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ユーウェインの森の城砦跡にある転移魔法陣。
それが出入り口となっている魔窟。
そこの探索をジワジワ進めながら、分かった事が幾つかある。
魔窟はかなり広い。
それこそユーウェインの森と同じくらい広い。
そして魔窟内には複数の転移魔法陣がある。
出入り口は一つではない。
あと、開ける事が叶わないが魔窟内には宝箱が複数ある。
中にちゃんと宝が入っているのかどうかは確かめようがない。
そういった事が探索の結果分かった。
「なんか【地球世界】の電子メディアのゲームみたいなダンジョンだな…」
と思った。
ゲーム…。
動画サイトでゲームプレイ動画を配信する人達がいたので、私自身ゲームをプレイした事はないのに、ある程度はどういうものなのか解る。
魔物を殺すと経験値が溜まってレベルアップしていけるような仕様はまさにゲームならではの御都合主義。
それは流石に現実ではあり得ないだろうが…
「ダンジョンの中に宝箱がある」
という点だけは、この魔窟で再現されている。
転移魔法陣でしか行けない場所の宝箱…。
(もしかして北部始祖のハワードがせっせと蓄財してるとか?)
と、ちょっとだけ考えて、思わず吹き出してしまった。
始祖がせっせと蓄財、という発想は何気に笑えるが、あり得なくもない。
転移魔法陣自体がウーナ・アイビー作なら、その頃はまだウーナはハワードの妻の一人だった筈。
「貴方しか行けない場所に転移魔法陣と宝箱を設置してきて欲しい」
と言われれば余興感覚で従ってやった可能性はある。
私にはハワード・ローガンの性格は想像もつかないが…
コーネリアに言わせると
「笑えない冗談をシレッと実行してしまうシニカルな性格」
らしいし…
「性格面ではイアンが一番『ハワードの息子達』の中でも父親に似てるよ」
との事だったし…
「転移魔法陣と宝箱の設置にはハワードが関わっているのだろうな」
と、やはり思ってしまう。
「不可視の使い魔を送り込んで中を覗けるものの、開ける事は出来ない宝箱、か…。随分と性格が悪いよな。こういうのを作った人達は…」
だけど
「不可視の使い魔で宝箱を攻撃すれば、箱が壊れて中が見れるかも知れない」
と思い、攻撃させたところ
金貨がジャラジャラと溢れてきたので
「宝箱にはちゃんと宝が詰まっている」
事だけは分かった。
嘴で啄ばみ、鉤爪で掴み、2枚づつ使い魔達に回収させよう、と思えば出来なくもないが…
全てを回収するには途方もない時間がかかりそうだと思った…。
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王城で貴族を見かけるのは珍しくない。
ただ、セントクレア公爵家と、その傘下貴族は出入りが制限されている。
しかし、変身術で姿を変えれば門番には分からない…。
王家の陣営に魔眼持ちがいないという事ではないようだけれど、王城へ出入りする者全員をチェックできるという事でもないようだ。
そもそも精度の高い魔眼持ちが1人しかいない場合、その1人が休みの日さえ分かれば良いのだから、情報漏洩者が居れば、やはり変身術を使う暗殺者にとって王城はフリーパス状態。
巷で吹き荒れる「エルフ狩り」の風潮と比例して、私を標的としたエルフ側の憎悪も沸点に達していたようだ。
見慣れない貴族女性が急に表情を変え、激昂し過ぎて絶句した状態に陥り、そこから立ち直ったかのように
「ーーっ!お前だけは絶対に許さない!」
と叫んで、襲いかかってきた…。
不意打ちで暗殺すれば上手くいったかも知れないのに、激昂し過ぎて冷静な判断力も失っていたらしい。
お陰でこちらも瞬間的に「超加速」を発動できた。
使い魔のフックにも「超加速」を付与してから、諸々を強化。
「アイツを貫け」
と指示すれば、つつがなくフックが倒してくれた…。
(竜騎士が護衛してくれてる筈なのに)
と不審に思ったのだが…
後でヘザーから仕入れた裏事情によると
「他の場所でも同時にエルフの侵入が発覚してたのよ。要するに同時多発的に王城内で連中は姿を現した訳」
との事。
「これまでもエルフやそのシンパが侵入しては捕まってるんですよね?」
と訊くと
「そう。王城には読心術師もいるから、エルフじゃなくても、侵入した者の目論みが分かって、その場で逮捕されるものなんだけど…。
人材をそんなに沢山確保できてる訳じゃないから、一斉に複数犯が各所で騒ぎを起こすと人手が足りなくなるの」
だそうだ。
エルフが私の元まで辿り着いたのは今回が初めてだが…
私が気付いていなかっただけで、王城に滞在し出して2週間ほどで、これまで何回も襲撃が起きていたらしい。
「…それにしても、本当に恨まれてるのね…。ホント、エルフって気味が悪いわ。逆恨みを正当化する特殊な現実認識を組織的に共有して組織的に狂ってる集団って事なんでしょうけど。そんな連中が人の姿をしてこの国に巣食っているのかと思うと、本当に気持ち悪い…」
エルフに恨みも持っていないヘザーでも
「エルフの異常な逆恨み」
を気味悪く思うくらいに、今のエルフは鬼畜な逆恨み根性を剥き出しにして組織ぐるみで私を憎悪しているという事なのか…。
ただ、まぁ、この国のエルフは随分と大陸側のエルフとは違うらしい。
この国以外の近隣国のエルフは、本来のエルフの姿をしていて、それを恥じている風でもない。
尖った耳と緑色の髪と木肌色の肌。
ドライアドと違って、足があり、動き回れるけれど、本来のエルフはドライアドの亜種なのだ。
この国のエルフだけが異常だ…。
王家が把握しているエルフ事情によると
「美を求め、変身術に依存して、人間社会に干渉しようとするタイプのエルフが近隣国から移民してきて、グレイス王国のエルフになっている。
逆にそういう性質が合わないエルフはグレイス王国を出て、近隣国の森へ移り住んでいる」
のだそうだ。
つまり
「頭のオカシイのばかりが集まってる」
のが
「この国のエルフ」
という訳である。
「この国の貴族を殺して貴族になり済ましていたエルフは、遺産を騙し取っていただけのエルフのように『奴隷落ち』では済まされない。
貴族を殺したエルフ自身は公開処刑、そいつの身内は女子供も毒杯での死刑に決まって、即日執行された」
という話も伝わってきた。
教えてくれた王弟に
「…観に行きたかったのに…」
と言うと
「…私怨で『ザマアみろ』と言うためだけに見たいのなら、見るべきじゃない。死刑というものは、君が思っているよりも、余程重いんだ」
と王弟からは諭されたのだった…。




