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挿絵(By みてみん)


明けて翌日ーー


休日以外の日の自由時間は少ない。

ただ働きの時間が終わって、急いで寮に戻ってから、フリンジとエンドに探索を指示。


「集落跡や城砦跡の探索をするように」

と指示してみた。


オルビス男爵領だった頃の名残りを観察したかったのだ。

別に城砦跡に

「何か罠が仕掛けてあるかも知れない」

などと疑っていた訳じゃない…。


なのでーー

城砦跡地に転移魔法陣のトラップが仕掛けてあったのを発見して驚いた…。


城砦跡地にはネズミ型魔物が大量発生していたのだが…

ある個体がある地点で瞬時に姿を消したのだ。


そこで連想したのは当然ーー

「海で船が姿を消すという魔の海域」。


その正体こそが【管理者】の元へ辿り着ける転移魔法陣であり、それこそが古代超文明時代の魔道具が流れ出して来る源でもある。


「姿が消える」

という現象から転移魔法陣のトラップを連想できるくらいには、私もこの【世界】の仕様を理解できるようになってきているのである。


「何も知らずに生身で訪れていたら死んでたかも知れないな…」

と思い、ゾッとした。


「…エンドが気を利かせて転移魔法陣を踏んで、転移先の様子を見に行ってくれると有り難いんだけど、そういう指示はしてなかったから、『探索の一環』という解釈をしてくれたりはしないだろうな…」

という予想通り、エンドは転移魔法陣を踏んだりはしなかった。


だが一応

「不審な現象が起きた地点」

を見張る必要性は『探索の一環』と認識してくれてるらしく…

そのまましばらく転移魔法陣トラップの周りを見回して、自分が今いる地点を記憶、トラップのある地点を記憶してくれたようだった。


「…転移先の観察は明日指示しよう」

と思った。


不可視の使い魔は私の魂が入っているので、私の近くにいる時には

「テレパシーによる意思疎通でも起きてるのか?」

というくらいに先回りして行動してくれるのに、距離が離れると本当に融通が利かない。


(…私もユーウェインの森へ行けると良いんだけど…)


一応、蝙蝠型魔物の能力の魔法陣の図象は手に入れている。

蝙蝠型魔物の飛行は「浮遊」「飛翔」「滑空」が組み合わさって成り立っていた。

あと蝙蝠型魔物の能力には「超音波」という能力もある。


「超音波」の魔法陣は魔木で作った魔紙に描いて有効化したが、「浮遊」「飛翔」「滑空」の魔法陣の作用は有効化しなかった。

魔木には飛行系スキルの適性が欠片も無いからだ。


飛行できる魔物の素材に描けば、有効化すると思うので、アラスターにその手の素材を注文してはいる。

「在庫が無いので入荷次第転送する」

との事なので、そろそろ送られて来ても良い頃合いだ。


(それにしても、転移魔法陣のトラップだなんて…罠に掛かった相手を肉片に変えて殺してやろうという悪意満々の手口だ。しかも魔法陣を踏んだ者の魔力で転移魔法陣が起動するように術式が組んであるから魔石の交換も必要ない…)


そこまで考えてから

「そう言えば、コーネリアおばあ様が吸血鬼として覚醒したのは転移魔法陣で殺されそうになったのがキッカケだったって言ってたな…」

と思い当たった。


「ウーナ・アイビーに罠に掛けられたって話だったけど…。ウーナ・アイビーがこの国の各所にそういう罠を仕掛けてたとしても不思議ではないよね。

他人を苦しめる事に喜びを見い出していた悪魔みたいな女だったって話だし…」


しかし、ウーナはハワードが休眠期へ入る前にハワードの手の者達に殺されている筈。

ハワードが休眠期に入って75年くらい。

今現在は150年の休眠期の丁度折り返し地点の時期だ。


「ウーナがこれを仕掛けてたのなら、仕掛けられてから75年以上経ってるって事かな?…転移先には魔物や魔力持ち冒険者の腐乱死体が山程在りそうだ…」


魔法陣を踏んだ者の魔力で起動するトラップ型魔法陣は、そうした魔力の供給源を指定する部分を傷つけてやると容易く無効化する。


「それにしても、トラップの転移魔法陣には吸血鬼の血が一切使われていないかも知れないんだよな…。

それだとエンドの物質化した部分が解体される可能性がある…。やっぱり念の為に私の血を魔法陣の溝に注いでから転移させた方が良いだろうな…」

と素早く計算。


その問題は翌日に後回しにする事にして、あとはフリンジとエンドが見聞きするものを「監視の魔法陣」でチェックした。

もう暗くなってきたので平日の観察時間は大事にしたい。


ユーウェインの城砦は森を横断する高い長い塀の中心辺りにあったようだ。

今では高い塀が森を横断して領境を示していた名残が所々残っているだけで、塀自体が所々壊れている。


村が有ったらしい集落跡が森の中に三つ。

一つは城砦のすぐ側。果樹が植わっている。

(主に林檎の木が)

他二つは木こり・木工職人・炭焼き職人らの集落だったのだろう。

切り株からひこばえの伸びた歪な形の木が沢山ある。


(この森が、私の森、私の私有地なんだ…)

と改めて、所有欲とも愛しさともつかない感情が湧いたのだった…。


******************


アレスターから注文品が届く筈の転移魔法陣に商品ではなく手紙が転送されてきた。


「誰かが知らせるだろうと思うが、まだ誰もお前に知らせてない可能性もあるので、お前の財産に関する重大な情報を伝えておく」

という前置きを読んで

(何事?)

と驚いた。


筆跡は間違いなくアレスターだ。

だが思わずバーブに

「ちょっと転移して向こうの様子を見て来て」

と命令して、転移魔法陣の向こう側へ転移させた。


ちゃんとアレスターがいる。

「全く、次から次に問題が起きてくれるよなぁ」

と溜息吐きつつ、頭を掻いて、書類に目を通している。


バーブには

「気付かれないうちに戻ってくるように」

と伝えていたので、アラスターが目を通していた書類の内容までは分からない。


何せ、アラスターは魔眼持ちだ。

バーブの魔力の纏まりを目にすれば

「誰かが不可視の使い魔を送って来たな」

とバレる。

しかもアラスターは誰の魔力なのかを識別できない。


「敵がスパイしてる」

と思われればバーブが攻撃されてしまう。

それはゴメン被りたい事態だ。

早々に退散して正解だ。


(とりあえず、アラスターおじさんからの手紙は本物だ)


さて、なんと書いてあるのやら…

と思いつつ手紙を読んでいく。


〈幸運なのか不運なのかはともかくとして、お前はオズバート・ガードナーの事を覚えているか?

コーネリアお祖母様に会いに来れば殺されると分かってて、わざわざ会いに来た、頭のイカれたエルフの男。

ウーナ・アイビーっていう邪悪なエルフ女が産んだ息子の1人。


そいつが巨額の遺産をエルフ達に遺したせいで、エルフ達が国内の森の所有権を得ようと、かなり無茶な事をして国内の既存権力を引っ掻き回しているという現状は多くの人が知るところだが。

そうした馬鹿げたエルフ・ファーストの状況が敢えて意図的に引き起こされていた事が分かったんだ。


つまり、オズバート・ガードナーはエルフ達には一切遺産を遺していなかったという事実が発覚した。

遺言状が捏造されていたって事だな。

遺産相続に関する法的執行人自体がグルで、事実を捻じ曲げて、遺産を相続人指名されていないエルフ達に分配していた。


隠れ里のエルフ達がどうやってか、セントクレア公爵家と癒着しているのは知っているな?

オズバート・ガードナーは自分の死後にそういう事態が引き起こされることを想定していたらしくて、遺言状を遺すにあたって、それが遺言状である事を敢えて伝えずに知人へ預けていた。


「自分に万が一の事があった場合は、この書類をオークニー侯爵へ渡して欲しい」とジャクソン商会の会頭ジミー・ジャクソンへ託していた事がつい先日、明らかになっている。

ただ、ジミー・ジャクソン自体がオズバートから書類を預かっていた事を「すっかり忘れていた」らしくな。

預かっていた書類をオークニー侯爵へ渡したのはオズバートが死んで3年以上経った今頃なんだが…。


ともかく、本物の遺言状が出た事で、偽物の遺言状の効力は無効。相続人指名されていないのに遺産を受け取った者達には返済義務が生じている。

よって本物の遺産相続人はエルフ達を借金奴隷として奴隷落ちさせる権利が生じている。

問題なのは、遺産相続人は歳若く、そうやって遺言状の偽造で違法に掠め取られた財産をキッチリ回収する力を持っていない、という点だ。


ここまで書けば分かると思うが…オズバート・ガードナーはお前の父ショーン・フェアバンクスが自分の甥に当たる事をちゃんと理解していたらしくて「我が甥ショーン・フェアバンクスの一人娘セルマ・フェアバンクスに我が財産の全てを与える事とする」と遺言状に書き残していたんだな…。


莫大な財産を相続できる事はめでたい事ではあるんだが…それに納得しない連中が死に物狂いで、本物の遺言状を偽物だと言い張って、凡ゆる正当性を潰そうと一斉に工作してくるだろうし、お前自身を殺した方が楽だと思って殺そうとしてくるのも目に見えている。


なので、一案だが…。お前、学院を休学してグルゴレットヒル侯爵城へ身を寄せる気はないか?

セルマ・スミスとしてグルゴレットヒル侯爵家のレジナルド様の側室となり、グルゴレットヒル侯爵家の後ろ盾でエルフ達にオズバートの遺産を返却させる。

尚且つSランク冒険者でもある西部騎士に護衛してもらう。


騒動が収まって、恙なく遺産を全額相続できるまでは、自分の生命を第一に優先して行動した方が良いと思うんだ。

一応、ジョセフは(シルヴィアス男爵兼スミッソン商会会頭は)俺と同じ意見だ〉


そう書かれた手紙を読んで…

私の目が点になったのは言うまでもない…。



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