よりも随分と小さい魔力の塊だ。

案外、蝿とか蜂とかの羽虫を模して作った小型の使い魔なのかも知れない。


魔術師が直接使い魔と感覚共有するには、ある程度、使い魔のモデルに知能が必要だが…

『監視の魔法陣』へと使い魔の感覚を反映させる前提で作るのなら、昆虫の方が創造時に注ぐ魂の粒子も魔力も微量で済むので量産が可能だ。


ただ、余りにもコンパクトに創造すると、本当に「監視用」のみの使用となり、攻撃が出来なくなる。


だから小さ過ぎる不可視の使い魔はマーカス王子がエルマーに成りすまして騎士団に居た時に、レルフの攻撃から王子を護る事ができなかった。


だが当然の事ながら、レルフが王子を殺す事はどの道できなかった。


不意打ちのような超加速で「顔を潰す」目的で攻撃して、あわよくば殺す気だったとしても…側に気配を消した護衛が控えていた筈。


Sランク冒険者と竜騎士は同格と、よく言われるが、そういうレベルの人が使いこなす加速は2倍から20倍。


レルフがエルマーを(マーカス王子を)殺せなかったのは、気配を消して潜んでいた護衛が襲撃してきたので、逃げるしか無かったからだろう。


エルマーを(マーカス王子を)襲ったレルフとイーリーはSランク冒険者かもしくは竜騎士に追いかけ回されて命からがら逃げ延びた筈だ。


「リスクが高かったが、王子のお気に入りの西部騎士のお気に入り要素を潰せた」

と満足したのも束の間ーー


私がエルマーの治療に出向いて元通りにしてしまったので

「襲撃が無駄になった!」

と腹を立てたと同時に

「異常な治癒力で知られていたコーネリアとの血縁関係を疑った」

のかも知れない。


フィリスが何処かに

「セルマ・スミス=ルビー・ヒル」

という情報を残していて、エルフ側がそれを入手したのは間違いないが…

「どの時点で入手していたのか」

は未だ分かっていない…。


「セルマ・スミス=ルビー・ヒル」

という情報に客観的に信憑性が出たのは、やはりエルマーの治療がキッカケだったろうと思うのだ。


(災難だったな…)

と思わなくもないが…


エルマーに扮していたマーカス王子が痛手を負わされた事件のお陰で

「エルフ=集団で民族的自己美化虚像を身に纏ったテロリスト達」

という事実が王家の側でも認知されたのだとしたら…


(無駄な危険では無かった筈だ)

とも思える…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ